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消失の帝王  〜とある女海賊の記録(ログ)〜

#16

最高地点、最高のライブ

ドンドンドン、ドンドンドン。
リズムよく足踏みの音が響く。
「ほら、見ててよ、ルナ。」
●●が、ローの顎を格子越しに撫でながらそう言う。
ルフィは足掻き疲れたのか、彼にも似合わず静かに浮いている。
「最高のライブの始まりだ!」
その笑顔とは裏腹に、彼女の手は、震えている。そのことにローは気づいた。




[水平線]


「こっち!!」
「あぁっ!
フラッ うっ……。」
ウタの導きに沿って、赤髪海賊団は進む。
しかし、足元が暗いうえ、ここまでリズムの歌が聞こえてくるため、みな、意識が飛びそうになっているのだ。
「シャンクス!?」
「わ、悪い……。ってかウタは大丈夫なのか?」
「私はちょっとなら大丈夫だよ!慣れてるもん!」
「これは慣れでどうにかなるもんなのか?」
自分の娘の人間離れした力に
シャンクスは呆れと感嘆の混じった声で言う。
しかし、そんなウタでさえ、進むにつれて足が動かなくなっていく。
「ちょっと待って、そろそろまずいかも。」
ウタが足を止めたその時には、ライブ会場の光が、もう向こうに見えていた。
ドンドンドン、ドンドンドン。会場の熱気がここまで伝わってくる。
「うた、ちょっとおれたち、むりだ。」
……赤髪海賊団は、全員リズムの歌で倒れかけていたが。
「あ、ごめん!!これ使って!」
それにようやく気づいたウタは、人数分の耳栓を投げる。
「これ、お母さんと私の歌だけ聞こえなくする、お母さんの発明品!
早くしたほうがいい!このままじゃ、[漢字]歌の世界[/漢字][ふりがな]ウタワールド[/ふりがな]に引き込まれる!」
「あ、ぁ!」
四皇には見えぬほど弱々しい声を上げたシャンクスは、急いでヘッドホンを付ける。
抜けていた体の力が、徐々に回復していくのがわかる。
「すまねぇ、ウタ。助かった。」
「ごめん、シャンクス。気付けなかったし……。」
「お前は悪くねぇだろ。おれは父親なのに、面目ねぇ……。」
ヘッドホンを付けたシャンクスが、顔を伏せる。
湿った空気が、二人の間を流れる。
「……って!!こんなことやってる暇ないよ!」
「たしかにそうだな!急ぐぞ!」
しかし、二人はさっさと顔を上げると会場の方へと走っていく。
それに待ってくれ、とクルーが叫ぶ。
「まだ何も聞いてねぇよ!」
「師匠って誰だ?ウタと、お頭とどんな関係なんだ?」
「どんな能力持ってんだ?いや、それより先に、能力者なのか?」
口々にクルーが言う。
ウタもシャンクスも、それには目を見合わせ、言ってなかったか/っけ?と首を傾げる。
……聞いてない、とクルーが叫んだのは当たり前のことであろう。
「……師匠は、オーロのクルーだ!おれがガキの頃からずっといたんだぜ!おれの技は師匠に育ててもらったからな。今でも師匠のことは尊敬してる!」
「お母さんは、私の大切な人だよ。私を守ってくれてるんだ!」
キラキラとした目で、彼女のことを語る船長と娘のように可愛がる少女を、クルーはなんとも言えぬ目で見つめていた。
[打消し]彼らの気持ちを代弁するのであれば、「聞いてないけど」。[/打消し]
「師匠の能力はな、コピコピの実だ。
簡単に言えば、どんな能力でも、どんなものでも、どんな技でも、コピーできる能力だな。」
「本当は、基礎体力とか、覇気とか、いろいろ制限があるらしいんだけど、お母さんにはそんなの関係ないの。だって、お母さんは覇気もシャンクスよりずーっと強いんだから!」
強すぎだろ。そんな声が、あちこちから聞こえる。
そんな能力は、確かにチート級である。しかも、覇気が自分たちの船長より上ときた。
「……どーやって勝てと?」
「わからん!でも、師匠は師匠だからな!話せばわかってくれるさ!」
その楽観的な考え方に、何度自分たちは振りまわされたことだろう。
その考え方は、大当たりするときと、大外れするときの差が激しい。
それこそあたったときは全てが思い通りに進んでいくのだが、
外れたときは、シャンクス自らの命をも危険にさらしてしまう。
「やるのは確定なのか?」
「もちろんだ!師匠に一般人を殺させてなるもんか!なぁ、ウタ?」
「そうだよ!」
ここまで二人の意見が合致しているとなれば、クルーたちはそれに従わざるをえない。
この二人は、船で絶対の力を持っているのだから。
「分かった。その師匠ってやつを止めればいいんだな?」
「そういうことだ!」
「行こう!急がないと手遅れになっちゃう。」
そう。その時まさに、●●による虐殺が始まろうとしていたのだった。



[水平線]


「よーし!!みんな!盛り上がってるか〜!!!!」
「「「「ワァァァァッ」」」」
リズムの一声で、会場が沸く。
「今日のライブ!!
私のソロパートはこの曲でおしまいだぜ!!
でも、まだまだ聞きたい欲張りっ子もいるんじゃないか!?」
「「「「ワァァ!」」」」
リズムちゃーん、という声、もっと聞きたいという声。
そんな声が、リズムの耳の中に吸い込まれていく。
「よーし、じゃあいっちょ行っちゃいますか!」
バーンという、指で撃つような仕草。
それは、この会場にいる、牢獄の中の二人に向けて放たれたものだった。
「どんな人でも、私の虜にしてやるぜ!」
……その牢獄の中の二人の仲間たち、総勢12人(麦わらの一味+ペンシャチベポ)は、どこにいるのかといえば。
「キャプテーン!」「どこですかー!」「キャプテーン!」
「ルフィ!」「どこだー!?」「っておい、マリモ頭、離れるんじゃねぇ!」
「あ゙?こっちじゃねぇのか?」「アーウ!!そっちは会場外だぞ!!」
会場の(もちろん仮想)周りをふらふらと歩いていた。
囚われている、自らの船長たちを探して。
「……なんかおかしいんだよな。」
他の仲間と逆方向に向かおうとするゾロが言う。
「なんだよ?」
「わかんねぇのか、四番。」
「あんだと!?」
四番という煽りにサンジが反応する。
しかし、次の瞬間、ゾロから放たれた一言で、硬直することとなる。
「覇気が使えねぇ、アイツの気配がねぇ。
どっかにいるはずなのに、こんな狭い場所でそれすらもわかんねぇ。」
ゾロの言葉に、ロビンも頷く。
「ましてやルフィはトラ男くんといるのよ?
そろそろトラ男くんが音を上げても良い頃合いよ。」
確かに、と全員が納得するのを見て、ゾロは目をつむる。
「嫌な予感がする。」
ゾロの一言に、仲間たちはただただ、硬直するしかなかった。

『[斜体]私ノ世界 おいで おいで
コワイコワイ リアルから 逃げといで
私は君の味方さ
どんなやつにでも 歓迎を!
反逆するやつには 制裁を?
怖いと思ったら逆らわないで?
私が好きなら 怒りに触れないで?
君たちには イイコでいてほしいの
私は 君たちを殺したくはないからね?[/斜体]』
そうこうしているうちに、リズムの恐ろしい歌が、会場を包みこんでいた。
その歌に合わせ、皆、狂ったように踊りだす。
リズムも、狂ったように、歩みだす。
そしてリズムは、どこからか取り出したキノコを口に放り込む。
そのキノコは、誰も見たことのないものだったと、後に人々は語る。
数分後。リズムの笑顔は、強い恐怖を感じる笑みへと変わり、
彼女の笑い声も変わっていった。
ハハッ……から、アッヒャッヒャッへと。
「アッヒャッヒャッヒャ!!たーのしくなってきたぁ!!
行くぞ、お前らー!!私と何時までも踊り明かそうぜ!!」
彼女は、笑い、笑い、また歌を歌いだす。
『[斜体]アッヒャッヒャッヒャ!!
ホラホラ笑え!
アッヒャッヒャッヒャ!!
愉快だ愉快!
アッヒャッヒャッヒャ!!
こんな愉快なことは初めてだ![/斜体]』
腹を抱え、笑い出す。
その後ろには、真っ白い宮殿が立ち、少女の周りを囲っていく。
それに従い、彼女の髪の色は、黒と白が混ざって、どんどん灰色へと変化していく。
「これが私の……!!」
少女の笑いは、おもちゃを壊すのが楽しくてたまらないと言っている、子どものようだった。

2024/06/29 06:10

ミコト
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