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王。それは王道を進むもの

『[漢字]王[/漢字][ふりがな]おまえ[/ふりがな]に用があるからな!!』
あってはならない。
王として、求められるのは絶対の勝利。
相手には楽しませず、自らのみ楽しむが王道。
それ以外は、王として邪道だ。



絶対的な力量差はあったはずだ。
そして、序盤でそれを見せつけた。
普通なら、どんなにタフなチームでも、これで心が折れる。
それが、【普通】なのだ。



それでも、どれだけ力の差を見せつけても奴は。
『面白ェ………止めてやる!!!!』
『たしかにムリだ………オレ一人じゃな!!!』
『おらっ!!まだ時間はある、塗り返すぞ!!』
笑顔で、面白くてたまらないと言うかのように。
オレに向かって突っ込んできた。



そんな奴らにオレは、〈無謀だ〉と笑う。
そうして、もう一度全員倒して、〈ほらな?〉と嘲笑う。
それでも、そうしても、奴らは。
スタート近くまで攻められても奴らは。
『まだ終わっちゃいねぇ!!!』
諦めることをしなかった。















でも、何より、それ以上に。













『クツの裏、いい色になってるじゃねぇか。』
その言葉が、その事実が、この、なんとも言えぬイラつきの原因だった。
たったそれだけ。ヒットされたわけでも、負けたわけでもない。
ただ、ただ、自らの聖域で、自ら以外の色で汚れることのなかったクツが、相手の色に染められただけ。
なのに。なのに。


オレは奴の顔を忘れることができない。
奴のあの、楽しそうな笑顔を忘れることができない。
あの、負けても楽しそうな顔を忘れることができない。
「あ゙ぁ!!!!」
濁った叫び声を、誰もいない練習場であげる。
憂さ晴らしに、愛用のスプラマニューバーコラボを手に取り、
スライドをする。









スパン、とバルーンが一つ、倒れる。
「違う。」
もっと上だ。もう一度。
スパン。
「違う。」
もう少し下だ。
スパン。
「違う。」
もっと右!!!
スパン。
「違う!!!!」









何発撃っただろう。
何回、違うと叫んだだろう。
「もうすぐ決勝戦なのに………。」
何かが違う。何かがおかしい。
自分の中で何かがはまっていない。
「ハァ、ハァ、も、もう一回………。」
もう一度、やろうと、ブキを握りしめた、その時。





「何やってんだ、エンペラー?」
戸惑いと、不安の混じった声が聞こえた。
「………Jr(ジュニア)か。」
色黒のボーイがオレの後ろに現れた。Jr………エギングJrだ。
「ま。さっきから見てたんだけどな〜。」
軽いノリで、彼はオレの横を通り過ぎ、背中を向ける。
すっと自然な動きでクラッシュブラスターを取り出すと、
彼はドパン、ドパン、ドパン、とバルーンを三つ、一瞬のうちに倒した。
「見ていたのか?」
声が震える。
『何を?』そう言ってくれ。いつものお前のその陽気な声で
「……はっきり言わせてもらって。」
けれども彼の顔は、静かなまま。
そして、ためらいつつも彼はこちらを見る。
「お前らしくなかったぜ。……迷いがあった。一つ一つ、迷ってた。」
「………そうか。」
彼の口からこぼれ落ちる声は、全てが事実を指していた。
だからオレは、否定しなかった。
オレがオレらしくないのはきっと、誰に聞いてもそうだと言うだろうから。
「いや、でも、動きはすごかったし、
バトルに支障が出るってほどじゃぁ……。」
「……いいや。お前の言うとおりだ。」
Jrが急いで言い直したのを見て、
やっぱり自分がどうかしているのだとわかる。
動き、狙い、全てが見れたものではなかったのだろう。
「大丈夫だ。
……今日の練習は自主練にしてもいいか?決勝戦までに調整したい。」
Jrは、オレになにか言おうとしたものの、
オレの意思が固いのを見て取るとすぐに頷いた。
「りょーかい。プリンツとエンペーサーにはオレが伝えとくな。」
「………頼む。」




[水平線]






Jrが出ていった後、オレは一人、バルーンに寄りかかって座っていた。
「オレらしくない………か。」
確かに、クツの裏を相手インクで汚したというのは屈辱だ。
けれど、オレが、屈辱一つごときでここまで変わるのか?
オレは、何にイラついている?
オレは、どうしてここまで奴にこだわる?
「あ゙ぁ!!もう!!」
考えたくない。全てを放棄したい。
こんな感情、初めてだ。
「何なんだ、貴様は………。」
この場にいない、元凶に向かって聞く。
答えが返ってくるはずもなく、その声は響くばかり。
「ハァ………。」
目を閉じ、静かにしてみる。ワーワーと声がする。
ここは練習場だ、当たり前だろ、と言い聞かせるも、
何かが引っかかって取れない。
心の奥底がむず痒くて、たまらない。
行け、と内なる声が命令する。
「……行けば、いいんだろう?」
目を開け、そっと立ち上がる。
足は全く動かない。
けれど、
この状況で何をするんだ、行くしかないだろ、と声が言っている。
「……行けば。」
子供のように不満そうな、自分の声。
その声に足を引きずられながら、オレは重い足を無理やり前へ動かす。





















[水平線]









「ダァっ!!」
ワーワー言っていたのは、イエローグリーンチームだった。……らしい。
オレが行ったときには、その場にはあの褐色肌のボーイしかいなかった。
あの、オレが忘れられない
「………ここで練習していたのか。」
遠くから眺めると、奴の顔は、準決勝のときとは真逆の真面目な顔だった。
ドゴッと響く、ダイナモの音。バルーンが五個ほど潰れていく。
ふう、と奴は一息つくと、こちらを見た。
「……?お前……。」
「……!!」
こちらを向いた奴はオレの方を見たまま止まる。
オレも、奴を見たまま止まる。
そうして、にらみ合いが少しの間続く。





「どうしてここにいるんだ?」
先に口を開いたのは奴の方だった。
「……練習だ。ただの。」
「そうかよ。……で?なんで[漢字]オレのところ[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]にいるんだ?」
本当に不思議と思っているように奴が言う。
「……暇だから見に来た。」
平然と言ったものの、自分でも声が震えるのがわかる。
奴は一つ深くため息をつくと、オレの方を向いて言った。
「暇……ねぇ。なら。オレの練習、付き合ってくれねぇか?王様よ。」
「なぜ…「暇なんだろ?ちょっとくらいいいじゃねぇか。」
オレの言葉を遮り、奴が言う。
オレは渋々頷いた。






ズドンッ
ダイナモの重い一撃が襲う。
「おいおい、どうしたよ?」
「うるさい!!黙っていろ!!愚民!!」
そう言っても、オレの弾は全く奴に届かない。
避けても避けても、反撃ができない。
ドドン、とボムが爆発する。
「くっ………。」
どうすれば、どうすれば。
これを、この状況を、このオレの感情を、壊すことができる?
どうすれば………。
「………!!」
手に触れたのは、カーリングボム。オレの、サブウェポン。
何ヶ月も、バトルでは使っていない。使う必要がなかった。
……けれど。今は違う。
普段じゃない。これは、オレの、オレだけの戦い。
【いつも】と違った行動をしてみようと思った。
「サブウェポン……。」《カーリングボム!!!》
「……!?」
やっぱり奴の頭の中にはなかった選択肢のようだ。
行ける。やれる。そう思った。
「反撃開始だ。」
ドドドドドドド………と弾がどんどん当たるようになる。
カーリングボムを混ぜた攻撃にもなれてきた。
「面白くなってきたじゃねぇか!!」
その戦いは白熱し、ついには相打ちになって終了した。




「[小文字]はっ……はっ……はっ……。[/小文字]ど、どれだけ時間経った?」
「し、知るか………。」
ごろりと二人で横になると、いつもは見れない練習場の天井が見えた。
奴も、オレも、話さない。何を話そうか、それさえわからない。
でも、引っかかっていたものは、跡形もなく流れて消えていた。
「準決勝………[小文字]すごかった。[/小文字]」
そう、言葉が漏れる。はっと口を塞ぐも、もう遅い。
奴にはもう、届いていた。
「……!?お、おう……。」
もう、届いてしまったのならしょうがない。全部言ってやる。
ヤケにも近いその感情に押されて、口から言葉がどんどん出てくる。
「あのスペシャルの重ね技は、予想になかった。避けるのにも一苦労した。」
「当たんなかったけどな。」
ぷくっと頬を膨らませて、奴が言う。
けれど、当たったか当たらなかったかは問題ではない。
「いいや。それでも、一瞬焦った。それに…悔しかった。
クツの裏を汚されたのが悔しかった。……子供だと笑うか?
笑っていいぞ。いいや。大いに笑え。」
「………。」
奴は少し考え込むと、口を開いた。
「オレは、そうは思わねぇ。……逆に、安心した。」
「何を。」
オレがそう聞くと、奴はフッと笑った。
「お前も、悔しがったりするんだなって。
……お前も、普通の[漢字]人[/漢字][ふりがな]イカ[/ふりがな]なんだなァって。」
【普通の[漢字]人[/漢字][ふりがな]イカ[/ふりがな]】。
それは、みんなにとってはありきたりなこと。
でも、オレにとっては特別なものだ。
「そうか……。オレは……普通の[漢字]人[/漢字][ふりがな]イカ[/ふりがな]なのか。」
みるみるうちに、心の中が暖かいものでいっぱいになる。
「ご不満か?」
奴がそう言うが、オレはふるふると首をふる。
「全然。……次の決勝、見ていろ。圧勝してやる。」
笑ってそう言ってやると、奴はハッハッハッ……と爆笑し始めた。
「どうかな?[漢字]ゴーグル[/漢字][ふりがな]あいつ[/ふりがな]は絶対、[漢字]王[/漢字][ふりがな]おまえ[/ふりがな]の思い通りにはならねぇぜ?」
「なんだろうと思い通りにしてやる。それが、[漢字]王[/漢字][ふりがな]オレ[/ふりがな]だ。」
どうだろう。
いや、でも。思い通りにならなくても、もうオレは迷わない。

[大文字]………もうオレは子供じゃないんだ。[/大文字]





[水平線]








〈いくぞ、みんなー!!!〉
〈スクエアキング杯、決勝戦ー!!!〉
テンタクルズの声が、会場中に響き渡る。
オレは、いつも通り、ギアを羽織り、インクタンクを背負う。
「エンペラー、大丈夫か?」
心配そうに、Jrが聞く。
「あぁ。問題ない。」
表向きではまだ、オレの機嫌は直っていない。
威厳を傷つけられたら、怒らないではいられないから。
けれど、心のなかでは。
あのときの引っ掛かりは、叫びたいばかりの敗北感は、
消えていた。
〈迎え撃つ王者!〉
やってきた。このときが。
何度来ても、緊張する、この瞬間が。
「いくぞ。」
〈両チーム、入場だーー!!〉
カッとまわりが明るくなる。
ここはガンガゼ野外音楽堂。
会場の席はすべて埋まっている。
〈ブルーチーム対、エンペラーチーム!!〉
〈はたして4連覇の絶対王者に、勝つことはできるのかーーー!!〉

観客席には、S4や、グローブもいた。
そして、[漢字]奴[/漢字][ふりがな]ライダー[/ふりがな]も、いた。
奴の方を、奴の顔を見ながら、オレは武器を構える。
「王は破れぬ。」
そうだ。オレは、王なんだ。最強の、絶対の、王なんだ。
でも……普通の[漢字]人[/漢字][ふりがな]イカ[/ふりがな]でもある。
それが、オレだ。
それが、[漢字]オレ[/漢字][ふりがな]エンペラー[/ふりがな]なんだ。
「勝ちに行くぞ。」

作者メッセージ

え〜。スクロールお疲れ様です。
……どうでしたかね。
コロイカ(コロコロスプラトゥーン)のライエンにしたはずではあるのですが。
まったくCP要素がなくなりましたね。
次は……書こうかな。

2024/04/27 15:28

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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