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「……なんで、こんなことをしたの。」
いいじゃないか。なんて、いたずらに笑って【ボク】が言う。
「何やってるんだよ。カタギに手を出すなんて!」
「お前が焦れったいから。
それに、【●●】は、ボクだろう。
お前に決定権はない。」
……そうだ。間違ってない。
みんなが知ってる【●●】は、こいつだ。
本当の私じゃない。
「……でも「でもなんて言うなよ。
負けたのはお前だ。アイツでさえ気づけてねぇしな。この勝負、ボクの勝ちだな。」
勝ち誇ったように、私をあざ笑うかのように。
あぁそうさ。
この姿は誰にも知られていない。
あぁそうさ。
誰一人とて、私を知らない。
私は裏の子、ボクは表の子。
「知ってるよ、私があなたに勝てないなんて。」
「知ってるんだったらなぜ阻む?勝てないってわかってるのにさ。」
ふふん、ってエラそうに鼻を鳴らす君に私は一生勝てないだろう。
最強まで上り詰めた。
大切な人もできた。
でもまた、こいつのせいで失う。
また。また。
「……大切な人ができたから。
また、一緒に楽しく学んでいいって思える人ができたから。
また、勉強を教えて面白がってくれる人ができたから。
また、愛してもいいって思える人ができたから。」
淡々と、でも強く、私は言う。
「だから私は、あなたが嫌いだ。
大切な人を吊し上げ、死に陥れるあなたが大嫌いだ。
私は。●●・ソール!
他の誰でもない、私は私。」
昔の私が見れば、ワガママにしか聞こえなかっただろう。
でも、今は違う。そうじゃない。
もう嫌だ。もう、こいつなんかに支配されたくない。
「お前は私がつくりだしたもう一つの人格。
あの日あの時、生み出された人格だろう。
……【[漢字][太字]神殺し[/太字][/漢字][ふりがな][太字]ドラゴンキラー[/太字][/ふりがな]】、またの名を【ライト】。
私の原罪。」
じっと彼の目を見つめながら、私は言う。
「あーあ。お前も昔のこと引っ張り出してくるねぇ。
そうだよ。ボクが、[漢字]神殺し[/漢字][ふりがな]ドラゴンキラー[/ふりがな]さ。」
そうだ。あれはちょうど私が十五の時。
出港から二年後のこと。
[水平線]
私は、みんなと大喧嘩して、たった一人でとある島に来ていた。
「あー。この島も意外と平和だな。」
そうだ。平和だった。
何もなくて、あったかい春島。
アレ以外は……。
ドドォン、どどぉん。
どこかで花火が鳴る。
祭りかな。それとも今日は何かの記念日なのかな。
楽観主義的な私は、タッタッタと花火の鳴る方へ走っていく。
忘れていた。今日は、アレがあることを。
『さて!!始まります、第二回先住民一掃大会!!
優勝者には豪華景品も用意してありますので、頑張ってください!!』
私の足が止まる。ガタガタと足が震える。
二回目の、先住民一掃大会。天竜人による、天竜人にしか益のないボロ大会。
側には泣く子供、呆然とする市民、困惑する王たち。
これはまずい。一瞬にして状況を飲み込んだ私は、ルナの能力を使い、巨大Roomを展開する。
「!?……なんだえ!?」
「シャンブルズ!!!!」
バッ!!
手近で安全な島に人々を移すと、私は見聞色でリゲルに連絡する。
〈リゲル、ソウルアイランドに先住民大会被害者全員。逃がせるか。〉
〈……了解、後でちゃんと謝ってくれよ。〉
今は無しにしてやるけどな。
そう言い終わると、リゲルは見聞色通信を切った。
「おばえ、何したんだえ!」
「悪いな、私、[漢字]天竜人[/漢字][ふりがな]お前ら[/ふりがな]が大嫌いなもんで。」
そういうわけで!と一気に踏み切ると、手前にいた十人ほどの天竜人を縛る。
残りは一人。
「さぁて、後はお前だけ。……フィガーランド、って言ったか?」
「……。」
ダンッ
彼は高く飛び上がると、覇王色を織り交ぜた攻撃を繰り出していく。
他とは比べ物にならない力。
「あの馬鹿どもとは違うらしいな。」
「……黙れ。ゴミどもが。」
「るっせー!楽しもうぜ!この試合!
こんな大会よりよっぽどワクワクするだろ!」
私の覇気の赤黒い剣と、彼の剣が合わさり、鈍い音を立てる。
空が、割れていた。
「あっちゃー。やっちゃったね。
君も強いんだな!」
「呑気なゴミだな。……それ以下かもしれぬが。」
笑う私、厳しい顔の彼。
楽しい、楽しすぎる。なんだこれ。
浮かれ浮かれた私は、いつの間にか、フィガーランドにとどめを刺そうとしていた。
やばい、そう思って私はみねうちに留める。
覇気も弱めたし、その実、彼は無事だった。
「どーだ。参ったか。」
「………お前はなぜ庇う。
弱きものをかばっても、自らに利などないぞ。」
静かな目で彼は私を見つめる。
「私は、それに理由なんて求めない。
逆に、なぜ理由を求める?お前は、家族を傷つけられたら有無を言わさず助けるだろう??」
「それが、従順なる者であったなら。」
その目は闇に覆われ、私の背筋はゾクリと震えた。
「……それより、後ろを見たらどうだ?」
ハッと気づいたときには遅い。
とある天竜人が私に斬り掛かってきていた。
「死ぬんだえ!!!」
「あ、まずった……っ!!!」
避けられない、受けられない。
後ろを向けば確実に殺られる。剣を離せばそれこそ確実に殺られる。
油断していたばかりに。
私はここで死ぬのか。最後にルナとヘリオスに会いたかったな。
なんて思っていたら、私でない声がそれを否定し始める。
いやいやいやいや、死んでたまるかこんなところで!!
まだ最果てにも行ってない!!
父様母様の真実も知れてないし!!
なによりニカ様に会ってないだろ!!!!
「七連、抜刀!!!」
すると、体の後ろから八つの覇気の刀が現れ、天竜人を、分子も残らせず粉々にしてしまう。
やっちまったな。
心のなかで、誰かがこう言う。
後のことはわからない。気がついたらスターヌウト号に乗っていた。
……みんな、いつものようだったのが救いだった。
それが、[漢字]神殺し[/漢字][ふりがな]ドラゴンキラー[/ふりがな]。
私の別人格であり、暗い思い出を彩ったやつ。
あの時、私の懸賞金は、史上最高、ロジャーでも超えられなかった100億ベリーとなっていた。
描かれた二つ名はもちろん、【神殺しの●●・ライト・ソール。】
ライト。なぜそんな名がつけられたのかは私でもわからない。
ただ、自らに残っていたのは、天竜人を斬ったときのあの感触だけ。
[打消し]曲がりなりにも[/打消し]人を斬ってしまったというのは、考えても吐き気がする。
そして、こいつらをこんな人殺しの[漢字]船員[/漢字][ふりがな]クルー[/ふりがな]にしてしまった自分が憎かった。
あの時からだ。[漢字]こいつ[/漢字][ふりがな]ライト[/ふりがな]が前に出てきたのは。
その変化はとても微細なものであったらしく、誰も気づかない。
それ幸いと私は殻に閉じこもる。
けれど、リゲルは何か、気づいていたらしかった。
「……●●。」
「何?リゲル。」
ボクが答える。
私はいつものように心の奥で縮こまる。
「お前本当に●●か?」
その言葉に、ボクの心臓が跳ね上がる。
「……まぁ、覇気は一緒だから身体はお前なんだろうけど、
精神はお前じゃねぇな?……別人格か?」
「な、何言ってんの。[小文字]ボ……[/小文字]私は私!
●●だよ!」
慌ててボクは、リゲルの肩を掴んで揺さぶる。
信じてよーっと言いながら。
「そら、そういうところ。
●●はそんな女々しくねぇんだよ。●●、早く出てこい。
今日の飯は海王類のソテーだぞ。」
【私】の肩をぽんっと叩くと、リゲルは向こうへ行こうとする。
「待って!」
いつの間にか私は、殻を破っていた。
「私の分まで食う気だろ!!!
やらねーぞ、ソテーは私のもんだ!!!」
「戻った戻った。あっはっは……。
ほら、食いに行くぞ。」
そしてリゲルは、私の手を掴んで、食堂へと歩いていった。
それから少しは、私は私のままでいられた。
コイツラがいなくなっても。
色々変わってきたのは、トットリュムトス ―トットムジカの仲間―が私の体の中に侵入してきたときからだ。
あの野郎、私の枷を外した挙げ句、ライトを封じていた鎖まで切っていきやがって。
アレからずっと、私の体はライトに乗っ取られている。
[水平線]
「……もう、十分楽しんだからなぁ。」
「だったら体返せ。」
「やだ。」
ペロッと舌を出すのが微妙にムカつく。
「だってボク、お前を外に出したくねぇんだよ。
出したら絶対お前、ボクから逃げてくじゃないか。」
嫌な予感。
お前はヤンデレか。と突っ込もうとした、その時。
「もう逃さないよ。
アイツラはみんな解放してやるからさ、一生ボクと一緒に踊ってようよ。
【●●】はボクがやるからさ、
お前は悲しみとも無縁でゆっくりしてればいいんだ。
最高だろ。」
その目は黒く、ライトとは程遠い色をしていた。
「体、返せ。」
「やだって言ってるだろ。」
「じゃあ、一瞬だけ返せ。
お前は信用ならない。みんなは私が解放する。」
有無を言わさせず、武装色と覇王色を纏わせた剣を、ライトの目の前に突きつける。
「……わかったよ。少しだけだ。」
すると視界が広がって、目の前には観客と麦わらの一味たち。
帰ってきたんだ、この世界。
有毒ワライダケを食べたときからほとんど戻れてなかったけど。
「みんな。今日はありがとう!!!」
いきなり大声を出して驚かせたのか、一味がこちらを向く。
「突然だが、今日で私は、配信をやめる!」
胸を張り、大声で言う。
短い髪が、風になびくのがわかる。
「これが、最後の曲になるぜ!ちゃんと聞いてくれよな!!」
シーン。会場は静かで、なんの音もしない。
その会場に、美しい音楽を響き渡らせる。
何がいいだろう。何が、私の最期にふさわしいだろう。
何なら、シャンクスとウタは、納得してくれるだろう。
そんな悩みさえも込めて歌い出す。
「[太字][斜体]そう簡単な祈りだった 端から
段々と消える感嘆
今から緞帳が上がるから
静かな会場を後にさよなら[/斜体][/太字]」
少し声が揺れる。視界が霞む。
泣いてなんかいない。
それをごまかすために、私の前に雨を降らす。
ザーザーと音楽に紛れて雨音が立つ。
「[太字][斜体]感じてたものが遠く放たれていた
同じ様で違うなんだか違う[/斜体][/太字]」
そのうち、その歌は私の思い出に彩られていく。
あの日あの時、ロブスターを取りに海に潜ったシャンクスに、リゲルを見出したこと。
「[太字][斜体]何時まで行こうか 何処まで行けるのか
定かじゃないなら何を想うの[/斜体][/太字]」
病に冒されたロジャーに、何もしてやれなかったこと。
ここで私は、音楽を止める。
観客は、何も言わない。一味もただ、硬直している。
雨音だけが、会場を包んでいる。
「[太字][斜体]僕らが離れるなら 僕らが迷うなら
その度に何回も繋がれる様に[/斜体][/太字]」
無意識に手を伸ばし、気づいて途中でひっこめる。
……私は、何を望んだんだろう。
「[太字][斜体]ここに居てくれるなら 離さずいられたら
まだ誰も知らない感覚で救われていく[/斜体][/太字]」
この歌は、誰のために、歌っているのだろう。
私にはわからない。
「[太字][斜体]享楽とは嘘で成る
『綻ぶ前にここを出ていこうか』と
都合の良い願いを同じ様に同じ様に呟く[/斜体][/太字]」
もし、もしシャンクスが、ウタが、あのときの願いを了承していたら。
私は喜んでいただろうか。
「[太字][斜体]僕らが疲れるなら これ以上無いなら
その度に何回も逃げ出せる様に[/斜体][/太字]」
また、無意識に手が前へ伸びる。
今回は、引っ込めなかった。
何を望んでいるのかわからないなら、わかるまでやってやればいいだろう。
「[太字][斜体]心が守れる様に 奪われない様に
互いに託して 身体を預けてよ[/斜体][/太字]」
もう、失いたくない。
奪われたくない。
私にすべてを預けてほしかった。
「[太字][斜体]何時まで続くだろうと同じ様に同じ様に呟く[/斜体][/太字]」
小さな声で、ささやくように歌ってやれば、皆の精神は現実世界へと戻っていく。
「[太字][斜体]いま忘れないよう刻まれた空気を
これから何度思い出すのだろう[/斜体][/太字]?」
この歌詞に、私は何を見た?
……言わずと知れた、ロジャーの処刑。
何度も思い出した、あの光景をのせて、唄う。
「[太字][斜体]僕らだけが[/斜体][/太字]」
言葉が詰まる。あの日、あのとき、私は師匠なのに、何もできなかった。
こんな私は、ここにいていいのか。
今更ながらにそう思う。
冷たい雨が、私の頬を濡らし、涙を隠す。
泣いていることは、誰にもわからない……と思う。
誰も気付くな。
シャンクスとウタには気づかれたくない。
「[太字][斜体]僕らが離れるなら 僕らが迷うなら
その度に何回も繋がれる様に[/斜体][/太字]」
喉から出る、甲高い声。
喉が締まっていい音が出ない。
目からはぼろぼろと涙がこぼれ落ちていく。
「[太字][斜体]ここに居てくれるなら 離さずいられたら[/斜体][/太字]」
雨の音で聞こえなくなるほど小さなかすれ声。
けれどその音がみんなの耳に轟くほど、会場は静かだった。
「[太字][斜体]まだ誰も知らない感覚で[/斜体][/太字]」
シャンクス。もし、もし、この歌が届くのであれば。
この歌は、お前に捧げよう。私が愛するお前に捧げよう。
私の最後の歌なんだから。
「[太字][斜体]僕の生きているすべてを確かめて[/斜体][/太字]」
私が生きている証拠は全てお前が持ってるだろう。
あとは任せた。
「[斜体][斜体][太字]正しくして[/太字][/斜体][/斜体]!!」
OK,ライト、もういいよ。
ありがとう。もう未練は無い……からね。
あとはお前の遊びに付きあってやるさ。
〈楽しかった?〉
ライトの声が聞こえる。
怒ってるような、安心してるような。
みんなはもう、気絶して、現実世界へ帰っている。
もう大丈夫だ。後はもう、遊びに付き合ってやればいい話。
なんて、思っていた自分が甘かった。
「……帰って、きた。」
現実世界の夜の闇。
星の光が、とても懐かしい。
みんな、わーわーと騒いでいる。
麦わらの一味も、ルフィくんも、トラファルガーくんも、観客に紛れているが、そこにいる。
赤髪海賊団は、ウタはどこへ?
そんな思いを胸に秘めたまま、ライトに変わろうとした、その時。
「アンコールっ!!」
ウタの声が聞こえた。
いいじゃないか。なんて、いたずらに笑って【ボク】が言う。
「何やってるんだよ。カタギに手を出すなんて!」
「お前が焦れったいから。
それに、【●●】は、ボクだろう。
お前に決定権はない。」
……そうだ。間違ってない。
みんなが知ってる【●●】は、こいつだ。
本当の私じゃない。
「……でも「でもなんて言うなよ。
負けたのはお前だ。アイツでさえ気づけてねぇしな。この勝負、ボクの勝ちだな。」
勝ち誇ったように、私をあざ笑うかのように。
あぁそうさ。
この姿は誰にも知られていない。
あぁそうさ。
誰一人とて、私を知らない。
私は裏の子、ボクは表の子。
「知ってるよ、私があなたに勝てないなんて。」
「知ってるんだったらなぜ阻む?勝てないってわかってるのにさ。」
ふふん、ってエラそうに鼻を鳴らす君に私は一生勝てないだろう。
最強まで上り詰めた。
大切な人もできた。
でもまた、こいつのせいで失う。
また。また。
「……大切な人ができたから。
また、一緒に楽しく学んでいいって思える人ができたから。
また、勉強を教えて面白がってくれる人ができたから。
また、愛してもいいって思える人ができたから。」
淡々と、でも強く、私は言う。
「だから私は、あなたが嫌いだ。
大切な人を吊し上げ、死に陥れるあなたが大嫌いだ。
私は。●●・ソール!
他の誰でもない、私は私。」
昔の私が見れば、ワガママにしか聞こえなかっただろう。
でも、今は違う。そうじゃない。
もう嫌だ。もう、こいつなんかに支配されたくない。
「お前は私がつくりだしたもう一つの人格。
あの日あの時、生み出された人格だろう。
……【[漢字][太字]神殺し[/太字][/漢字][ふりがな][太字]ドラゴンキラー[/太字][/ふりがな]】、またの名を【ライト】。
私の原罪。」
じっと彼の目を見つめながら、私は言う。
「あーあ。お前も昔のこと引っ張り出してくるねぇ。
そうだよ。ボクが、[漢字]神殺し[/漢字][ふりがな]ドラゴンキラー[/ふりがな]さ。」
そうだ。あれはちょうど私が十五の時。
出港から二年後のこと。
[水平線]
私は、みんなと大喧嘩して、たった一人でとある島に来ていた。
「あー。この島も意外と平和だな。」
そうだ。平和だった。
何もなくて、あったかい春島。
アレ以外は……。
ドドォン、どどぉん。
どこかで花火が鳴る。
祭りかな。それとも今日は何かの記念日なのかな。
楽観主義的な私は、タッタッタと花火の鳴る方へ走っていく。
忘れていた。今日は、アレがあることを。
『さて!!始まります、第二回先住民一掃大会!!
優勝者には豪華景品も用意してありますので、頑張ってください!!』
私の足が止まる。ガタガタと足が震える。
二回目の、先住民一掃大会。天竜人による、天竜人にしか益のないボロ大会。
側には泣く子供、呆然とする市民、困惑する王たち。
これはまずい。一瞬にして状況を飲み込んだ私は、ルナの能力を使い、巨大Roomを展開する。
「!?……なんだえ!?」
「シャンブルズ!!!!」
バッ!!
手近で安全な島に人々を移すと、私は見聞色でリゲルに連絡する。
〈リゲル、ソウルアイランドに先住民大会被害者全員。逃がせるか。〉
〈……了解、後でちゃんと謝ってくれよ。〉
今は無しにしてやるけどな。
そう言い終わると、リゲルは見聞色通信を切った。
「おばえ、何したんだえ!」
「悪いな、私、[漢字]天竜人[/漢字][ふりがな]お前ら[/ふりがな]が大嫌いなもんで。」
そういうわけで!と一気に踏み切ると、手前にいた十人ほどの天竜人を縛る。
残りは一人。
「さぁて、後はお前だけ。……フィガーランド、って言ったか?」
「……。」
ダンッ
彼は高く飛び上がると、覇王色を織り交ぜた攻撃を繰り出していく。
他とは比べ物にならない力。
「あの馬鹿どもとは違うらしいな。」
「……黙れ。ゴミどもが。」
「るっせー!楽しもうぜ!この試合!
こんな大会よりよっぽどワクワクするだろ!」
私の覇気の赤黒い剣と、彼の剣が合わさり、鈍い音を立てる。
空が、割れていた。
「あっちゃー。やっちゃったね。
君も強いんだな!」
「呑気なゴミだな。……それ以下かもしれぬが。」
笑う私、厳しい顔の彼。
楽しい、楽しすぎる。なんだこれ。
浮かれ浮かれた私は、いつの間にか、フィガーランドにとどめを刺そうとしていた。
やばい、そう思って私はみねうちに留める。
覇気も弱めたし、その実、彼は無事だった。
「どーだ。参ったか。」
「………お前はなぜ庇う。
弱きものをかばっても、自らに利などないぞ。」
静かな目で彼は私を見つめる。
「私は、それに理由なんて求めない。
逆に、なぜ理由を求める?お前は、家族を傷つけられたら有無を言わさず助けるだろう??」
「それが、従順なる者であったなら。」
その目は闇に覆われ、私の背筋はゾクリと震えた。
「……それより、後ろを見たらどうだ?」
ハッと気づいたときには遅い。
とある天竜人が私に斬り掛かってきていた。
「死ぬんだえ!!!」
「あ、まずった……っ!!!」
避けられない、受けられない。
後ろを向けば確実に殺られる。剣を離せばそれこそ確実に殺られる。
油断していたばかりに。
私はここで死ぬのか。最後にルナとヘリオスに会いたかったな。
なんて思っていたら、私でない声がそれを否定し始める。
いやいやいやいや、死んでたまるかこんなところで!!
まだ最果てにも行ってない!!
父様母様の真実も知れてないし!!
なによりニカ様に会ってないだろ!!!!
「七連、抜刀!!!」
すると、体の後ろから八つの覇気の刀が現れ、天竜人を、分子も残らせず粉々にしてしまう。
やっちまったな。
心のなかで、誰かがこう言う。
後のことはわからない。気がついたらスターヌウト号に乗っていた。
……みんな、いつものようだったのが救いだった。
それが、[漢字]神殺し[/漢字][ふりがな]ドラゴンキラー[/ふりがな]。
私の別人格であり、暗い思い出を彩ったやつ。
あの時、私の懸賞金は、史上最高、ロジャーでも超えられなかった100億ベリーとなっていた。
描かれた二つ名はもちろん、【神殺しの●●・ライト・ソール。】
ライト。なぜそんな名がつけられたのかは私でもわからない。
ただ、自らに残っていたのは、天竜人を斬ったときのあの感触だけ。
[打消し]曲がりなりにも[/打消し]人を斬ってしまったというのは、考えても吐き気がする。
そして、こいつらをこんな人殺しの[漢字]船員[/漢字][ふりがな]クルー[/ふりがな]にしてしまった自分が憎かった。
あの時からだ。[漢字]こいつ[/漢字][ふりがな]ライト[/ふりがな]が前に出てきたのは。
その変化はとても微細なものであったらしく、誰も気づかない。
それ幸いと私は殻に閉じこもる。
けれど、リゲルは何か、気づいていたらしかった。
「……●●。」
「何?リゲル。」
ボクが答える。
私はいつものように心の奥で縮こまる。
「お前本当に●●か?」
その言葉に、ボクの心臓が跳ね上がる。
「……まぁ、覇気は一緒だから身体はお前なんだろうけど、
精神はお前じゃねぇな?……別人格か?」
「な、何言ってんの。[小文字]ボ……[/小文字]私は私!
●●だよ!」
慌ててボクは、リゲルの肩を掴んで揺さぶる。
信じてよーっと言いながら。
「そら、そういうところ。
●●はそんな女々しくねぇんだよ。●●、早く出てこい。
今日の飯は海王類のソテーだぞ。」
【私】の肩をぽんっと叩くと、リゲルは向こうへ行こうとする。
「待って!」
いつの間にか私は、殻を破っていた。
「私の分まで食う気だろ!!!
やらねーぞ、ソテーは私のもんだ!!!」
「戻った戻った。あっはっは……。
ほら、食いに行くぞ。」
そしてリゲルは、私の手を掴んで、食堂へと歩いていった。
それから少しは、私は私のままでいられた。
コイツラがいなくなっても。
色々変わってきたのは、トットリュムトス ―トットムジカの仲間―が私の体の中に侵入してきたときからだ。
あの野郎、私の枷を外した挙げ句、ライトを封じていた鎖まで切っていきやがって。
アレからずっと、私の体はライトに乗っ取られている。
[水平線]
「……もう、十分楽しんだからなぁ。」
「だったら体返せ。」
「やだ。」
ペロッと舌を出すのが微妙にムカつく。
「だってボク、お前を外に出したくねぇんだよ。
出したら絶対お前、ボクから逃げてくじゃないか。」
嫌な予感。
お前はヤンデレか。と突っ込もうとした、その時。
「もう逃さないよ。
アイツラはみんな解放してやるからさ、一生ボクと一緒に踊ってようよ。
【●●】はボクがやるからさ、
お前は悲しみとも無縁でゆっくりしてればいいんだ。
最高だろ。」
その目は黒く、ライトとは程遠い色をしていた。
「体、返せ。」
「やだって言ってるだろ。」
「じゃあ、一瞬だけ返せ。
お前は信用ならない。みんなは私が解放する。」
有無を言わさせず、武装色と覇王色を纏わせた剣を、ライトの目の前に突きつける。
「……わかったよ。少しだけだ。」
すると視界が広がって、目の前には観客と麦わらの一味たち。
帰ってきたんだ、この世界。
有毒ワライダケを食べたときからほとんど戻れてなかったけど。
「みんな。今日はありがとう!!!」
いきなり大声を出して驚かせたのか、一味がこちらを向く。
「突然だが、今日で私は、配信をやめる!」
胸を張り、大声で言う。
短い髪が、風になびくのがわかる。
「これが、最後の曲になるぜ!ちゃんと聞いてくれよな!!」
シーン。会場は静かで、なんの音もしない。
その会場に、美しい音楽を響き渡らせる。
何がいいだろう。何が、私の最期にふさわしいだろう。
何なら、シャンクスとウタは、納得してくれるだろう。
そんな悩みさえも込めて歌い出す。
「[太字][斜体]そう簡単な祈りだった 端から
段々と消える感嘆
今から緞帳が上がるから
静かな会場を後にさよなら[/斜体][/太字]」
少し声が揺れる。視界が霞む。
泣いてなんかいない。
それをごまかすために、私の前に雨を降らす。
ザーザーと音楽に紛れて雨音が立つ。
「[太字][斜体]感じてたものが遠く放たれていた
同じ様で違うなんだか違う[/斜体][/太字]」
そのうち、その歌は私の思い出に彩られていく。
あの日あの時、ロブスターを取りに海に潜ったシャンクスに、リゲルを見出したこと。
「[太字][斜体]何時まで行こうか 何処まで行けるのか
定かじゃないなら何を想うの[/斜体][/太字]」
病に冒されたロジャーに、何もしてやれなかったこと。
ここで私は、音楽を止める。
観客は、何も言わない。一味もただ、硬直している。
雨音だけが、会場を包んでいる。
「[太字][斜体]僕らが離れるなら 僕らが迷うなら
その度に何回も繋がれる様に[/斜体][/太字]」
無意識に手を伸ばし、気づいて途中でひっこめる。
……私は、何を望んだんだろう。
「[太字][斜体]ここに居てくれるなら 離さずいられたら
まだ誰も知らない感覚で救われていく[/斜体][/太字]」
この歌は、誰のために、歌っているのだろう。
私にはわからない。
「[太字][斜体]享楽とは嘘で成る
『綻ぶ前にここを出ていこうか』と
都合の良い願いを同じ様に同じ様に呟く[/斜体][/太字]」
もし、もしシャンクスが、ウタが、あのときの願いを了承していたら。
私は喜んでいただろうか。
「[太字][斜体]僕らが疲れるなら これ以上無いなら
その度に何回も逃げ出せる様に[/斜体][/太字]」
また、無意識に手が前へ伸びる。
今回は、引っ込めなかった。
何を望んでいるのかわからないなら、わかるまでやってやればいいだろう。
「[太字][斜体]心が守れる様に 奪われない様に
互いに託して 身体を預けてよ[/斜体][/太字]」
もう、失いたくない。
奪われたくない。
私にすべてを預けてほしかった。
「[太字][斜体]何時まで続くだろうと同じ様に同じ様に呟く[/斜体][/太字]」
小さな声で、ささやくように歌ってやれば、皆の精神は現実世界へと戻っていく。
「[太字][斜体]いま忘れないよう刻まれた空気を
これから何度思い出すのだろう[/斜体][/太字]?」
この歌詞に、私は何を見た?
……言わずと知れた、ロジャーの処刑。
何度も思い出した、あの光景をのせて、唄う。
「[太字][斜体]僕らだけが[/斜体][/太字]」
言葉が詰まる。あの日、あのとき、私は師匠なのに、何もできなかった。
こんな私は、ここにいていいのか。
今更ながらにそう思う。
冷たい雨が、私の頬を濡らし、涙を隠す。
泣いていることは、誰にもわからない……と思う。
誰も気付くな。
シャンクスとウタには気づかれたくない。
「[太字][斜体]僕らが離れるなら 僕らが迷うなら
その度に何回も繋がれる様に[/斜体][/太字]」
喉から出る、甲高い声。
喉が締まっていい音が出ない。
目からはぼろぼろと涙がこぼれ落ちていく。
「[太字][斜体]ここに居てくれるなら 離さずいられたら[/斜体][/太字]」
雨の音で聞こえなくなるほど小さなかすれ声。
けれどその音がみんなの耳に轟くほど、会場は静かだった。
「[太字][斜体]まだ誰も知らない感覚で[/斜体][/太字]」
シャンクス。もし、もし、この歌が届くのであれば。
この歌は、お前に捧げよう。私が愛するお前に捧げよう。
私の最後の歌なんだから。
「[太字][斜体]僕の生きているすべてを確かめて[/斜体][/太字]」
私が生きている証拠は全てお前が持ってるだろう。
あとは任せた。
「[斜体][斜体][太字]正しくして[/太字][/斜体][/斜体]!!」
OK,ライト、もういいよ。
ありがとう。もう未練は無い……からね。
あとはお前の遊びに付きあってやるさ。
〈楽しかった?〉
ライトの声が聞こえる。
怒ってるような、安心してるような。
みんなはもう、気絶して、現実世界へ帰っている。
もう大丈夫だ。後はもう、遊びに付き合ってやればいい話。
なんて、思っていた自分が甘かった。
「……帰って、きた。」
現実世界の夜の闇。
星の光が、とても懐かしい。
みんな、わーわーと騒いでいる。
麦わらの一味も、ルフィくんも、トラファルガーくんも、観客に紛れているが、そこにいる。
赤髪海賊団は、ウタはどこへ?
そんな思いを胸に秘めたまま、ライトに変わろうとした、その時。
「アンコールっ!!」
ウタの声が聞こえた。
- 1.始まりの時【前編】
- 2.始まりの時【後編】
- 3.11年後
- 4.私の記憶(メモリー)、お前らの記録(ログ)
- 5.オーロジャクソンの日常より
- 6.思い出そして、現在の姿
- 7.破壊の王の世界へ 堕ちる
- 8.ユートピア 私が望むもの
- 9.Rigel / nautical chart!!
- 10.うたの始まり
- 11.ウタ&リズム 〜歌の女王と踊りの皇帝〜
- 12.キミへ伝えるメッセージ
- 13.弟たち
- 14.ライブ開始! 行動開始!
- 15.負け惜しみ?
- 16.最高地点、最高のライブ
- 17.永久愛歌
- 18.リゲルの記憶 そして真実
- 19.not本編 遅めの夢主紹介!!
- 20.笑いの地獄へようこそ
- 21.だから私達は最強
- 22.継がれる記憶
- 23.解放の戦士、破壊の皇帝
- 24.伝えたい言葉
- 25.not本編 ルナとヘリオス、太陽と月
- 26.凍れ、わが仇よ
- 27.邪神の子ども、歌の魔王宿す破壊の女神
- 28.ドラゴンキラー、ライト
- 29.最高のアンコールを
- 30.最終話 不死鳥の語る、消失の帝王