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さいきょう皇帝様は家族を知らない

#4

新しい家

弁当を食べ終えた後、オレたちは部屋を出た。
くれぐれもちゃんと食べるよう言い残して。
「なぁ、ライダー。」
オレは言う。
「なんだよ、エンペラー。」
「あいつ、大丈夫だろうな……?」
幼き時から無茶ばかりするやつだ。
……まだ弱かったオレたちを守ってくれたことも多かった。
「わからねぇよ。あいつの少食は今に始まったことじゃねぇしな……。」
だろうな。オレは笑う。
あいつが少食なのは、昔からだ。
いや、昔はもっとひどかったような。
「さっさと帰るぞ。今日はスーパーで安売りやってる。」
「そういう情報はどこから仕入れてくるのだ……。?」
いつの間にか手にはレジ袋、リュックを背負い、走り出そうと万全の体制を整えている。
「チラシ。とおふくろ。」
お前の母上は魔術師か何かか?そう言いたいのをぐっとこらえてライダーを抱える。
「捕まっていろよ?」
ジェットパックを背負うと、可動式の会場の屋根の隙間から大空へと飛び立つ。
二人乗りでもこの高さ。
メガネがフェスのときに大空高く舞い上がっていったそうだがよほど怖かったろう。
「おー、いい景色だな。」
「呑気な。」
そう。こいつは呑気なことをいいながら、ジェッパを
(俺に怪我させないための配慮なのだろうが……)とんでもない腕力で掴んでいる。
「よっしゃ!エンペラー、行くぞ!」
オレに操縦権はないらしく、ジェッパを左に傾け右に傾け、スーパーへと一直線。
お前は……安売りとなると人が変わるな。
「よし!着いた!」
そうするとライダーはスーパーの駐車場へ飛び降りる。
怪我への不安はないのだろうか……?
「あ、おい、ライダー!?」
オレもジェッパを解除し、地面へと飛び降りる。
「危ないことするんじゃない!」
「大丈夫だ、怪我しねぇし。」
「どんな体してるんだ?!」
ケロッとした顔で買い物に向かうライダー。
やっぱりお前はどういう体をしてるんだ?
「よし、エンペラー。行くぞ!」
これは……お一人様〜までというやつを二人がかりで購入させるやつか。
「了解。」
そしてオレは、一旦ライダーから離れ、野菜のコーナーへ。
とりあえずチラシとやらに載っていた安いものをかごに入れる。
ライダーも肉類を入れているところだろう。
「美味そう。」
ライダーの作る肉詰めは絶品である。
どこかのコックが作るよりずっと美味いと思う。
ピーマンは苦手だが、あれだけは美味いと思える。
「いや、戦争状態だったな。」
いつの間にか後ろにライダーがいた。
精肉コーナーはイカたち、タコたち、クラゲたちで満員状態。
その比喩も間違ってはいないのかもしれない。
「会計しに行くぞ。……ピーマン?好きじゃなかったろ。」
「肉詰めが食べたいからな。」
結構買った。
[漢字]三人[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]暮らしならこれぐらいあれば足りるだろう。
「3380円で〜す。」
店員の声。ライダーが財布を取り出す。オレもカードを出す。
少しばかりの目線喧嘩。
一つため息を付いて折れたのは、ライダーだった。
昔は、オレが出そうか。と止めても、いいいいと首をふっていたので、最近は無理矢理にでも出すようにしている。
王の家を舐めるな・
「お預かりします。」
会計はすぐに終わり、オレたちはレジ袋に商品を詰め、ジェッパを使わず、あいつが回してきた車に乗り込む。
「早いって、まぁたジェッパで行ったろ。」
「だって、安売りだぞ。戦争だ。ジェッパだろうが戦車だろうが使わずにいられるか。」
……お前はやっぱり、安売りとなると人が変わるな。
安売りに行くためならなんだってするだろ、お前……。
「はいはい。帰るぞ〜。」
車のキーをガチャリと回す。
エンジンが唸り、車が発射する。
やっぱり、ジェッパよりこっちがいい。
「今日のスペシャル、最高だった。」
ミラー越しでもわかるニコニコ笑顔で、あいつが言う。
「お前の身体能力はちょっと人離れしてる所あるよな。」
「あそこまでインク無しで駆け上がるの、普通はできないぞ?」
「まぁな〜。」
ウキウキワクワクとした声色。何にそんなにワクワクしてるんだ?
今日は何かあったっけ?考えてもわからない。
イベントごとはない。ん?なにか……忘れてるような?
「?どうしてそんなに機嫌いいんだ?」
ライダーもそう思ったのか、聞く。
「忘れたのかよ?
今日は、私とライダーの共同生活ぴったり一周年だぞ。
ついでにエンペラーがやってきた記念祭だ。」
訝しげにあいつが言うが、、、、オレたちは顔を見合わせる。
ライダーはすっかり忘れていたようであった。
オレも、そう言えばそんなこと言ってたな、と思い出す。
「というわけで、今日は楽しむぞ!!」
楽しむのは構わない。というか、オレも楽しみたい。
でも、うん。ハンドル操作をもうちょっと危なっかしくないようにしてほしい。


[水平線]

「「ただいま〜。」」
「お、おじゃまする。」
あいつらの家は、オレの家より狭いとは言え、広いものだった。
入るときに少し緊張してしまうほどに。
「ただいまでいいんだよ。今日からここは、お前の家だ!」
あいつがオレの肩を叩く。
ちょっと痛い。でも、あったかい。
「よーし、飯でも作るか。」
ご飯は炊いてあるからな。と笑顔で言ってくれる。
外では絶対に見せてはくれない笑顔だ。
「料理はオレに任せとけ。」
「サンキュ、ライダー。じゃ、エンペラーは家案内するからこっち来いよ!」
あいつはオレの手を引っ張る。
まぁまぁ新しそうな家。リフォームしているのだろうか?
ところどころ古い洋館の雰囲気が漂う。
「ここが図書室。漫画も小説も取り揃えてる。」
「こっちクローゼット。いろいろ入ってるよ。……これとかどうかな。」
「ここ寝室。ベッドはエンペラーサイズだから三人で寝れる。」
「ここコレクションルーム。好きなものコレクションするといいよ。ここがエンペラーのね。」
「ここお風呂!結構広いでしょ?」
部屋数が普通に多い。オレの家の部屋数と同じくらいだろうか?
「よし、終了!ダイニング行くぞ!」
あいつは吹き抜けになっている四階の部屋のど真ん中から、一階へ飛び降りる。
お前もライダーとそっくりだな。
呆れながらにそう思う。
オレには足を折る勇気はないので階段へ向かう。
階段も長い。こちらを見る絵画が不気味でしかない。
「[小文字]この家で、一年前まで一人で生活していたのか。[/小文字]」
オレだったら無理だな。
恐怖と寂しさとその他諸々で途中で投げ出すだろう。
白く美しい壁と天井が、オレを何処かへ連れて行ったしまうかもしれない。
「行かなきゃ。」
肉じゃがの良い香りがする。オレの大好物の。
少し苦いピーマンの香り。ちゃんとリクエストには応えてくれるようである。
「待たせたな。」
「遅いぞ〜!ご飯だご飯!」
「飛び降りてくるなよ。床抜けるだろ。」
これからの三人生活、楽しみだ。


[水平線]


「エンペラー。ライダー。お風呂出たか?」
「「出たぞ〜。」」
オレとライダーの声がシンクロする。
白いシルクのパジャマ姿のオレと、黒い綿のパジャマ姿のライダー。
……こいつもパジャマ着るのか。てっきり普段着で済ませているものかと。
先に風呂に入っていたあいつは、青色のパジャマに身を包み、キャップをかぶっている。
「早く来いよ。寝るぞ〜!」
ベッドを叩き、あいつが言う。
「おーおー。寝るか。明日も早ぇし。」
「おい、え、一緒に寝るのか?」
違和感無しであいつの隣に倒れ込む。
「エンペラーも来いよ。」
覚悟を決めたオレも、あいつの隣に寝転がる。
「ねんねんころりよ おころりよ 二人は良い子だねんねしな〜。」
子守唄が耳に入る。
ほわほわと耳を覆い、温かい。
「ねんねんころりよ おころりよ」
眠くもなかったのに、目が自然と落ちてくる。
眠い……。



「おやすみ、二人共。」

作者メッセージ

買い物回、家回でした!
なんとライダーはインペリアルと二人暮らし、
エンペラーは、修行のために二人の家に居候し始めるようです!
ライダーは絶対料理うまい。
エンペラーは絶対ジェッパを常備してるだろうな。

2024/07/22 20:34

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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