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さいきょう皇帝様は家族を知らない

#27

愚王と愚民、そして愚帝【前編】

傷口がズキズキと痛む。
街の交差点に寝転がるのはこれが最初で最後だろう。
なんて呑気に考えながら深く息をつく。
「ずいぶん呑気だね、カイザー?」
「だまって、いろ。」
へぇ。と興味深そうな表情をしてこちらを覗き込むのは、ダークグリーンの瞳。
その興味深そうの意は【面白い奴】か【無謀な奴】か。
「ナイトさん、もうあなたは動けないですよね?」
「[小文字]るせ………[/小文字]」
「おいおい、傷に響くだろ?何もしないほうが身のためだぜ?」
集中攻撃を受けたライダーの身体は血だらけで、プランの言う通り動けそうにはない。
「でも、御主人様に逆らっているのにこれだけで帰すのもアレだよね。」
「カイザー、連れてっていいか?」
「ナイトの方も実験体には最高の逸材でしょ。」
【連れて行く】と【実験体】という言葉は、誰が聞いても物騒なものだ。
当の本人ともなると不快でしかなくなる。
いや待て。何の実験体だ?どこに連れて行くんだ?
どうすればいい?どうやればいい?
そう考えている内にオレたちはグルグル巻に。
力の入らない身体は、軽々とラムネに抱え上げられてしまう。
「[小文字]ら……ぺらっ……[/小文字]」
ライダーが細い声でオレを呼ぶ。
なんだとそちらに顔を向けてやればあいつの目は夢でも見ているかのように虚ろ。
まぁ、それだけの怪我をしていて言葉が発せるだけすごいんだがな?
「[小文字]げろ……にげ……[/小文字]」
「何言っちゃってるんですか、ナイトさん?
その傷じゃあ、あなたは何もできないはずです。」
そうだ。プランの言う通りなんだ。
だから、だから、無茶しないでくれよ?
やめてくれよ?自分を犠牲にするとかいうのは、もう……。
「逃げろっ……!!!」
力を振り絞ったような声。それとともにオレの縄が切れ、ラムネがオレのことを放り投げる。
本物のピストルの弾が、オレの縄を切り裂き、ラムネの手に直撃したのだ。
……そんな物騒なものどこで手に入れた!?と叫ぶ暇もなく、オレは走る。
スタート地点へ、やって来たあそこへ、走り抜ける。
逃げちゃだめだとわかっていても、体は言うことを聞かない。
追って!というプランの声が聞こえること以外、オレには何もわからない。



とにかく、走った。



ふと気がつけばどこかの洋室にいた。
どうやってここに来たのかはわからない。
先程まで動かなかった足がなぜ動いたのかもよくわからない。
だが、奴らが襲ってくる気配はない。
安心したのだろうか、足の力が抜け、ベッドに倒れ込む。
今の状況を整理しようとするが、頭が回らない。
でも、オレを助けるためにライダーが犠牲になったのは明らかだった。
「そういうところまで諦めがいいのか。」
二人共助かることはできないとライダーは判断した。
だから、自分の命を諦めてオレに託した。
それを、あの1,2分で決断したというのか。
自分の命に構わなすぎだろう。
「愚民が……!!」
あいつの仲間思いは昔からだった。
―エンペラー、オレが引き付けるからその内に。―
ダイナモというブキ使用者のサガなのだろうか?
あいつは自分を囮に使うことになんの躊躇もしていなかった。
幼いときから、今までずっと。
それは、ソレイユも同じ。二人共、自分の命に未練はないかのように捨てる。
オレを、仲間を、逃がそうとする。
オレには、そこまでの勇気がない。
命は惜しい。賭けるほど未練がないわけじゃない。
プリンツの成長も見たいし、母様を泣かしたくもない。
それでも、命をかけなければならない場面があれば。
全員生きて帰れるよう、技術の限りを尽くす。
それで助けられないなら、どれだけ恨まれようが、無理矢理にでも仲間を引っ張って逃げる。
それしか、オレにはできない。
オレは昔からそうだ。命の危機ではないと知っているなら、向かっていく。
命の危機だと感じたら、速攻で逃げる。
ライダーは、ソレイユは、命の危機になろうと、楽しそうなら、人を助けられるなら、行く。
それが、例え奈落に落ちることになろうと、炎の中に飛び込むことになろうと。
そんな二人が、オレは大好きだった。
憧れていた。かっこいいと思った。
―[漢字]王[/漢字][ふりがな]おまえ[/ふりがな]に用があるからな!!!―
性格は全く変わってなかった。
初の敵同士でのバトルでも、あいつはオレを恐れることなく向かってきた。
そして……自分を囮にして、最高のスペシャルコンボを決めてきた。
一瞬、絶望した。
オレの危機管理レベルがトップまで上がり、バトルで初めて、死ぬかもと思った。
だから全力で避けた。
皆は神業だと言っていたが、オレにとってはただ必死で避けたに過ぎない。
ソレイユが見たらきっと、ライダーに軍配を上げるだろう。
王だ何だの言われても、オレはただの弱い[漢字]少年[/漢字][ふりがな]エンペラー[/ふりがな]。
二人とはやっぱり覚悟の差が違う。
そう思ったその時だった。
「えん、ぺらー?」
隠すことのない透き通るような高い声が聞こえる。
イカミミを暖かく包むようなその声色。
「どうして、ここに?」
なんとか身を起こしてそちらを見る。
そこにいたのは、ソレイユだった。

作者メッセージ

ソレイユが登場!!!!というわけですが、エンペラーの本音再び!!ですね。
やっぱりライダーは自己犠牲しちゃうんだよな〜。
だって5巻が全てだもん、ライダーは。(エンペラーは5,6巻がそう。)
逃げないしいいやつだし……。
おっと、語りはここまでにして。感想、コメント待ってます!
よければ他の小説も読んでってね!!
では!See you again!

2024/08/16 14:01

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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