それから数週間は何事もなく過ぎ去った。
今思えば、嵐の前の静けさだったのかもしれないなって思う。
ちょっと油断もあったのだろう。僕らは普段通り、六王国会議をトウフで開いていた。
いつもと違ったのは、お兄ちゃんがいる点。
みんなの押しにリタさんが折れて、危機が過ぎ去るまでの釈放という形でゴッカンから戻ってきたのだ。
「ここ最近、静かだよな。」
ヤンマが話を切り出す。
「ロゼアとやらも我らに恐れをなし、逃げ出したのでしょう。
ささ、鍋にございますよ〜。」
「ラクレス様ぁ!!このスズメが愛情込めてお作りいたしました!」
「フフッ……ありがとう。」
カグラギとスズメが持ってきた鍋に、皆飛びつく中、一人難しい顔のお兄ちゃん。(スズメさんが来て笑ってくれたけど、さっきからずっとこう。)
「お兄ちゃん?」
「……あ、あぁ。ギラか。なんでもないよ。うん、なんでも。」
この反応。なにか知ってるんだろうなと思いつつ、深追いはしない。
深追いしたってはぐらかされるばかりだろうし。
「お兄ちゃんも食べようよ。スズメさん、お兄ちゃんのために作ってくれたんでしょ?」
「あぁ。いただこうかな。」
パチンと手を合わせ、お兄ちゃんがお肉を口にいれる。
「美味い。流石スズメだな。」
「やだもう!ラクレス様ったら〜!!」
「お世辞じゃないぞ?このような美味い鍋を食べられるとは、私は幸せ者だ。」
「嬉しゅうございますわ!」
「れんこん食べる奴いるか〜!?」
「私が食べる。」
「じゃあしいたけもらっちゃうわね。」
「おっと、しらたきまで取らなくてもいいだろう、女王様。」
「まだありますから喧嘩はなさらず。」
う〜ん。お兄ちゃんたちの惚気を気にすることのないみんなの会話。
みんな慣れたな〜。僕まだ全然だけど。
なんて思った、その時。
[大文字][太字]ズドドドドドド………。[/太字][/大文字]
地面が大きく揺れる。でも、これは地震じゃない。
ロゼアだ。そう直感した。
みんなもそう思ったのか、箸を置くと、外を見る。
そこには。
「え!?バッタ!?」
「ゴッドホッパーがなんでここにいんだよ!?」
山々を破壊するゴッドホッパーことバッタの姿が。
え、え!?と混乱する僕に、バッタは語りかけてくる。
―ギラ、お前を見損なったよ。
シュゴッダム国王たちはそんなやつだったのか?―
「え!?なにか勘違いしてるよ、バッタ!!」
僕が言っても、バッタは止まらずトウフの山々を破壊する。
―オレの守護国に手を出したこと、後悔するといい!!!―
バッタはそう叫ぶと、木々をなぎ倒し、山々を削る。
「なんで!?どうしてだよ、バッタ!!」
―サソリーヌちゃんだって、カブタンだって、
みんな見損なったって言ってるぞ!!
五王国は、オレたちの守護国を滅ぼしたって!!―
「え!?」
なにそれ、聞いてない。どういうことなんだ。
って助けを求めお兄ちゃんの方を向くが、お兄ちゃんはもういない。
どこ行ったのと言う間もなく、お兄ちゃんの行方はわかった。
「ゴッドホッパー、静まれ!」
お兄ちゃんが、バッタの体に、何かを突き刺す。
するとバッタの動きは止まり、その場にズズゥンと倒れ込んだ。
「バッタ!?お兄ちゃん、何したの!?」
急いでクワゴンを呼び、バッタとお兄ちゃんの方へ駆け寄る。
バッタの体には、何かの注射器のようなものが刺さっていた。
「お兄ちゃん!?バッタに何したの!?」
―バッタは無事なのか!?―
クワゴンと僕が、一緒にお兄ちゃんに詰め寄る。
お兄ちゃんは面と向かっては答えにくいのか、後ろを向いた。
「シュゴッド向けの鎮静剤のようなものだ。大丈夫。二時間もすれば目覚める。
クワゴン、説得してやってくれないか?
ゴッドカブトとゴッドスコーピオンもこんな感じだろうから……。」
―わ、わかった。―
「わかったって!」
「フフッ……ありがとう。」
笑ったお兄ちゃんの目は、どこか悲しそうだった。
しばらくするとみんな駆け寄ってきて、口々に色々なことを聞いた。
でもお兄ちゃんはニコニコ笑っているだけで、答えようとはしない。
しびれを切らしたリタさんとヤンマが実力行使で言わせようとするけど、それでも言わないのだから相当だ。
「そこまでして隠したいことか?」
「隠してるんじゃない。まだ言うべきときになっていないからだ。」
「じゃあその”時”はいつ来るんだよ!?」
「わかったら言っている。」
焦ったように早口で答えるお兄ちゃん。
普段の余裕は、微塵も感じられなかった。
「ギラ、至急シュゴッダムへ帰ってくれ。
ヤンマとジェラミーも行ってくれないか。」
「え!?ど、どういうこと、お兄ちゃん!?」
いきなりの言葉に僕はまたあたふた。
今日何度目の驚きだろう。
「カグラギは食料庫の確認をしてほしい。
裁判長とヒメノは戻って補給の用意を。
ロゼアが来るぞ!!」
その言葉でパッと王様たちが散る。
ヤンマだけは【媚びねぇへつらわねぇ】の精神か、止まっていたけどね。
「ほら、ヤンマ。行くよ!!」
「ラクレスなんかの命令に従わねぇし。あいつ道具だし。」
「子供みたいなこと言ってないで!
あれはお兄ちゃんからのお願いだよ!命令じゃない。
僕からも頼むよ!!!」
「そこまで言われちゃぁ……な。」
渋々……と言う感じで動き出すヤンマ。
全く。子供っぽいんだから。
そういうところだよ。
「お兄ちゃんは?」
去り際にお兄ちゃんの方を向き、聞く。
お兄ちゃんは一瞬目を伏せ、真顔になって言った。
「最終準備をする。」
それが何を意味するのか、僕はまだ知らない。
[水平線]
「もう攻めてきたか。」
スマホから流れてくる情報を一言一句逃さないように聞きながら、黒尽くめの人物はキーボードを叩き続ける。
性別も、年齢も、容姿も何もわからない。
小さな子どものようなシルエットが揺れる。
でも、あそこにはラクレスがいる。一月は持つだろう。
まだまだ大丈夫そうだけど、仕上げはちゃんとやらなくちゃ。
と、一つ伸びをしてその人物は前を向いた。
そこには、黒いゴッドタランチュラが赤い目を輝かせていた。
今思えば、嵐の前の静けさだったのかもしれないなって思う。
ちょっと油断もあったのだろう。僕らは普段通り、六王国会議をトウフで開いていた。
いつもと違ったのは、お兄ちゃんがいる点。
みんなの押しにリタさんが折れて、危機が過ぎ去るまでの釈放という形でゴッカンから戻ってきたのだ。
「ここ最近、静かだよな。」
ヤンマが話を切り出す。
「ロゼアとやらも我らに恐れをなし、逃げ出したのでしょう。
ささ、鍋にございますよ〜。」
「ラクレス様ぁ!!このスズメが愛情込めてお作りいたしました!」
「フフッ……ありがとう。」
カグラギとスズメが持ってきた鍋に、皆飛びつく中、一人難しい顔のお兄ちゃん。(スズメさんが来て笑ってくれたけど、さっきからずっとこう。)
「お兄ちゃん?」
「……あ、あぁ。ギラか。なんでもないよ。うん、なんでも。」
この反応。なにか知ってるんだろうなと思いつつ、深追いはしない。
深追いしたってはぐらかされるばかりだろうし。
「お兄ちゃんも食べようよ。スズメさん、お兄ちゃんのために作ってくれたんでしょ?」
「あぁ。いただこうかな。」
パチンと手を合わせ、お兄ちゃんがお肉を口にいれる。
「美味い。流石スズメだな。」
「やだもう!ラクレス様ったら〜!!」
「お世辞じゃないぞ?このような美味い鍋を食べられるとは、私は幸せ者だ。」
「嬉しゅうございますわ!」
「れんこん食べる奴いるか〜!?」
「私が食べる。」
「じゃあしいたけもらっちゃうわね。」
「おっと、しらたきまで取らなくてもいいだろう、女王様。」
「まだありますから喧嘩はなさらず。」
う〜ん。お兄ちゃんたちの惚気を気にすることのないみんなの会話。
みんな慣れたな〜。僕まだ全然だけど。
なんて思った、その時。
[大文字][太字]ズドドドドドド………。[/太字][/大文字]
地面が大きく揺れる。でも、これは地震じゃない。
ロゼアだ。そう直感した。
みんなもそう思ったのか、箸を置くと、外を見る。
そこには。
「え!?バッタ!?」
「ゴッドホッパーがなんでここにいんだよ!?」
山々を破壊するゴッドホッパーことバッタの姿が。
え、え!?と混乱する僕に、バッタは語りかけてくる。
―ギラ、お前を見損なったよ。
シュゴッダム国王たちはそんなやつだったのか?―
「え!?なにか勘違いしてるよ、バッタ!!」
僕が言っても、バッタは止まらずトウフの山々を破壊する。
―オレの守護国に手を出したこと、後悔するといい!!!―
バッタはそう叫ぶと、木々をなぎ倒し、山々を削る。
「なんで!?どうしてだよ、バッタ!!」
―サソリーヌちゃんだって、カブタンだって、
みんな見損なったって言ってるぞ!!
五王国は、オレたちの守護国を滅ぼしたって!!―
「え!?」
なにそれ、聞いてない。どういうことなんだ。
って助けを求めお兄ちゃんの方を向くが、お兄ちゃんはもういない。
どこ行ったのと言う間もなく、お兄ちゃんの行方はわかった。
「ゴッドホッパー、静まれ!」
お兄ちゃんが、バッタの体に、何かを突き刺す。
するとバッタの動きは止まり、その場にズズゥンと倒れ込んだ。
「バッタ!?お兄ちゃん、何したの!?」
急いでクワゴンを呼び、バッタとお兄ちゃんの方へ駆け寄る。
バッタの体には、何かの注射器のようなものが刺さっていた。
「お兄ちゃん!?バッタに何したの!?」
―バッタは無事なのか!?―
クワゴンと僕が、一緒にお兄ちゃんに詰め寄る。
お兄ちゃんは面と向かっては答えにくいのか、後ろを向いた。
「シュゴッド向けの鎮静剤のようなものだ。大丈夫。二時間もすれば目覚める。
クワゴン、説得してやってくれないか?
ゴッドカブトとゴッドスコーピオンもこんな感じだろうから……。」
―わ、わかった。―
「わかったって!」
「フフッ……ありがとう。」
笑ったお兄ちゃんの目は、どこか悲しそうだった。
しばらくするとみんな駆け寄ってきて、口々に色々なことを聞いた。
でもお兄ちゃんはニコニコ笑っているだけで、答えようとはしない。
しびれを切らしたリタさんとヤンマが実力行使で言わせようとするけど、それでも言わないのだから相当だ。
「そこまでして隠したいことか?」
「隠してるんじゃない。まだ言うべきときになっていないからだ。」
「じゃあその”時”はいつ来るんだよ!?」
「わかったら言っている。」
焦ったように早口で答えるお兄ちゃん。
普段の余裕は、微塵も感じられなかった。
「ギラ、至急シュゴッダムへ帰ってくれ。
ヤンマとジェラミーも行ってくれないか。」
「え!?ど、どういうこと、お兄ちゃん!?」
いきなりの言葉に僕はまたあたふた。
今日何度目の驚きだろう。
「カグラギは食料庫の確認をしてほしい。
裁判長とヒメノは戻って補給の用意を。
ロゼアが来るぞ!!」
その言葉でパッと王様たちが散る。
ヤンマだけは【媚びねぇへつらわねぇ】の精神か、止まっていたけどね。
「ほら、ヤンマ。行くよ!!」
「ラクレスなんかの命令に従わねぇし。あいつ道具だし。」
「子供みたいなこと言ってないで!
あれはお兄ちゃんからのお願いだよ!命令じゃない。
僕からも頼むよ!!!」
「そこまで言われちゃぁ……な。」
渋々……と言う感じで動き出すヤンマ。
全く。子供っぽいんだから。
そういうところだよ。
「お兄ちゃんは?」
去り際にお兄ちゃんの方を向き、聞く。
お兄ちゃんは一瞬目を伏せ、真顔になって言った。
「最終準備をする。」
それが何を意味するのか、僕はまだ知らない。
[水平線]
「もう攻めてきたか。」
スマホから流れてくる情報を一言一句逃さないように聞きながら、黒尽くめの人物はキーボードを叩き続ける。
性別も、年齢も、容姿も何もわからない。
小さな子どものようなシルエットが揺れる。
でも、あそこにはラクレスがいる。一月は持つだろう。
まだまだ大丈夫そうだけど、仕上げはちゃんとやらなくちゃ。
と、一つ伸びをしてその人物は前を向いた。
そこには、黒いゴッドタランチュラが赤い目を輝かせていた。
- 1.始まり
- 2.ブレスレット
- 3.ロゼアという国
- 4.ゴッドホッパーの反乱?
- 5.ラクレスの隠し事?
- 6.悲劇の始まり
- 7.行方知れず
- 8.ンコソパ国王の過去 【前編】
- 9.ンコソパ国王の過去 【後編】
- 10.マフィアを動かせ
- 11.ハッキング
- 12.マフィアとシエボル?
- 13.ロゼアへの道
- 14.宝石の国
- 15.戦慄のシエボル
- 16.力を以って
- 17.宰相様と国王サマ
- 18.邪智暴虐の
- 19.シスコン総長と呑気な女宰相
- 20.お姉ちゃん
- 21.二人のお兄ちゃん
- 22.スズメのご飯はチキュー1 byアオハ
- 23.スズメとアオハ【前編】
- 24.スズメとアオハ 【中編】
- 25.スズメとアオハ 【後編】
- 26.選ぶ結末、選ぶ未来
- 27.子守唄
- 28.眠る宰相、明けのカラス
- 29.宰相の異変
- 30.終わりの始まり、
- 31.目覚まし時計
- 32.生きる意味ってなんですか
- 33.戦闘民族(?)
- 34.太古の守護神
- 35.王と王妃
- 36.フィナーレ開幕
- 37.宰相の遺産
- 38.ラポネ・リバナラクという男
- 39.宰相たちの墓場【前編】
- 40.宰相たちの墓場【中編】
- 41.宰相たちの墓場【中編その2】
- 42.宰相の墓場 【後編】
- 43.冷却、そして覚悟
- 44.物語の終わりへ結末へ。
- 45.アオハとシエボル【前編】
- 46.アオハとシエボル【中編】
- 47.落下、そして墜落