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消失の帝王  〜とある女海賊の記録(ログ)〜

#27

邪神の子ども、歌の魔王宿す破壊の女神



「お母さんっ!!」
「ら〜らら〜ららぁ……。」
美しく、優しい歌声で紡ぎ出される歌。
その歌には、●●の深い覚悟がにじみ出ていた。
「ごめんね なんて
ため息交じりに そう言った ボク
キミの目揺らぐ 世界も揺らぐ
ボクに 背を向ける
キミはどこへと 向かうのだろう」
暗く静かで、沈んだ音。
その音には、さすがのウタもたじろぐ。
「だって 見てよ
こんな 美しい 青空に
墨を落とす雲一つだけ
あるだけなのにさ
光は消え 世界は闇に包まれる」
静かで、切ない音。いつものリズムではありえないような静かな音を●●は歌い紡ぐ。
「……違うよ!!!」
大きな声で、ウタは、その歌を止める。
そして、音も、光もなにもない、完璧なアカペラで歌い出す。
「雨雲だって なければ[漢字]灼熱地獄[/漢字][ふりがな]インフェルノ[/ふりがな]
夜だって なければ世界は 消えてしまうさ」
その歌とともに、●●の脳内に、ダイレクトでウタの思い出がぶつけられる。
シャンクスとの航海、フーシャ村での出来事、トットムジカ。
ナイトランドでの生活。●●とのライブ。
そして、その中にはロジャー海賊団での思い出や、白ひげ海賊団の皆との思い出、
[漢字]マルコ[/漢字][ふりがな]医者仲間[/ふりがな]や、[漢字]バギー、シャンクス[/漢字][ふりがな]弟子たち[/ふりがな]など、特に大切にしていた人々との[漢字]記憶[/漢字][ふりがな]ログ[/ふりがな]もあった。
「なんで、お前がそれを……?」
驚きのあまり歌を止めてまで●●が言う。
「私が何も知らないとでも思ったの?お母さん!」
ニィっと笑ったウタからは、シャンクスやマルコとの思い出が送られてきた。
《赤髪、●●は?》
《師匠か……?さて、どこにいるのやら。》
《……まさか、居場所知らねぇのかよい?》
《知らねぇけど、なんで?
まさか、マルコ、知ってんのか?!》
《……知ってるわけねぇだろうよい。
お前なら知ってるかもって思ったんだが。》
師匠って誰?
目線の子の声がする。きっとそれは、ウタの声。
《師匠はな、おれの大切な人で、
母で、姉で、妹で……?みたいな人だ。
すごく強いんだぞ?おれの憧れの人だ。》
シャンクスのやわらかい声がそう告げる。
《……おれの医者仲間でもあるよい。
毒草とか、薬の成分とか、●●のそこら辺の知識はすごく役に立ってるよい。》
マルコの言葉に、シャンクスは頷く。
《師匠は最強で、最高なんだ!
……再会したら、ウタにも会わせてやる!
きっと大好きになると思うぞ!!》
シャンクスの手が、目線の子、ウタの頭に触れる。
……まるで、●●の頭をなでているように。
「……しゃん、くす。」
「シャンクスは、いつまでも、いつでも、お母さんを信じてる!!
お母さんは、シャンクスの大切な人だから!!
失いたくないって思いは、シャンクスも同じ!!」
信じられないという目で虚空を見つめる●●に、ウタは言う。
「戻ってきてあげてよ!
もう、こんなところに閉じこもらないでよ!
シャンクスはずっと待ってた!あなたのことを!
ずっと慕っていたあなたのことを!!!」
お母さん、という呼び名がいつの間にか、 あなた に変わる。
「……戻ってきてよ。
また笑ってよ。美味しいご飯作ってよ。
一緒に遊ぼうよ。歌おうよ。もっともっと、冒険しようよ!!」
「……私は。あなた達と一緒の世界にはいれない。
だって私は、邪神の子。最悪の神の子。闇の世界の住人。
あの子達は海賊であれど光の子。
私と合わさって、いいことはないだろう?」
ウタの叫びを、●●は一蹴する。
しかし、ウタは簡単に諦めない。
「そうじゃない!!
そんなの関係ない!!!だったら私だって、私だって!!
歌の魔王を宿す、破壊神だよ!!
それでも私を娘にしてくれたのは!愛してくれたのは!
他ならないあなた自身でしょ……。」
ウタはツカツカと●●に歩み寄ると、●●の左手を掴んで言った。
……●●の利き手は右手。そして、●●の腰には剣。
死んでもいい、殺してもらったっていい。
ウタの、覚悟の現れだった。
「私は、あなたが邪神の子どもだろうと、化け物だろうとあなたの娘!!
あなたは私のお母さん!!私はその娘、ウタだよ!!!」
ウタは、そっと●●を抱きしめる。
●●の服に、ウタの涙がこぼれ落ちる。
漆黒の闇の中、ウタの嗚咽だけが、●●の耳に入っていた。
「ウタ。


みんな。







……私は、馬鹿だなぁ。」
「お、母さん?」
ウタの頭をぽんぽんとたたきながら、●●はウタを抱きしめ返す。
「いつまでも過去に縛られて、
自分が何が幸せなんて考えなくて。
……私に、あいつらしかいないわけじゃないのに。
こんなにたくさんの、味方がいるのに。
気付けなかった。」
ぎゅぎゅうと、ウタを抱きしめる力が強くなっていく。
「……ごめんな。ごめんな。
寂しかったろ。こんな母さんで、ごめんな。
苦しかったろ。こんな師匠でごめんな。」
まるで子どものように。
今までの感情を全て集めたように。
「……お母さん。もういいよ。
みんなと帰ろ。レッドフォース号に行こう。
シャンクスのところに帰ろ。」
小さい子をあやすような声。
その声に、●●も頷く。
「わかった。




あー……ああっ!行くよ、ウタ。」
澄んだ、美しい高音が、ウタと●●の周りの暗闇をはじき飛ばす。
……そこは、純真無垢な、青空の上だった。
「[太字][斜体][大文字]待って わかってよ 何でもないから
僕の夢を笑わないで
海中列車に遠のいた 涙なんて なんて
消え去ってしまってよ 行ってしまうなら
僕はここで止まらないで
泣いて笑ってよSOS
僕は 君は 僕は[/大文字][/斜体][/太字]」
切ないような、温かいような、そんな声。
みるみるうちに世界が崩れていく。
「……帰ろうか。一緒に、戻ろうか。
ウタ。」
そんな、声といっしょに。ウタの意識は落ちていく。



[水平線]


「ウタ……ウタ。」
「しゃ、シャンクス?」
「よーやく起きたか。」
シャンクスの声で、ウタは目を覚ます。
隣を見ると、滾々と眠り続ける●●の姿があった。
「シャンクス、お母さんは?」
「今、毒と戦ってる。
……ある人物から解毒剤をもらってな。それを飲ませたところだ。」
そっと、あのときのように、シャンクスはウタの頭を撫でる。
大丈夫だと言うかのように。
まだ生きてると、伝えるかのように。
「…‥そっか。」
周りを見れば、まだ観客とルフィたちは眠っている。
まだ、解放しきれていなかったの?
信じられないという目で、ウタはその光景を見つめる。
「あんなに、きれいな歌だったのに。
どうして?」
「大丈夫。」
シャンクスが、温かい声を、ウタにかける。
「●●は、あいつらのことを解放してる。
大丈夫、きっと大丈夫。信じろ、おれを信じて、あの人を信じて、くれないか。」
「言われなくても……!信じてる!」
「あぁ、きっと、きっと。」
その声は、シャンクス自らに言い聞かせるようで。
少し悲しそうな声だった。
「シャンクス?」
「大丈夫、大丈夫なはず、大丈夫。
大丈夫だから。だから、泣くな……って。」
シャンクスの目から涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
何を無理しているんだか。
「泣いてるのはそっち。泣きすぎ、四皇なんでしょ??
威厳ゼロだよ。」
「そうだよなぁ……。ごめん、な。」
「ほらほら、泣かないの。
どっちが親なの。あなたでしょ。」
「……みっともねー親で、ごめ、「もうっ!!何回謝んの。いいよ。お母さんが戻ってくることだけ考えよ。」
しおしおとしているシャンクスの背を、ウタはひっぱたく。
「そんなシャンクスじゃぁ、お母さん、呆れちゃうよ。」
ピッとして。
すぱぁんっと良い音が聞こえる。
覇気を纏っているわけではないのに、シャンクスは飛ばされ、いてててと背中をさする。
「愛ある拳は防ぐ術なし!!」
「だとしても痛ぇって。」
ムッと腕を組むウタに、シャンクスが怒る。
それにしても。二人は周りを見渡す。
「なんで海軍共は凍ってんだ?」
「……もしかしたら、お母さんが。」
「あり得るな。
いや、むしろそれ以外ないな。」
全くこの人は、と●●の額に触れるシャンクスを見て、ウタは思いついたように言う。
「そう言えば、シャンクス、いつの間にお母さんのこと名前で呼ぶようになったの?」
ギクリ、とシャンクスの肩が跳ね上がる。
「んなっ……呼んじゃ悪いかよ。」
「ううん。私はいいと思うよ!賛成っ!」
ニコニコと笑っているウタだが、その目は全く笑っていない。
「お、お?ウタ?」
「話は聞かせてもらうからね?」
早く起きろ●●、とシャンクスは本気で思ったのだった。










……束の間の平和を、楽しむといい。
赤髪親子よ。

作者メッセージ

「」囲い、太字斜線部分が歌詞です。
ウミユリ海底譚
作詞:ナブナ
作曲:ナブナ
編曲:ナブナ

2024/06/28 21:06

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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