閲覧前に必ずご確認ください
ネタバレあり注意
夢小説設定
×
「……有毒ワライダケか。」
私も厄介なものに手を出したな。
外の私は頑張っているようだ。けれど、それがどこまで持つかは、私にもわからない。
「まっさか……ねぇ。」
きっと、あの衆人に悪気はない。
《リズム様!!これ、私達が作ったものです》
《ぜひ、お食べください。》
《そして我らに解放を!!》
有毒ワライダケの〈解放の噂〉を聞いて
大きな悪気はなく私の食事に混ぜたのだろう。
巷では、有毒ワライダケを食べたものは解放の戦士となり、
全ての悪しき者を征伐し、
弱者に解放をもたらすと言われているらしい。
根も葉もない噂話だ。
実際、今、私は解放の戦士などではなく、破壊の皇帝となっている。
それに、……私に無断でこれを食事に混ぜた時点で、
悪気がなかったと言ったら嘘になるだろうが。
しかし、食べてしまったものはしょうがない。
「……こいつは食ったら止まんねぇんだよな……。」
一度食べたことがあるから知っている。
この中毒性と、精神と身体の分離。
一度、アイツラを亡くした直後に食ってしまって
死にかけたときもそうだった。
……あの時からだろうか。毒に異様なほどの耐性がついてしまったのは。
「ウタ、シャンクス。……ごめんな。」
弟子に、娘に、自分を殺させるって、一番させたくないことの一つなんだが。
これしか方法がないのも確かで。
というか、まず私がその前に世界を破壊しかねないのも確かで。
そんなことをさせるとか、そんなリスクを負わせるとか、
やっぱり私は、私は。
「……馬鹿だな。」
自虐的な笑いも、誰も聞いてはくれない。
誰も、慰めてはくれない。
なぁ、リゲル、私は、どうしたらいい?
なぁ。教えてくれよ。
……もし、お前が私を空から見ているのであれば。
[水平線]
ドゴッ
ルフィのパンチが、リズムの体を完璧にとらえる。
しかしリズムは、笑ったまま、その手を跳ね返す。
「なんだこいつ!?硬ぇ!!」
「お母さん、本気出してきてる!!
ルフィ、まずいよ、精神と身体が分離し始めてる!!」
「せ、せーしんとからだがぶんり〜?何言ってんだ、ウタ。」
ウタの話の内容を理解し切ることなく、
しかし、ルフィはギア4、スネイクマンを発動させる。
「よくわかんねぇけど、倒せばいい話だろ?」
「そうなんだけど……。」
「じゃあ決まりだ!!」
リズムの体にルフィが飛び込んでいこうとした、その時。
「待って!!」
ウタがルフィを止めた。
「説明させて。……みんなも聞いて!!」
ウタの声は、遠くに避難した一味や、戦闘に加わった一味の耳にも届いた。
……不思議なことに、観客にその声を聞いたものはいない。
「この世界は、現実世界じゃない。お母さんの精神の中。
このままじゃみんな、精神の中に囚われちゃう。
お母さんも、毒で死んじゃう!!」
その声は、必死で、悲痛で。彼女の目には涙が浮かんでいた。
「……ウタ。」
「お母さんは!!リズムは!!●●さんは!!
私の……。シャンクスの大切な人なの!!
だから、助けて!!もう、シャンクスから、お母さんを奪わないであげて!!」
ウタは、知っていた。
《おれ、師匠守れなかったんだよな。
こんな弟子、師匠はいらないって思ってるだろ。
でも、おれ、諦めねぇから。》
《シャンクス、きっと、私を弱い師匠だって思ってるだろうな。》
シャンクスが、どれだけ●●を探していたのかを。
●●が、どれだけシャンクスを守ろうとしていたのかを。
どれだけお互いを大切に想っていたのかを。
どれだけお互いを愛していたのかを。
知っているから、もう、失わせたくなかった。
お互いから、お互いを。
もう二度と、もう二度と。
「もう、もう……「わかった、ウタ。」
一気に顔が泣き顔を化したウタの手を、ルフィが掴む。
「お前とシャンクスの大切なやつなんだな?
大丈夫。ぜってー助けるから、安心しろっ!!」
「歌姫屋、もう泣くんじゃねぇ。
……おれは、医者だ。毒なんて、すぐ抜いてやる。」
隣からローの声もする。
「ルフィ……トラ男くん……!!」
ドンドットット、ドンドットット。
ルフィの心臓の音が上がっていく。
「アヒャ?……あひゃ……ひゃ……。」
ルフィの心臓の音に、リズムは苦しみ、地へと堕ちていく。
「その、お……と。」
「キタキタキタぁ!!!この音!!!!」
ルフィの髪や服は見る間に真っ白になり、
羽衣をつけ、空を自由に舞い始める。
ここは現実世界ではないとはいえ、ナイトランド。
浮かぶ月に、白が映える。
「ギア5!!」
「にか、さま。」
ルフィの声と、リズムの声が、シンクロした。
[水平線]
「下がれ!!」
やばい、そう感じた。
未来視じゃない。
師匠は見聞殺しを使ってるから、おれでも今、未来を見ることは不可能だ。
ただの直感。
船長と白ひげとの大喧嘩の後。
師匠は一発、二人を殴っていた。
あの二人の覇王色でただでさえ天が割れていたと言うのに。
師匠の一発が、天の裂け目を深くし、また、谷を大きくした。
《次やったら命はないと思え。》
怖かった。けれど、それ以上に、[大文字][太字]美しいと思った。[/太字][/大文字]
船長たちに物怖じしない師匠が、
船長たちを脅すように向けた冷たい目が、
……おれたちには、決して見せてくれないそんな表情が。
だって、おれたちに甘々な師匠は、おれたちを絶対怒らないから。
おれが好きなその表情は、絶対に見れない。
だから、できる限りの悪戯をした。
その中には、バギーも引くようなものもあった。
けれど、師匠は、怒らなかった。
《まだまだ、可愛いもんだろ。》
代わりにレイリーさんにでっかいたんこぶを作られた。
バギーを巻き込んだのは、悪かったって思ってる。
やっぱ、綺麗。
なんて小さな声で言ってみようとしても、
状況は変わったりしてくれない。
師匠の神避。普段剣を使わない彼女のそれは、
グラグラと狙いがずれたり、定まったり。
けれど、覇気だけは馬鹿みたいに強いから、
かすっただけでも致命傷になりそうだ。
「●●!!」
必死で避けつつ、師匠の名を呼ぶ。
師匠の目がゆらりと揺らいだが、正気に戻る気配はない。
「どうして……。」
あぁ、やっぱり[漢字]リゲル[/漢字][ふりがな]おれ[/ふりがな]のせいなのか?
なんて、思考がリゲルに染まっていくのに気付けない馬鹿なおれは、師匠の元へ手を伸ばす。
「なぁ、どうしてだよ!!」
教えてくれるはずないのに。
強く言っても、彼女を傷つけるだけなのはわかっているのに。
「……しゃん、くす?りげる?」
虚ろな瞳で自らをそっと見つめる●●の目を、おれも見つめ返す。
その声に、おれはどちらとして応えればいいのだろう。
「……おれは。」
この時、バギーだったら、なんと応えただろう?
……もし、アイツだったら。
・・・ハデアホって言って、おれはバギーだって言って、顔面マギー玉していただろう。
もしかしたら、師匠とさえ、呼ばないかもしれない。
あいつはそういうやつだ。
おれは、そんな勇気はないけれど。
もし、おれが前世の記憶を持って生まれていたのだったら、
もし、今までに思い出せていたら、こんなに悩むこともなかっただろうに。
「……誰なんだろうな、[漢字]師匠[/漢字][ふりがな]●●[/ふりがな]。」
苦しい、痛い。
どんな目を向ければいい?どんな言葉をかければいい?
どうやって、話しかければいい?どうやって立っていればいい?
そんなことさえわからねぇのか。
あざ笑う自分がいる。
けれど、おれには決められない。
もう、無理かもしれない。なんて、思ったときだった。
「[斜体][太字]散々な思い出は悲しみを穿つほど
やるせない恨みはアイツのために
置いてきたのさ[/太字][/斜体]」
師匠の歌声が、聞こえる。
ウタのヘッドホンで、聞こえないはずなのに、
どこからか。
「[太字][斜体]あんたらわかっちゃないだろ
本当に傷む孤独を[/斜体][/太字]」
苦しげに、でも笑顔で。
震えながら、少しづつ。
おれの背中を、押すように。
「[太字][斜体]もう寂しくないさ
ないさ
[太字]逆光よ[/太字][/斜体][/太字]」
その歌声は、小さかったけれど、【リズム】の狂ったような声ではなく。
純粋な【師匠】の声だった。
―もう、寂しくないのか。よかった……―
なんて、心のなかから声が聞こえる。
「……ありがとう、師匠。 (ありがとう、●●)
もう、迷わねぇよ。 (覚悟決まったよ)」
心の声と、おれの声がシンクロする。
「「おれは、おれだ!!」」
それに合わせて師匠の口が動き出す。なんと言っているのか。
おれには聞こえなかった。
よかった……だろうか?
はたまた、世話かけさせんな、か。
もしかしたら、一言、馬鹿だけかもしれない。
けれど、それでも、
師匠の正気の姿を見れたのは、嬉しかった。
「あ゙ぁっ!!!」
師匠が鈍い叫び声を、あげる。
その後ろにいたのは。
「[漢字]魔王[/漢字][ふりがな]トットムジカ[/ふりがな]……!?」
馬鹿な、そんなはずはない。
だって、トットムジカはウタウタの実に宿る、魔王。
師匠とはいえど、呼び出すことさえ叶わないはずなのに。
どう、して。
「[太字][斜体]ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ[/斜体][/太字]」
師匠の声が、会場中に響き渡る。
これじゃあもう、ウタの作戦は無理だろう。
トットムジカによって、世界は繋げられた。
……賽は投げられてしまった。
一応アイツラを下げといて正解だった。
おれでさえ一瞬気を抜けば意識を持っていかれるほどの覇王色。
全てを見透かす見聞色。
歌に織り交ぜ放たれる、武装色を纏った弓矢。
「[太字][斜体]ᛗᛁᛖ ᚾᛖᚷ ᛟᚾ ᚷᛁᛖᚲ ᚷᛁᛖᚲ ᚾᚨᚺ ᛈᚺᚨᛋ ᛏᛖᛉᛉᛖ ᛚᚨᚺ
死をも転がす救いの讃歌
求められたる救世主[/斜体][/太字]」
そして、トットムジカそのものの強さ。
気を抜けば死ぬ。いや、気を抜かなくても死ぬ。
それに、おれ一人じゃあ、とてもじゃないけど勝ち目はない。
でも、大丈夫だとおれは思ってる。
その楽観視がいい方に傾くか、それは誰も知らない。わからない。
でもだったら、やってみなくちゃ、始まらない。
「[太字][斜体]有象無象の Big Bang 慈しみ深く
怒れ 集え 謳え 破滅の譜を[/斜体][/太字]」
ドンドットット、ドンドットット。
どこからか、そんなリズムが聞こえる。
その音に合わせて、おれは師匠に斬りかかる。
何も考えず、ただ、師匠を引きずり戻すことだけを、
魔王を打ち倒すことだけを考えて。
私も厄介なものに手を出したな。
外の私は頑張っているようだ。けれど、それがどこまで持つかは、私にもわからない。
「まっさか……ねぇ。」
きっと、あの衆人に悪気はない。
《リズム様!!これ、私達が作ったものです》
《ぜひ、お食べください。》
《そして我らに解放を!!》
有毒ワライダケの〈解放の噂〉を聞いて
大きな悪気はなく私の食事に混ぜたのだろう。
巷では、有毒ワライダケを食べたものは解放の戦士となり、
全ての悪しき者を征伐し、
弱者に解放をもたらすと言われているらしい。
根も葉もない噂話だ。
実際、今、私は解放の戦士などではなく、破壊の皇帝となっている。
それに、……私に無断でこれを食事に混ぜた時点で、
悪気がなかったと言ったら嘘になるだろうが。
しかし、食べてしまったものはしょうがない。
「……こいつは食ったら止まんねぇんだよな……。」
一度食べたことがあるから知っている。
この中毒性と、精神と身体の分離。
一度、アイツラを亡くした直後に食ってしまって
死にかけたときもそうだった。
……あの時からだろうか。毒に異様なほどの耐性がついてしまったのは。
「ウタ、シャンクス。……ごめんな。」
弟子に、娘に、自分を殺させるって、一番させたくないことの一つなんだが。
これしか方法がないのも確かで。
というか、まず私がその前に世界を破壊しかねないのも確かで。
そんなことをさせるとか、そんなリスクを負わせるとか、
やっぱり私は、私は。
「……馬鹿だな。」
自虐的な笑いも、誰も聞いてはくれない。
誰も、慰めてはくれない。
なぁ、リゲル、私は、どうしたらいい?
なぁ。教えてくれよ。
……もし、お前が私を空から見ているのであれば。
[水平線]
ドゴッ
ルフィのパンチが、リズムの体を完璧にとらえる。
しかしリズムは、笑ったまま、その手を跳ね返す。
「なんだこいつ!?硬ぇ!!」
「お母さん、本気出してきてる!!
ルフィ、まずいよ、精神と身体が分離し始めてる!!」
「せ、せーしんとからだがぶんり〜?何言ってんだ、ウタ。」
ウタの話の内容を理解し切ることなく、
しかし、ルフィはギア4、スネイクマンを発動させる。
「よくわかんねぇけど、倒せばいい話だろ?」
「そうなんだけど……。」
「じゃあ決まりだ!!」
リズムの体にルフィが飛び込んでいこうとした、その時。
「待って!!」
ウタがルフィを止めた。
「説明させて。……みんなも聞いて!!」
ウタの声は、遠くに避難した一味や、戦闘に加わった一味の耳にも届いた。
……不思議なことに、観客にその声を聞いたものはいない。
「この世界は、現実世界じゃない。お母さんの精神の中。
このままじゃみんな、精神の中に囚われちゃう。
お母さんも、毒で死んじゃう!!」
その声は、必死で、悲痛で。彼女の目には涙が浮かんでいた。
「……ウタ。」
「お母さんは!!リズムは!!●●さんは!!
私の……。シャンクスの大切な人なの!!
だから、助けて!!もう、シャンクスから、お母さんを奪わないであげて!!」
ウタは、知っていた。
《おれ、師匠守れなかったんだよな。
こんな弟子、師匠はいらないって思ってるだろ。
でも、おれ、諦めねぇから。》
《シャンクス、きっと、私を弱い師匠だって思ってるだろうな。》
シャンクスが、どれだけ●●を探していたのかを。
●●が、どれだけシャンクスを守ろうとしていたのかを。
どれだけお互いを大切に想っていたのかを。
どれだけお互いを愛していたのかを。
知っているから、もう、失わせたくなかった。
お互いから、お互いを。
もう二度と、もう二度と。
「もう、もう……「わかった、ウタ。」
一気に顔が泣き顔を化したウタの手を、ルフィが掴む。
「お前とシャンクスの大切なやつなんだな?
大丈夫。ぜってー助けるから、安心しろっ!!」
「歌姫屋、もう泣くんじゃねぇ。
……おれは、医者だ。毒なんて、すぐ抜いてやる。」
隣からローの声もする。
「ルフィ……トラ男くん……!!」
ドンドットット、ドンドットット。
ルフィの心臓の音が上がっていく。
「アヒャ?……あひゃ……ひゃ……。」
ルフィの心臓の音に、リズムは苦しみ、地へと堕ちていく。
「その、お……と。」
「キタキタキタぁ!!!この音!!!!」
ルフィの髪や服は見る間に真っ白になり、
羽衣をつけ、空を自由に舞い始める。
ここは現実世界ではないとはいえ、ナイトランド。
浮かぶ月に、白が映える。
「ギア5!!」
「にか、さま。」
ルフィの声と、リズムの声が、シンクロした。
[水平線]
「下がれ!!」
やばい、そう感じた。
未来視じゃない。
師匠は見聞殺しを使ってるから、おれでも今、未来を見ることは不可能だ。
ただの直感。
船長と白ひげとの大喧嘩の後。
師匠は一発、二人を殴っていた。
あの二人の覇王色でただでさえ天が割れていたと言うのに。
師匠の一発が、天の裂け目を深くし、また、谷を大きくした。
《次やったら命はないと思え。》
怖かった。けれど、それ以上に、[大文字][太字]美しいと思った。[/太字][/大文字]
船長たちに物怖じしない師匠が、
船長たちを脅すように向けた冷たい目が、
……おれたちには、決して見せてくれないそんな表情が。
だって、おれたちに甘々な師匠は、おれたちを絶対怒らないから。
おれが好きなその表情は、絶対に見れない。
だから、できる限りの悪戯をした。
その中には、バギーも引くようなものもあった。
けれど、師匠は、怒らなかった。
《まだまだ、可愛いもんだろ。》
代わりにレイリーさんにでっかいたんこぶを作られた。
バギーを巻き込んだのは、悪かったって思ってる。
やっぱ、綺麗。
なんて小さな声で言ってみようとしても、
状況は変わったりしてくれない。
師匠の神避。普段剣を使わない彼女のそれは、
グラグラと狙いがずれたり、定まったり。
けれど、覇気だけは馬鹿みたいに強いから、
かすっただけでも致命傷になりそうだ。
「●●!!」
必死で避けつつ、師匠の名を呼ぶ。
師匠の目がゆらりと揺らいだが、正気に戻る気配はない。
「どうして……。」
あぁ、やっぱり[漢字]リゲル[/漢字][ふりがな]おれ[/ふりがな]のせいなのか?
なんて、思考がリゲルに染まっていくのに気付けない馬鹿なおれは、師匠の元へ手を伸ばす。
「なぁ、どうしてだよ!!」
教えてくれるはずないのに。
強く言っても、彼女を傷つけるだけなのはわかっているのに。
「……しゃん、くす?りげる?」
虚ろな瞳で自らをそっと見つめる●●の目を、おれも見つめ返す。
その声に、おれはどちらとして応えればいいのだろう。
「……おれは。」
この時、バギーだったら、なんと応えただろう?
……もし、アイツだったら。
・・・ハデアホって言って、おれはバギーだって言って、顔面マギー玉していただろう。
もしかしたら、師匠とさえ、呼ばないかもしれない。
あいつはそういうやつだ。
おれは、そんな勇気はないけれど。
もし、おれが前世の記憶を持って生まれていたのだったら、
もし、今までに思い出せていたら、こんなに悩むこともなかっただろうに。
「……誰なんだろうな、[漢字]師匠[/漢字][ふりがな]●●[/ふりがな]。」
苦しい、痛い。
どんな目を向ければいい?どんな言葉をかければいい?
どうやって、話しかければいい?どうやって立っていればいい?
そんなことさえわからねぇのか。
あざ笑う自分がいる。
けれど、おれには決められない。
もう、無理かもしれない。なんて、思ったときだった。
「[斜体][太字]散々な思い出は悲しみを穿つほど
やるせない恨みはアイツのために
置いてきたのさ[/太字][/斜体]」
師匠の歌声が、聞こえる。
ウタのヘッドホンで、聞こえないはずなのに、
どこからか。
「[太字][斜体]あんたらわかっちゃないだろ
本当に傷む孤独を[/斜体][/太字]」
苦しげに、でも笑顔で。
震えながら、少しづつ。
おれの背中を、押すように。
「[太字][斜体]もう寂しくないさ
ないさ
[太字]逆光よ[/太字][/斜体][/太字]」
その歌声は、小さかったけれど、【リズム】の狂ったような声ではなく。
純粋な【師匠】の声だった。
―もう、寂しくないのか。よかった……―
なんて、心のなかから声が聞こえる。
「……ありがとう、師匠。 (ありがとう、●●)
もう、迷わねぇよ。 (覚悟決まったよ)」
心の声と、おれの声がシンクロする。
「「おれは、おれだ!!」」
それに合わせて師匠の口が動き出す。なんと言っているのか。
おれには聞こえなかった。
よかった……だろうか?
はたまた、世話かけさせんな、か。
もしかしたら、一言、馬鹿だけかもしれない。
けれど、それでも、
師匠の正気の姿を見れたのは、嬉しかった。
「あ゙ぁっ!!!」
師匠が鈍い叫び声を、あげる。
その後ろにいたのは。
「[漢字]魔王[/漢字][ふりがな]トットムジカ[/ふりがな]……!?」
馬鹿な、そんなはずはない。
だって、トットムジカはウタウタの実に宿る、魔王。
師匠とはいえど、呼び出すことさえ叶わないはずなのに。
どう、して。
「[太字][斜体]ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ[/斜体][/太字]」
師匠の声が、会場中に響き渡る。
これじゃあもう、ウタの作戦は無理だろう。
トットムジカによって、世界は繋げられた。
……賽は投げられてしまった。
一応アイツラを下げといて正解だった。
おれでさえ一瞬気を抜けば意識を持っていかれるほどの覇王色。
全てを見透かす見聞色。
歌に織り交ぜ放たれる、武装色を纏った弓矢。
「[太字][斜体]ᛗᛁᛖ ᚾᛖᚷ ᛟᚾ ᚷᛁᛖᚲ ᚷᛁᛖᚲ ᚾᚨᚺ ᛈᚺᚨᛋ ᛏᛖᛉᛉᛖ ᛚᚨᚺ
死をも転がす救いの讃歌
求められたる救世主[/斜体][/太字]」
そして、トットムジカそのものの強さ。
気を抜けば死ぬ。いや、気を抜かなくても死ぬ。
それに、おれ一人じゃあ、とてもじゃないけど勝ち目はない。
でも、大丈夫だとおれは思ってる。
その楽観視がいい方に傾くか、それは誰も知らない。わからない。
でもだったら、やってみなくちゃ、始まらない。
「[太字][斜体]有象無象の Big Bang 慈しみ深く
怒れ 集え 謳え 破滅の譜を[/斜体][/太字]」
ドンドットット、ドンドットット。
どこからか、そんなリズムが聞こえる。
その音に合わせて、おれは師匠に斬りかかる。
何も考えず、ただ、師匠を引きずり戻すことだけを、
魔王を打ち倒すことだけを考えて。
- 1.始まりの時【前編】
- 2.始まりの時【後編】
- 3.11年後
- 4.私の記憶(メモリー)、お前らの記録(ログ)
- 5.オーロジャクソンの日常より
- 6.思い出そして、現在の姿
- 7.破壊の王の世界へ 堕ちる
- 8.ユートピア 私が望むもの
- 9.Rigel / nautical chart!!
- 10.うたの始まり
- 11.ウタ&リズム 〜歌の女王と踊りの皇帝〜
- 12.キミへ伝えるメッセージ
- 13.弟たち
- 14.ライブ開始! 行動開始!
- 15.負け惜しみ?
- 16.最高地点、最高のライブ
- 17.永久愛歌
- 18.リゲルの記憶 そして真実
- 19.not本編 遅めの夢主紹介!!
- 20.笑いの地獄へようこそ
- 21.だから私達は最強
- 22.継がれる記憶
- 23.解放の戦士、破壊の皇帝
- 24.伝えたい言葉
- 25.not本編 ルナとヘリオス、太陽と月
- 26.凍れ、わが仇よ
- 27.邪神の子ども、歌の魔王宿す破壊の女神
- 28.ドラゴンキラー、ライト
- 29.最高のアンコールを
- 30.最終話 不死鳥の語る、消失の帝王