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さいきょう皇帝様は家族を知らない

#10

殺し屋の子

「よく来たな、ソレイユ。」
「ははっ。」
頭なんて下げたくもない相手に、頭を垂れるのは、吐き気がするほど嫌だが、今はしょうがない。
「さて、今日から我らの一員になってもらうが、お前は少々現世の穢れが多い。」
「……。」
何が穢れだ。こっちのほうがよっぽど穢れてるわ。
そんなツッコミを飲み込んで、あの野郎の方を向く。
「そこでだ。お前が現世で仲良くしていた者をここに連れてこい。」
「……なんと?」
あの野郎の頭がぶっ飛んだとしか思えない言葉に、自分は耳を疑う。
「二度は言わん。さっさと連れてこい。」
待て、待て、待て!!
仲良くしていた者?もしかして、まさか、まさか……!?
「ライダーとエンペラーのことで、ございましょうか……?」
「名は知らぬ。もう一度口をきいたら、そいつもシャインのようにしてやろうか?」
その言葉に自分は慌てて額を地面につける。
頬を、冷や汗が伝っていく。
脳内では、あの光景がずっと流れている。
「誠に申し訳ございません!!」
「わかるな?」
「ははっ!!」
喉を何かが駆け上がっていく。
気を抜いたら過呼吸になりそうだ。
逃げるように自分は、部屋から出ていく。


太陽はもう、すっかり沈んでいる。
「暗っ……。」
あの時もそうだったっけ?
忘れちゃった。何年も前だもんな。
こうやって記憶は全部廃れていく。
「ごめん、お兄ちゃん。」
自分は、私は、お兄ちゃんとの約束、守れない。


[水平線]

十年以上前のことだった。
私が生まれたのは、普通……ではない、犯罪者集団のボス格の両親の元だった。
兄姉は四人。長男のシャイン、長女のリュミエール、次女のライト、次男のスパーク。
私は末子。みんなとは年がすごく離れていたから、私が物心ついたときには、彼らはもうヒト状態になれていた。
「ソレイユ、おいで。」
お兄ちゃんたちは、いろいろな世界を見せてくれた。
初めてのハイカラの街、ナンタイ山。
シャイン兄ちゃんのブキはカーボンローラー、
リュミ姉ちゃんのブキはリッター、
ライ姉ちゃんのブキはホットブラスター、
スパ兄ちゃんのブキはハイドラント。
四人は最強のチームだった。
そして、私の憧れだった。
「見てろよ、ソレイユ!」
バトルに行くとき、シャイン兄ちゃんはいつもそう言っていた。
でも、私は見に行くことはなかった。
父[打消し]いまで言うあの野郎[/打消し]は、自分の思い通りにならない四人を嫌っていて、バトルにも反対だった。
それは私にも強制された。
バトルを見るのは禁止。一人前の殺し屋になるために日々きつい訓練を課された。
流石に海に投げ捨てられたときには死んだと思ったけど……。
「やめてよ、やめて!父様!」
「うるさい!静かにしろっ!」
父には情というものがなかった。
家族であろうと必要があればすぐ捨てるし、すぐ銃口を向ける。
母はその被害にあって、私を産んだすぐ後に死んでいた。
「大丈夫か。ソレイユ。」
そんな私にとって、家族と呼べるのは兄姉だけだった。
その唯一の家族が、父の刃にかかったのは、私が6つほどのときのことだった。
「逃げろっ!!ソレイユ!!」
「戻ってこないで。後ろを向いて、振り向かないで!」
「いい?私達をお姉ちゃんでいさせて。」
「このブキで、目一杯バトル楽しんでこい!」
自分のものとはまた違う血の香りに背を向けて、私は逃げた。
逃げて、逃げて、逃げて。
気がついたら、どこかわからない場所にいた。
持っているのは、スパ兄ちゃんの持たせてくれた形見のハイドラントだけ。
「おにいちゃ……。」
狭い路地で、独りぼっち。これほど辛いことはない。
地面に落ちる涙。だめだと思ってもこぼれ落ちてくる。
お兄ちゃんの名前をもう一度呼ぼうとした、その時。
「わぁぁっ……とうさまぁ!かあさまぁ!」
「泣くなよ、泣いちゃだめだって!」
大きな泣き声が、路地の奥から聞こえてきた。
ひぐひぐ無理やり泣くのをやめて、そちらをちらりと向いてみれば、私とほぼ同じ年の少年たちが、狭く小さい路地の奥で泣いていた。
「おーい、君たち。」
ビクッ「は、はいっ!!」
少年は、怯えたように体を震わせ、私の方を向く。
「どうした?母様とはぐれちゃったか。」
「……はい。」「そのとおりだ!!」
縮こまる少年と、胸を張る少年。
対照的だが、目の奥にある感情は一緒。不安の一色だ。
「なんでこんなところに入っちゃったかなぁ……。
危ないから一旦路地からで「危ないっ!!」
黄緑色の少年が叫ぶ。
しかし私は動じず後ろを向きながら蹴りをかます。
ドズっ。綺麗に顎に入ったのか、襲ってきたのであろう男が倒れる。
「ほら、出るよ。」
とりあえず二人の手を掴んで引っ張っていく。
「へ、お姉さん、名前なんですか。」
「ん?私?ソレイユ。」
「お、オレ、ライダー。」「オレはエンペラー。」
そう。これが、二人との出会い。

その後、二人の母はなんとか見つかり、私は路上生活を余儀なくされた。
父のもとに戻る気にはなれなかったのである。
「おー。ライダー、エンペラー。」
「よぉ!」「あぁ。」
二人との交流は続いて、最終的に数年経った今でも続いている。
路上生活は、誰も所有していない空き家を郊外で見つけたことで終了し、私は今はそこに住んでいる。
ライダーが住むようになったのは、家族が絡むとある出来事が起こってからなのだが。



[水平線]

楽しくバトル。みんなで楽しく暮らす。
そんな簡単なことが、私にはできない。
犯罪者の家に生まれたから?
そうじゃない、はずなのに。
私は今でも、その束縛から、逃れられていない。

作者メッセージ

ソレイユの一人称、「私」なんですよね!
そしてまさかの犯罪者の子ども!書いてる私もびっくりです。
次回はライダーが住むようになった原因の事件を書きます!
では!See you again!

2024/07/17 19:39

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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