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「お母さん!!」
ウタが叫ぶ。
ルフィは、飛びながらリズムを狙ってパンチを出す。
全てに影響するゴムの力さえも跳ね返す彼女の体からは、黒い羽が見えていた。
切なく、切れそうに細い歌声。
しかし、その小さな声に皆飲まれ、力が出し切れない。
……ルフィもウタも、例外なく。
●●の声に合わせ、龍が飛び出す。
地面が揺らぐ。
現実世界でないとは言えど、それに死の恐怖を感じてしまう。
「ウタ!!」
ルフィが龍を避けさせようと、ウタに手を伸ばす。
しかし、ウタはそれを払い除け、息を大きく吸った。
「お母さん!!もとに戻ってよ!!」
その声が、トットムジカを引き寄せる。
もともとトットムジカは、ウタの心のなかに宿った魔王。
……リズムはそれを、引き取っただけである。
【あの時】のウタは精神と肉体が能力に追いついていなかった。
では今、●●に鍛えられ、
精神と肉体が能力に追いついたウタの心に魔王が戻れば。
「これでもう、トットムジカは使えないよ!お母さん!」
ニッといたずらっ子のように笑って、ウタは言う。
しかし、その顔には、汗が浮かんでいた。
……そう。ウタにとってトットムジカはウタの恐怖と不安を濃縮したような代物。
それをコントロールするには、とてつもない精神力と体力を必要とする。
「……う、た。」
「お母さん!!!」
「あ、あ゙……。」
しかし、完全にトットムジカが抜けきっていないのか、
それとも有毒ワライダケの仕業か、●●は苦しそうに頭を抱える。
そして、また、●●は歌い出す。
「[太字][斜体]ひとりぼっちには飽き飽きなの
繋がっていたいの
純真無垢な想いのまま Loud out[/斜体][/太字]」
それによって、大小さまざまな紙人形が作り出され、皆に襲いかかる。
(まずいっ!!)
ウタが、そう思った、その時。
ガキン、ガキン。
二人が、ウタとルフィへの道を阻む。
「……!!ゾロ!!サンジ!!」
「ここは任せて、さっさと行け。」
「ウタちゅわ〜ん!!
ここはおれとマリモに任せてお母さん助けておいで〜!!
おい、ルフィ!!ウタちゃんをしっかり守れよ!!
守れなかったら三枚に下ろす!!」
そんな事を言っている暇にも、紙人形は彼らを襲う。
●●の武装色が纏われているからか、二人でもなかなか止められない。
しかし、少しづつ、しっかりと紙人形は減っている。
「火炎星!!」
ウソップも紙人形を燃やし、
「雷光槍(サンダーランス)=テンポ!!」
ナミも雷で炎をあげる。
「八十輪咲き、四本樹『ホールド』」
ロビンは紙人形を一気に押さえつけ、
「ストロングハンマー!!」
「重量強化(ヘビーポイント)、腕力強化(アームポイント)!!」
フランキーとチョッパーは紙人形を殴り飛ばす。
「鼻唄三丁矢筈斬り!!」
ブルックは紙人形を切り刻み、
「それぃ!!」
覇気を纏えると言えど、所詮は紙。
と言わんばかりにジンベエは魚人空手を叩き込む。
「お、お前ら……!」
「よし、ルフィ、行こう。前は任せたよ!!」
「あぁっ!!」
ルフィは●●に飛びかかり、ウタは●●の歌に乗る。
「[太字][斜体]Listen up baby 消えない染みのようなハピネス
君の耳の奥へホーミング 逃げちゃダメよ浴びて
他の追随許さないウタの綴るサプライズ[/斜体][/太字]」
この歌の名をなんとつけようか。
お母さんへ捧げる子守唄。そうだ、【ウタカタララバイ】。
これがいい。
「[太字][斜体]後で気付いたってもう遅い
入れてあげないんだから
手間取らせないで Be my good boys & girls[/斜体][/太字]」
●●もウタに音楽で対抗する。
二人で作られる即興の音楽。
二人の間には音楽の亀裂が走り、曲調が代わっていく。
「[太字][斜体]ねえ教えて何がいけないの?
この場はユートピア だって望み通りでしょ?[/斜体][/太字]」
●●の目を覗けば、本当にそう思っている、と言わんばかりの必死な目。
けれどそれは、偽りの目。
「[太字][斜体]I wanna know 君が欲しいもの
本心も気付かせてあげるよ
見返りなんて要らない あり得ない
ただ一緒にいて? True heart
Oh my “F” word[/斜体][/太字]」
ウタの、●●の、必死な声が会場中を包み込む。
渡さない、もう、行かせない。
いつの間にかトットムジカもウタの心のなかから飛び出す。
「[漢字]猿神銃[/漢字][ふりがな]バジュラングガン[/ふりがな]!!」
白い神、歌の魔王、破壊の皇帝。
三柱の技が一気に炸裂する。
しかし、その技は相殺。勝利の女神は誰にも微笑んではくれない。
「[太字][斜体]わたしがやらなきゃ だから邪魔しないで お願い…
もう戻れないの だから永遠に一緒に歌おうよ[/斜体][/太字]」
●●の声に、ウタは首をふる。
それは、嫌だの意思。
ウタが初めて行った、●●の反抗。
そしてそれは、ウタの全力の。
「[太字][斜体]直に脳を揺らすベース 鼓膜ぶち破るドラム
心の臓撫でるブラス ピアノ マカフェリ
五月雨な譜割りで Shout out! Doo wop wop waaah![/斜体][/太字]」
怒り。悲しみ。苦しみ。寂しさ。恐怖。孤独。
全てを包み込んでくれた母を攻撃することへの痛み。
それらを、全てぶつけたものだった。
喉が枯れるまで、世界が震えるほどに、
涙がこぼれ落ちるほどに、恐怖で震えるほどに。
ウタは、歌う、歌う。
「[太字][斜体]欺きや洗脳 お呼びじゃない
ただ信じて願い歌うわたしから耳を離さないで
それだけでいい Hear my true voice[/斜体][/太字]」
信じて、私の方へ戻ってきて。
そんな願いを、願望を。わがままを。
受け止めてほしい。それだけがウタの願いだった。
「う、た……?うた。」
ウタの名を、呼び始める●●。
いつの間にかウタの心のなかから、トットムジカが消えていた。
―ありがとう―
「……[小文字]なぁんだ、きみは寂しかったんだね。[/小文字]」
小さな声で、そう言うと、ウタは●●の方へ駆け寄る。
しかし、●●はウタの進む道をバリアで遮る。
「おかぁっ……!?」
「……ごめん、ウタ。」
その目は、リズムの目ではない。●●の目でもない。
ウタを見つめる母の目であった。
「ウタ、ごめんな。」
●●がそう言うと、会場が崩れだす。
「……!?!?何をする気なの、おか……」
「もう、いいんだ。」
そう言ったときには、リズムはウタワールドの能力を解いていた。
……ウタワールドの能力だけは。
「……ここって!?」
いつの間にかウタは、どこともしれない真っ暗な世界に閉じ込められていた。
誰もいない、孤独な世界に。
「ようこそ、死の国、ムーンレイドへ。
ここで決着をつけようか。ウタ。」
その声は、どこか悲しげで、いつもよりずっと、澄んだ声だった。
[水平線]
「おいおい、何だここ。」
シャンクスがそうこぼす。
当たり前だ。
トットムジカに斬りかかったと思ったら、
いきなりこの世界に引きずり込まれたのだから。
しょうがないとそっと座り込むと、
「……やっほ。シャンクス。」
●●の声がした。
シャンクスは振り向こうとするが、それを●●は静止する。
「前向いたままで。」
「……なにする気、だ。」
「ちょっと見てもらいたいものがあるんだ。」
だから、前向いたままでお願い。
そう、●●は言う。
その後、小さな背中が、自らの背に預けられるのがわかる。
それから一分も経っていないだろう。
暗闇の中に、映像が映し出された。
―あ、ほらほら!ついたついた!!
姉さま〜!リゲル〜!見えてるか〜!ほら、ヘリオスも!―
―姉ちゃーん!!リゲル〜!―
―●●!リゲル!―
―おい、見えねぇぞ!―
―映ってるから大丈夫だぞ、アステル。―
―わ〜!ちょっと、痛い痛い、ベテル!―
―デネブ!ちょっとどいてよ!―
そこには、あの日、あの時、海の底に消えたはずの、スター海賊団クルーがいた。
「これ、って。」
「……800年前。ある海賊団が壊滅した。
その海賊団のクルーが、船長と副船長に残した、最後の言葉だ。」
●●の一言一言が、シャンクスの心に重くのしかかる。
今、●●は自分をリゲルとしてみている。
それがわかった。
―時間ないから、簡潔に説明する!
姉さま、リゲル、愛してるぜ!―
―愛してる!―
―死んでもずっと見守ってるな!―
―そして、リゲル!あの馬鹿を支えてやってくれ!―
―頼むぜ!●●はすぐ一人で抱え込むからな〜。―
―おれたちはいつまでも二人のクルーだ!―
―おれたちからのメッセージ!!は以上!
いつか何処かで、また会おう、姉さま!―
―姉ちゃん!!―
プツリ。
そこで、動画は終わっている。
この後何があったのか、シャンクスには想像がつかない。
「師匠。」
後ろを見なくても、わかってしまう自分が憎たらしい。
「泣くなよ。」
「泣いてなんて、ねぇわ。」
聞こえるしゃくり声。
泣いてないなんて、嘘八百だ。嘘が下手すぎる。
「……なぁ、シャンクス。」
「どうしたんだ、師匠。」
師匠はそっと、背中にかける体重を増やす。
「怖いんだ。」
「何が。」
「大切な人を失うのが。失わせるのが。
大切なものを、見失ってしまうのが。」
振り向けないからわからない。
けれど、シャンクスには、やはりわかってしまう。
●●の目はきっと、潤んでいるんだろう。
「……おれにも、わからない。」
「……そう、だよな。」
自虐的な笑い声が、背中越しに聞こえる。
「でも、おれは怖い。」
「……何が?」
お前は何が怖いんだ?
なんて、乾いた笑いを交えながら●●は言う。
「師匠が、このまま遠くに行ってしまうこと。」
「……?!え。」
予想外、とでも言うかのような声が、●●の口をついて出る。
「どこかに行ってしまうこと。それが、おれが今、一番怖いこと。」
本音。本当の言葉。
シャンクスの、一番言いたかった言葉。
「お前、らしくないな。」
「…だろ。」
自分でも、そう思っていた。
怖いなんて、自分らしくないと。
だから今、伝えた。誰も聞いていない、今だからこそ。
「[小文字]愛してる。[/小文字]」
「……。。。師匠!?」
●●が、小さな声で言ったその言葉。
しかし、その言葉はシャンクスに届いてしまっていた。
シャンクスの顔が、髪にも負けず赤くなる。
「え、ちょ、師匠!?」
「あー。言っちゃった。……シャンクス。愛してる。」
「え、あ、え……。」
戸惑うシャンクス。対して余裕の●●。
真っ赤になったシャンクスを、後ろから●●が抱きしめる。
「え、ちょ、ししょっ……。」
「名前で呼べって。……もう、師弟関係じゃねぇんだよ。
私の秘密を知ったなら、責任取れ。」
「あ、え、●●……?」
よくできましたと言わんばかりに、シャンクスの頭を●●は撫でる。
「ありがとう、シャンクス。私、幸せ者だなぁ。」
そうして、●●はへたりと座り込むと、そのまま眠りについた。
「愛してるって……。」
おれの言葉、取るんじゃねぇよ。
なんて声が、なんの音もしない暗闇の中にこだました。
ウタが叫ぶ。
ルフィは、飛びながらリズムを狙ってパンチを出す。
全てに影響するゴムの力さえも跳ね返す彼女の体からは、黒い羽が見えていた。
切なく、切れそうに細い歌声。
しかし、その小さな声に皆飲まれ、力が出し切れない。
……ルフィもウタも、例外なく。
●●の声に合わせ、龍が飛び出す。
地面が揺らぐ。
現実世界でないとは言えど、それに死の恐怖を感じてしまう。
「ウタ!!」
ルフィが龍を避けさせようと、ウタに手を伸ばす。
しかし、ウタはそれを払い除け、息を大きく吸った。
「お母さん!!もとに戻ってよ!!」
その声が、トットムジカを引き寄せる。
もともとトットムジカは、ウタの心のなかに宿った魔王。
……リズムはそれを、引き取っただけである。
【あの時】のウタは精神と肉体が能力に追いついていなかった。
では今、●●に鍛えられ、
精神と肉体が能力に追いついたウタの心に魔王が戻れば。
「これでもう、トットムジカは使えないよ!お母さん!」
ニッといたずらっ子のように笑って、ウタは言う。
しかし、その顔には、汗が浮かんでいた。
……そう。ウタにとってトットムジカはウタの恐怖と不安を濃縮したような代物。
それをコントロールするには、とてつもない精神力と体力を必要とする。
「……う、た。」
「お母さん!!!」
「あ、あ゙……。」
しかし、完全にトットムジカが抜けきっていないのか、
それとも有毒ワライダケの仕業か、●●は苦しそうに頭を抱える。
そして、また、●●は歌い出す。
「[太字][斜体]ひとりぼっちには飽き飽きなの
繋がっていたいの
純真無垢な想いのまま Loud out[/斜体][/太字]」
それによって、大小さまざまな紙人形が作り出され、皆に襲いかかる。
(まずいっ!!)
ウタが、そう思った、その時。
ガキン、ガキン。
二人が、ウタとルフィへの道を阻む。
「……!!ゾロ!!サンジ!!」
「ここは任せて、さっさと行け。」
「ウタちゅわ〜ん!!
ここはおれとマリモに任せてお母さん助けておいで〜!!
おい、ルフィ!!ウタちゃんをしっかり守れよ!!
守れなかったら三枚に下ろす!!」
そんな事を言っている暇にも、紙人形は彼らを襲う。
●●の武装色が纏われているからか、二人でもなかなか止められない。
しかし、少しづつ、しっかりと紙人形は減っている。
「火炎星!!」
ウソップも紙人形を燃やし、
「雷光槍(サンダーランス)=テンポ!!」
ナミも雷で炎をあげる。
「八十輪咲き、四本樹『ホールド』」
ロビンは紙人形を一気に押さえつけ、
「ストロングハンマー!!」
「重量強化(ヘビーポイント)、腕力強化(アームポイント)!!」
フランキーとチョッパーは紙人形を殴り飛ばす。
「鼻唄三丁矢筈斬り!!」
ブルックは紙人形を切り刻み、
「それぃ!!」
覇気を纏えると言えど、所詮は紙。
と言わんばかりにジンベエは魚人空手を叩き込む。
「お、お前ら……!」
「よし、ルフィ、行こう。前は任せたよ!!」
「あぁっ!!」
ルフィは●●に飛びかかり、ウタは●●の歌に乗る。
「[太字][斜体]Listen up baby 消えない染みのようなハピネス
君の耳の奥へホーミング 逃げちゃダメよ浴びて
他の追随許さないウタの綴るサプライズ[/斜体][/太字]」
この歌の名をなんとつけようか。
お母さんへ捧げる子守唄。そうだ、【ウタカタララバイ】。
これがいい。
「[太字][斜体]後で気付いたってもう遅い
入れてあげないんだから
手間取らせないで Be my good boys & girls[/斜体][/太字]」
●●もウタに音楽で対抗する。
二人で作られる即興の音楽。
二人の間には音楽の亀裂が走り、曲調が代わっていく。
「[太字][斜体]ねえ教えて何がいけないの?
この場はユートピア だって望み通りでしょ?[/斜体][/太字]」
●●の目を覗けば、本当にそう思っている、と言わんばかりの必死な目。
けれどそれは、偽りの目。
「[太字][斜体]I wanna know 君が欲しいもの
本心も気付かせてあげるよ
見返りなんて要らない あり得ない
ただ一緒にいて? True heart
Oh my “F” word[/斜体][/太字]」
ウタの、●●の、必死な声が会場中を包み込む。
渡さない、もう、行かせない。
いつの間にかトットムジカもウタの心のなかから飛び出す。
「[漢字]猿神銃[/漢字][ふりがな]バジュラングガン[/ふりがな]!!」
白い神、歌の魔王、破壊の皇帝。
三柱の技が一気に炸裂する。
しかし、その技は相殺。勝利の女神は誰にも微笑んではくれない。
「[太字][斜体]わたしがやらなきゃ だから邪魔しないで お願い…
もう戻れないの だから永遠に一緒に歌おうよ[/斜体][/太字]」
●●の声に、ウタは首をふる。
それは、嫌だの意思。
ウタが初めて行った、●●の反抗。
そしてそれは、ウタの全力の。
「[太字][斜体]直に脳を揺らすベース 鼓膜ぶち破るドラム
心の臓撫でるブラス ピアノ マカフェリ
五月雨な譜割りで Shout out! Doo wop wop waaah![/斜体][/太字]」
怒り。悲しみ。苦しみ。寂しさ。恐怖。孤独。
全てを包み込んでくれた母を攻撃することへの痛み。
それらを、全てぶつけたものだった。
喉が枯れるまで、世界が震えるほどに、
涙がこぼれ落ちるほどに、恐怖で震えるほどに。
ウタは、歌う、歌う。
「[太字][斜体]欺きや洗脳 お呼びじゃない
ただ信じて願い歌うわたしから耳を離さないで
それだけでいい Hear my true voice[/斜体][/太字]」
信じて、私の方へ戻ってきて。
そんな願いを、願望を。わがままを。
受け止めてほしい。それだけがウタの願いだった。
「う、た……?うた。」
ウタの名を、呼び始める●●。
いつの間にかウタの心のなかから、トットムジカが消えていた。
―ありがとう―
「……[小文字]なぁんだ、きみは寂しかったんだね。[/小文字]」
小さな声で、そう言うと、ウタは●●の方へ駆け寄る。
しかし、●●はウタの進む道をバリアで遮る。
「おかぁっ……!?」
「……ごめん、ウタ。」
その目は、リズムの目ではない。●●の目でもない。
ウタを見つめる母の目であった。
「ウタ、ごめんな。」
●●がそう言うと、会場が崩れだす。
「……!?!?何をする気なの、おか……」
「もう、いいんだ。」
そう言ったときには、リズムはウタワールドの能力を解いていた。
……ウタワールドの能力だけは。
「……ここって!?」
いつの間にかウタは、どこともしれない真っ暗な世界に閉じ込められていた。
誰もいない、孤独な世界に。
「ようこそ、死の国、ムーンレイドへ。
ここで決着をつけようか。ウタ。」
その声は、どこか悲しげで、いつもよりずっと、澄んだ声だった。
[水平線]
「おいおい、何だここ。」
シャンクスがそうこぼす。
当たり前だ。
トットムジカに斬りかかったと思ったら、
いきなりこの世界に引きずり込まれたのだから。
しょうがないとそっと座り込むと、
「……やっほ。シャンクス。」
●●の声がした。
シャンクスは振り向こうとするが、それを●●は静止する。
「前向いたままで。」
「……なにする気、だ。」
「ちょっと見てもらいたいものがあるんだ。」
だから、前向いたままでお願い。
そう、●●は言う。
その後、小さな背中が、自らの背に預けられるのがわかる。
それから一分も経っていないだろう。
暗闇の中に、映像が映し出された。
―あ、ほらほら!ついたついた!!
姉さま〜!リゲル〜!見えてるか〜!ほら、ヘリオスも!―
―姉ちゃーん!!リゲル〜!―
―●●!リゲル!―
―おい、見えねぇぞ!―
―映ってるから大丈夫だぞ、アステル。―
―わ〜!ちょっと、痛い痛い、ベテル!―
―デネブ!ちょっとどいてよ!―
そこには、あの日、あの時、海の底に消えたはずの、スター海賊団クルーがいた。
「これ、って。」
「……800年前。ある海賊団が壊滅した。
その海賊団のクルーが、船長と副船長に残した、最後の言葉だ。」
●●の一言一言が、シャンクスの心に重くのしかかる。
今、●●は自分をリゲルとしてみている。
それがわかった。
―時間ないから、簡潔に説明する!
姉さま、リゲル、愛してるぜ!―
―愛してる!―
―死んでもずっと見守ってるな!―
―そして、リゲル!あの馬鹿を支えてやってくれ!―
―頼むぜ!●●はすぐ一人で抱え込むからな〜。―
―おれたちはいつまでも二人のクルーだ!―
―おれたちからのメッセージ!!は以上!
いつか何処かで、また会おう、姉さま!―
―姉ちゃん!!―
プツリ。
そこで、動画は終わっている。
この後何があったのか、シャンクスには想像がつかない。
「師匠。」
後ろを見なくても、わかってしまう自分が憎たらしい。
「泣くなよ。」
「泣いてなんて、ねぇわ。」
聞こえるしゃくり声。
泣いてないなんて、嘘八百だ。嘘が下手すぎる。
「……なぁ、シャンクス。」
「どうしたんだ、師匠。」
師匠はそっと、背中にかける体重を増やす。
「怖いんだ。」
「何が。」
「大切な人を失うのが。失わせるのが。
大切なものを、見失ってしまうのが。」
振り向けないからわからない。
けれど、シャンクスには、やはりわかってしまう。
●●の目はきっと、潤んでいるんだろう。
「……おれにも、わからない。」
「……そう、だよな。」
自虐的な笑い声が、背中越しに聞こえる。
「でも、おれは怖い。」
「……何が?」
お前は何が怖いんだ?
なんて、乾いた笑いを交えながら●●は言う。
「師匠が、このまま遠くに行ってしまうこと。」
「……?!え。」
予想外、とでも言うかのような声が、●●の口をついて出る。
「どこかに行ってしまうこと。それが、おれが今、一番怖いこと。」
本音。本当の言葉。
シャンクスの、一番言いたかった言葉。
「お前、らしくないな。」
「…だろ。」
自分でも、そう思っていた。
怖いなんて、自分らしくないと。
だから今、伝えた。誰も聞いていない、今だからこそ。
「[小文字]愛してる。[/小文字]」
「……。。。師匠!?」
●●が、小さな声で言ったその言葉。
しかし、その言葉はシャンクスに届いてしまっていた。
シャンクスの顔が、髪にも負けず赤くなる。
「え、ちょ、師匠!?」
「あー。言っちゃった。……シャンクス。愛してる。」
「え、あ、え……。」
戸惑うシャンクス。対して余裕の●●。
真っ赤になったシャンクスを、後ろから●●が抱きしめる。
「え、ちょ、ししょっ……。」
「名前で呼べって。……もう、師弟関係じゃねぇんだよ。
私の秘密を知ったなら、責任取れ。」
「あ、え、●●……?」
よくできましたと言わんばかりに、シャンクスの頭を●●は撫でる。
「ありがとう、シャンクス。私、幸せ者だなぁ。」
そうして、●●はへたりと座り込むと、そのまま眠りについた。
「愛してるって……。」
おれの言葉、取るんじゃねぇよ。
なんて声が、なんの音もしない暗闇の中にこだました。
- 1.始まりの時【前編】
- 2.始まりの時【後編】
- 3.11年後
- 4.私の記憶(メモリー)、お前らの記録(ログ)
- 5.オーロジャクソンの日常より
- 6.思い出そして、現在の姿
- 7.破壊の王の世界へ 堕ちる
- 8.ユートピア 私が望むもの
- 9.Rigel / nautical chart!!
- 10.うたの始まり
- 11.ウタ&リズム 〜歌の女王と踊りの皇帝〜
- 12.キミへ伝えるメッセージ
- 13.弟たち
- 14.ライブ開始! 行動開始!
- 15.負け惜しみ?
- 16.最高地点、最高のライブ
- 17.永久愛歌
- 18.リゲルの記憶 そして真実
- 19.not本編 遅めの夢主紹介!!
- 20.笑いの地獄へようこそ
- 21.だから私達は最強
- 22.継がれる記憶
- 23.解放の戦士、破壊の皇帝
- 24.伝えたい言葉
- 25.not本編 ルナとヘリオス、太陽と月
- 26.凍れ、わが仇よ
- 27.邪神の子ども、歌の魔王宿す破壊の女神
- 28.ドラゴンキラー、ライト
- 29.最高のアンコールを
- 30.最終話 不死鳥の語る、消失の帝王