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消失の帝王  〜とある女海賊の記録(ログ)〜

#18

リゲルの記憶 そして真実

「リゲル!」
おれは、その笑顔が大好きだった。
おれと同い年で、でもちょっぴり子供っぽい、●●が大好きだった。
「何だよ、●●?」
「でかい海王類が取れたんだよ!アステルに美味しいのにしてもらうんだ!
なに食べたい?」
その可愛い仕草も、
「ん……煮込みだな。」
「好きだな〜!」
笑い声も、
「そろそろ次の島らしいぞ。」
「何だって!?ルナとヘリオスに伝えてくる!」
弟思いなところも、
全部。

でも、手を伸ばしたって、彼女に触れることはできない。
おれにとって●●は、高嶺の花でしかない。
「ルナぁ!!ヘリオス!!島だぞー!!」
「ほんとか、姉さま!」
「うっひょー!島だー!遊ぶぞ、ルナ!姉ちゃん!」
何度、彼女の弟たちに嫉妬の思いを抱いただろう。
抱いてはいけないと思いつつも、腹の底から熱い何かがこみ上げてくる。
おれは、彼女の何者でもないのに。
「アステルー!!島だー!あと海王類取れたからごはーん!!」
「はいはい、船長。」
「アンタレスー!!島だー!後で手合わせしろー!!」
「聞こえてるわ!!……了解、キャップ。」
船長の声が、船中に響き渡る。
こう来ると、
[漢字]デネブ[/漢字][ふりがな]航海士[/ふりがな]や[漢字]レグルス[/漢字][ふりがな]狙撃手[/ふりがな]、[漢字]プロキオン[/漢字][ふりがな]操舵手[/ふりがな]、[漢字]シリウス[/漢字][ふりがな]諜報員[/ふりがな]や[漢字]ベテル[/漢字][ふりがな]見習い[/ふりがな]にも叫びに行くのだろう。
そのたびにおれは、みんなに嫉妬しなければならない。
みんなに罪はないのだが、そんな余裕が今のおれにはない。
「リゲル!!」
「……!!何だよ。●●。」
おれの予想に反し、彼女はおれに話しかけてくる。
予想外のことに少し冷たい態度を取ったことを後悔しているおれの眉間を、彼女は人差し指でつつく。
「変な顔してる。
リゲルがそういう顔してると、私も変な顔になるからやめてくれ。」
「なんだ、それ。」
ぷくっと膨らませたその頬さえもを可愛いと思ってしまう。
「……リゲル。」
なんだ、そう言おうとした、その時だった。
「敵襲!!!」
ガンガンガン、ガンガンガン。
鐘の音が鳴り響く。
それは、見張り中のレグルスが、おれたちに敵襲を知らせる鐘の音だった。
「姉さま!」
先程までヘリオスとはしゃいでいたルナが駆けてくる。
「どうした、ルナ。」
「バスターコールだよ!!」
バスターコール。海軍本部中将5人と軍艦10隻による壊滅作戦のこと。
それが発された記録は、今まで残ってはいない。
……初めて、書類上にしかなかったそれが、実行に移されたのだ。
「まずいな。もうバレたか。最果てに行ったのが。」
冷静に●●がつぶやく。
「どうする?この海域は[漢字]海軍[/漢字][ふりがな]あっち[/ふりがな]の[漢字]領域[/漢字][ふりがな]テリトリー[/ふりがな]だし……。」
不安そうにルナが言う。
いつものクールな表情はどこへやら、今は本当の焦燥が見て取れる。
「●●、ここまで来たら……。」
おれの言葉に、●●が頷く。
「あぁ、しょうがないな。」
そうして彼女は拡声器を持つ。
「野郎ども!!これより!!海軍を!!捻り潰す!!」
「「「「おーーー!!!!」」」」
11対何万。勝てるかと言われれば無理な話だ。
けれど、それは逃げたって同じ話。
だったら、死ぬまで戦ってそれで終わり。
そのほうがいいんじゃないか?
それは、おれと●●の思いだ。
「……姉さま。」「姉ちゃん。」
「ルナ、ヘリオス。二人は逃げれるだろ。逃げなさい。」
「お前たちはまだ、政府に顔はバレていない。
まだ生き延びれる。だから……。」
悲しげな目で●●を見つめる二人の肩に手を置いて、彼女は言う。
おれも、二人を見つめ、そう語りかける。
しかし、そんなおれたちの気持ちをよそに、二人はきっぱりと首をふる。
「「嫌だ。」」
「!?!?」
「だって、姉さまも、リゲルも、その後無茶するの確定だろ。
[漢字]船医[/漢字][ふりがな]ドクター[/ふりがな]いなくてどうすんだよ。」
「おれだってもう、弱くねぇもん!
姉ちゃんたちの手助けくらいできるよ、なぁ!ルナ!」
ヘリオスがルナを見上げ、そう語りかける。
あぁ、とルナも不敵に笑って返す。
「でもっ……「おれたちは、海賊だ。」
「もう戻らねぇよ!それにおれたちの船長は。」
そのあと続いた言葉に、●●は涙を流していた。
「姉さまだけだろう?」「姉ちゃんだけだ!!」
と。
その言葉の後、ルナはRoomを広げ、おれたちの目の前から去っていく。
気がつけば二人は、船の船首の部分に立っていた。
「「海軍共!!よく聞け!」」
「おれはスター海賊団船医にして、船長●●の弟、ルナだ!!」
「おれは音楽家で、●●の弟、ヘリオスだ!!」
その声は、海軍の軍艦にまで響いたのだろう。
おれたちに向けての砲撃がもう、始まっていた。
「よく言った!ルナ、ヘリオス。」
その言葉に触発され、アンタレスも、アステルも、みんなが船首へと上がっていく。
「おれは!!スター海賊団戦闘員アンタレスだ!」「おれは、スター海賊団コック、アステル!」
「「被せるんじゃねぇ!!!」」
アンタレスとアステルは、こんなときでも喧嘩して。
「ボクは、航海士、デネブ!」
「狙撃手プロキオン様だ!」
「操舵手レグルス!!」
「諜報員シリウス!!」
「見習いのベテル!!」
みんなは自信満々に胸を張っている。
いつもあんなに、ボケをかましてるのに今ばっかりはかっこよく思う。
「ほらほら、船長、副船長!」
「お、おう。」
少し押されるようにして、おれたちも船首へと押し出される。
「え、えー……ゴホン。
船長●●だ!!好きなものは海王類のソテー!!」
「誰も好物は聞いてねぇわ!!」
そして[漢字]副船長[/漢字][ふりがな]おれ[/ふりがな]より前に言うんじゃねぇと●●に突っ込む。
「じゃぁ、締めは副船長!よろしくお願いします!」
「………。はぁ。副船長リゲル。」
何かつけたせよ〜とプロキオンが煽る。
こんな状況下でホントふざけてるよなと思う。
付け足すことなんて何も思い浮かばない。
おれは、食べれれば何でも好きだ。
遊びは、●●と一緒なら何だっていい。
本だって、●●の好きな分野しか読んでないからほぼわからない。
音楽も、●●が好きなものがおれは好きだ。
何でもおれは、●●が好きなものが好きなんだ。
「絶対嫌だ。」
「なんでだよ〜!好きなものの一個くれぇいいじゃねぇか!」
良くない。だって、おれにとってそれは、



[大文字][中央寄せ][太字][漢字]愛してると伝える[/漢字][ふりがな]告白する[/ふりがな]事になってしまうから。[/太字][/中央寄せ][/大文字]



ドォン、ドォンと砲撃は続く。
船がゆらゆらとあちらこちらに揺れる。
「よーし!!行くぞー!!」
「「「「おーーー!!」」」」
その夜海は、血に濡れた。


[水平線]
「●●、大丈夫か?」
「るなっ……。へりおっ……。あ゙あ゙あ゙ぁぁぁっ……!!」
●●の悲痛な泣き声が、おれの耳を貫く。
ルナは、ヘリオスは、[漢字]クルーたち[/漢字][ふりがな]あいつら[/ふりがな]は、死んだ。
それこそ、勇者のように、●●を守って。……おれとは、大違いだ。
おれは、●●を抱えて逃げることしかできなかった。
この人だけは、死なせたくない。そう思ったから。
でもそれが、正しい選択だったのかは、今でもわからない。
●●の大粒の涙が、雪に溶けていく。
「●●。」
抱きしめようと伸ばした手が、震える。
彼女の方に手を置くことを、おれは許されるのだろうか。
彼女を深い悲しみに沈めてしまった自分が、慰めることを天は認めるだろうか。
ドドドッ、
向こうから見聞色越しに[漢字]海軍[/漢字][ふりがな]あいつら[/ふりがな]が上陸した場面が見える。
ここがバレるのも、時間の問題だろう。
「●●、逃げろ。」
「……でも、船長がっ、私が逃げたらっ。」
仲間に示しがつかないよ。その言葉は、彼女の嗚咽でかき消された。
「……あんたがおれたちの、最後の希望なんだよ。……生きてくれ。」
最後の希望。
というよりは、生きてほしいというおれのただの欲に近い感情。
あぁ、これは、この人を死なせたくないという、自分の欲望なんだ。
と自分の心の中で整理をつける。
「やだ。逃げるなら、お前と一緒に行く。」
「無理だ。おれはもう[漢字]海軍[/漢字][ふりがな]あいつら[/ふりがな]に目ぇつけられてんだ。」
我儘言って、おれと逃げようとする●●を、おれは制する。
おれは、ここから生き延びることは不可能だろう。
でも、彼女なら、●●なら。
きっと……。
「逃げてくれ。頼むよ。●●。」
「嫌だよ。お前をおいて、行けるものか!!」
ごめん。心のなかで、何度もそう唱える。何度も繰り返す。
おれは、そっちにはいけない。あんただけ生きて。
それが、おれの願いだった。
「……来た。」
足音が響き出す。もう、時間がない。
「え?」
●●の声を無視して、おれは●●を崖の下に突き落とす。
この雪。そして、●●の能力。
かすり傷、悪くても打撲くらいですむだろう。
「じゃあ、な。●●。……いや、キャプテン。」
初めて、●●のことをキャプテンと呼んだ。
彼女のあの顔は、おれの心にぐさりと刺さった。
しかし、これしか方法がないと自分に言い聞かせ、おれは海軍たちのいる方へ進む。
できるだけ遠く、●●が見つからないように。
●●が、生きていられるように。
「リゲルがいたぞ!!」
「そっちだ!!」
海軍の兵隊の声が聞こえる。どうやら見つかったようだ。
「リゲル!!」
銃弾がおれの腕をかする。
その兵を、おれは峰打ちで気絶させる。
無駄な殺生はしたくない。
「おれは!!スター海賊団副船長リゲル!!」
大声で、そう叫び、覇王色の覇気を最大限出す。
兵隊たちはバッタバッタと倒れていき、俺の前には気絶した人々の山ができた。
それでも、これがいつまで持つか。
●●が逃げる時間を、確保できるか。
「……●●、愛してる。」
ついに彼女に伝えられなかった言葉を、彼女のいる方角へ向けて放つ。
「いつまでも、いつまでも、おれはあんたを愛してる。」


神様。もし、あなたがいるのなら、どうか、●●を幸せにしてやってください。
そして、どうか、クルーたちを天国へ導いてやってください。
おれが、死んだら地獄行きにしてください。どうか、どうか。
それで全て償えるなら、おれには安いものだから。
……もし、おれを赦してくれるというのなら、また、●●のもとにいかせてください。
また、一緒に生きれるように。
今度は、失わないように。
次は、伝えられるように。
「愛してる。」
次は、きっと。

2024/09/23 16:23

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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