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さいきょう皇帝様は家族を知らない

#7

サーモンランと、ライダーの憂鬱

「バイトかよ…。」
「行かないのか、ライダー。」
不思議そうにこちらを見つめるエンペラー。
……こいつ、バイト知ってんのかよ。
いいねいいねと言いまくるあいつの背中に、冷たい視線を送る。
第一オレは、あんな怪しい場所、二度と行きたくねぇんだが。
「あんな楽しいところねぇだろ!なぁ、ライダー、いいだろっ!!」
「よくない。」
駄々こねんな、ガキじゃあるまいし。
白く細いあいつの手が、オレの足に当たる。
……痛くはねぇな。
「オレからも頼む。修行のためだ。」
「前ぶっ倒れたやつが何いってんだ!?」
もう心配かけるなよ。
ほんとこいつら、心配かける能しかないのか……(バトルは強いけど)?
「……そこを何とか!二人だと難しいんだって!」
手を合わせ、土下座をするあいつ。
そこまでされたら、オレが断れないの知ってやがんな?
さすがはガキの頃からの付き合いではある。
「わぁったよ。しょうがねぇ。付き合ってやる。」
「やったぁっ!!」
飛び跳ねるようにして喜ぶあいつ。
あいつはこんなふうに、ガキっぽくなることもあれば、
大人っぽくなりすぎることもある。
「行くぞ!クマサン商会!」
オレを引っ張るようにして進むあいつ。
やっぱり行かなかったほうがよかったかななんて、ため息をつきながらオレは思った。



[水平線]


「そしてちゃんとブキはこうなると。」
呆れ気味なオレの声が、船の中で響く。
あいつはちゃんとスパッタリー、
エンペラーはスプラマニューバー、
オレはダイナモ。
なんでこんなにぴったりなブキが……?
「そろそろだな。行くぞっ!!」
ぴょんっとエンペラーがイカになり、向こうへ飛んでいく。
あ、待て、と言って、あいつも飛んでいく。
しょうがない。一つ息をおいてダイナモを抱え、オレも飛ぶ。
「シェケナダムか。」
とっと着地して、先についていた二人の顔を見る。
戦う気満々の笑顔だ。
「はぁ……。」
なんでオレは、こんな戦い厨と一緒になってるんだろう。
[打消し]ミコト〈[バトルは強ぇ奴が一人いれば勝てるんだよ]を忘れたのか?(圧)〉[/打消し]
いや、昔はオレもそうだったかもしれねぇけどさ。
コイツラよりはマシだと思いたい。
なんて思ってたら、もうあいつは走り出していた。
「ちょ、早い早い、待て待て!」
「マニューバーは動くのが仕事!ちょっくらタワー潰してくる!」
「まだWAVE始まってねぇぞ!?」
大慌てであいつを止めようとするものの、次はマイペースキングが動き出す。
「トップトップ!どこ行く気だ?」
「ん?行かないのか?」
「いや待てよ、そっちオオモノいるかも知れねぇのに!」
オレはもしかしたら前世、保育士だったのかもな。
なんて冗談を考えてしまうほど、コイツラはガキだった。
待て待て待て、と二人を追いかけているといきなりWAVEが始まる。
瞬間、シャケが襲いかかってくる。
オレが持つブキは重くて不意打ちに弱いダイナモローラー。
そしてこの数。一対一なら行けるだろうが……。
やばいな。ただ、今は第1WAVE。スペシャルを使うのは勿体ない。
なんて思ってるオレを殴りたかったが生憎体が動かない。
シャケが目の前に迫ってくる。……が、そのシャケは一瞬のうちに消えた。
「どうした、ライダー。腕がなまったか?」
エンペラーが一瞬のうちにシャケを片付けたのだった。
休む暇もなく、エンペラーはオレらの周りに纏わりついてくるシャケを潰し始める。
オレも負けじとダイナモを引き回す。
「……なかなかだな。」
「るっせー!!」
エンペラーがタワーを攻略する。
すごくありがたい。なんてったって[漢字]オレ[/漢字][ふりがな]ダイナモ[/ふりがな]はタワーが嫌いだから。
オレもお返しにとりあえず近くにいたドスコイを倒しまくる。
インク切れを起こさない程度に。
「あいつは?」
ふと思い出して、エンペラーに聞く。
エンペラーは何も言わずに、後ろを指差す。
金網地帯。恐る恐る見てみると、タワー、カタパ、テッキュウが大量発生している。
しかし、心配ご無用と言わんばかりにあいつが、オオモノ共を潰している。
「心配いらねぇな……。」
「だろうな。」
オレたちは顔を見合わせて苦笑い。
インクまみれの顔と、似合っていないツナギが、オレの笑いのツボを押す。
「プハッ!似合ってねぇな、王様さんよ。」
「うるさい。……ここ任せる。オレは、とりあえず金イクラ運ぶ手伝いをしてくる。」
「任せろ。」
あんなにオオモノを倒しても、一人じゃぁ運び切ることはできないだろう。
エンペラーの背中を援護するためにとりあえずドスコイ及びザコシャケ共を潰しまくる。
三人でできる範囲は限られるから、オレは一番得意なことをするだけ。
あいつらはスピードが武器で、こっちは火力。
あっちはあっちで大丈夫。エンペラーはあいつが守ってくれるだろう。
大丈夫だ。
「おう。」
目を離した少しの間に、金イクラがコンテナに詰め込まれている。
あぁ、終わってるこれ。オレが行くあれもなかったな。
「終わったぞ〜!!」
早い。早いなこの。
ちょっとアイツラ二人を殴りたくなったのは秘密で。
ちょっとエンペラーのことをかっこよく思ってしまったのも秘密だ。
ちょっとあいつのことが心配になってしまったのは、特に。
……最後の2つは墓まで持っていこう。
「早いな。」
突っ込みながら後ろにいたザコシャケをタテ振り一つで一掃してから駆け寄る。
とりあえず金網地帯のオオモノは大抵倒されてる。
お前は化け物か。
幼いときから一緒にいたとは言えど、この強さはちょっと異常だと思う。
まぁ、アレだからしょうがないが。
「おー。またドスコイども倒しまくったのか。
やっぱダイナモがいると安心感違うよな〜。」
ニコニコ笑いながらこちらへかけてくるアイツ。
いつもの皇帝モードの時は氷を直に押し付けたときみたいに冷たいのに。
ってか、ダイナモのオレより笑顔のお前がいるだけで安心感が桁10個ぐらい変わるんだが!?
「うるせー。ってかまだWAVE終わってねぇぞ?油断すんな。」
「大丈夫だ!自分が全部終わらせてやる!」
言い終わらない内に、周りに寄ってきたシャケが消えている。
相変わらず足、速いな。お前はニンジャか。
そしてなんだよこの安心感!!!
小さいときからやっぱりお前は変わらねぇよな……。
「オレたちに見せ場はないのか……。」
「自分が二人共、1デスもさせねぇからな?」
やっぱり……そういうところだ!!!!



その後、やっぱりオレらは1デスもしなくて、楽々3WAVEクリアして。
(ほとんどあいつのおかげ)
不安はない。あいつは強い。あいつらは最強。オレも、二人と一緒でなら最強だけどな。
でも、考えてしまうことがある。
あいつは、不安にならないのか。
あいつは、感情の変化が極端なところがあって、
ちょっと子供が抜けきれてないところもあって、
頼ることを知らない。
「しゃ!これで少しの間食費は大丈夫だろ。」
最強と名高い[漢字]皇帝[/漢字][ふりがな]インペリアル[/ふりがな]。
その本当の名をオレたち以外誰も知らない。
過去も、出自も、誰も知りやしない。
それを誰も、気にしない。
あいつは皇帝。それ以外の何者でもないから。
ヴィンテージがX,または覇者であったように。
エンペラーが王者であったように。
オレは知っている。いつまで経っても消えない肩書は自由を奪う。
あまり負けたことのない者は、楽しみを忘れる。[打消し](それをしないためのサーモンランなのだろうか。)[/打消し]
自由と楽しみ、どちらも知らない者は、いつか。
いつか、破滅する。
「はぁ、帰るぞ。昼飯、グラタンにするか。」
[太字]問題ないよ。大丈夫。[/太字]
あいつのその言葉に、何度救われたことだろう。
[太字]心配すんな。自分は自分。[/太字]
その言葉を、何度かけられたことだろう。
「よし!ジェッパで帰るぞ!」
「それをやめろと言ったのは誰だ?!」
この笑顔も、見れるのはいつまでか。
あいつが帰ると言ったら、オレたちは止められない。
どんなにあいつが望んでなくとも。
どんなにあいつに、悲劇が待ち受けていようとも。
止められない。
そんなオレが、弱いオレが、
『バトルは強ぇ奴が一人いれば勝てるんだよ!!!!』
オレはやっぱり大嫌いだ。

作者メッセージ

お待たせいたしました!
ライダーって意外と心のなかではデレてそうなんですよね。
見せないだけで。
エンペラーも、インペリアルも、大好きなんですよね。
この話では、インペリアルが本名ではないことが確定します。
さて、あいつの本当の名前とは?
目的とは?

2024/09/21 20:46

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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