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消失の帝王  〜とある女海賊の記録(ログ)〜

#14

ライブ開始! 行動開始!

青年たちを抱きしめる手を緩め、私はRoomを展開する。
「おいで!ルナ!ヘリオス!」
特等席へ案内するよ!なんて、調子の良いことを言っちゃって。
二人を一気にふわふわのソファのついた、VIP席へとワープさせる。
「わわっ!?」「なんだ!?」
二人は驚き、ライブ会場も騒然とする。
そりゃあそうだ。何もなかったその場所に、いきなりVIP席ができたのだから。
最も、ステージに近い場所に。
『よーし!!ウタはいないけど、私のソロで午後ライブ始めようぜ!!』
私はそっとステージに上り、ガンっとステージを踏みつける。
……後から考えれば、私の行動はどこかおかしかった。
でも、私はそれに気付けなかった。
誰だ、という声が、会場中から聞こえる。
その声に、私は笑って服を脱ぐ。
下から、私とウタのお揃いのパーカーがでてきた。
色違いで、袖についているマークも違う。しかし背中には、【UTA&REISM】と描かれている、世界に一つのパーカーだ。
『さぁ、海賊も、海軍も、みんなもっと楽しんでいこう!』



[斜体]今日もワタシはたった一人
一人で夜をさまよい歩く
権力? 財力? 武力?
夜の闇では 全てが無力!
だったらそんなのいらないじゃん?
だから一人のワタシが創った世界へ
みんな みんな ほらこっちおいで
楽しい 楽しい この[漢字]妖精の世界[/漢字][ふりがな]アールヴヘイム[/ふりがな]へ
ほら ほら だれも 私の前では善者
悪者なんていない 権力者もない
世界はすべて みんなのものだもんね
みんなの大切なもの もう 失わないために……。
だから こっちおいで Ah………Oh……。[/斜体]』

その歌とともに、観客が一人、また一人と倒れていく。
ウタウタの能力だ。うまく使えば、世界だって滅ぼせる力。
歌の力。それは、覇気をも超えてしまう。
いつの間にか、ルナもヘリオスも、眠っている。
これでもう、失わなくてすむ。もう、ワタシの世界に閉じ込めてしまえば、もう。
『私の世界へみんなおいで!』
息が切れるほどまで、歌う。
即興の曲。作曲なんて、作詞なんて、私にはできないから、ウタに比べればずっとすっとんきょうで、変な曲。
でも、だから!だから、私の気持ちを全部込めて、変でいいから歌う。
その歌を聞いた人々が、バッタバッタと倒れていく。
「あーあ、みんな寝ちゃった〜。」
もう、失わないため。もう、渡さないため。
「ごめんね?みんな。」
巻き込んじゃってごめん。でもね。
代わりにみんなも連れて行ってあげよう。
「私の、新世界へ!」
舌を出し、指を鳴らす。
「ら〜らら〜ららら〜。」
子守唄を一曲。シャンクスに、ウタに、歌った、曲。
あ、そうだ。シャンクスやウタも閉じ込めちゃお。
そうしたら、みんな、みんな、私が守れるもんね!
「さぁ、みんなおいで!
でも、私に逆らうやつは、私が[漢字]音[/漢字][ふりがな]リズム[/ふりがな]にしちゃうぜ!
いたずらも程々にな!」
なんて、現実も、[漢字]仮想世界[/漢字][ふりがな]ウタウタの世界[/ふりがな]も、私のものなのに。
「よーし、じゃあ、二曲目いくぜ!!」
誰の歓声も聞こえない会場で、私は唯、笑っていた。


[水平線]


―みんな、私の世界においでよ!―
師匠の、その声が、未来から聞こえた。
プチン。
その瞬間、おれは、クルーには何も言わず、映像電伝虫の電源を切る。
「あ、何すんだお頭!?」「せっかくウタの初ライブだってのに!」
「いくらお頭でもやっていいことと悪いことが……。」
グダグダとしたクルーの言葉は耳に入らない。
電源を切った映像電伝虫を抱え、おれは考えを巡らす。
今見えた未来。それは、師匠がウタの能力を乱用する未来。
「馬鹿な。」
師匠は思慮深い。そんなことを策なしにやる人じゃない。
しかも、今だ。このライブでやる必要はない。師匠の能力は、覇気の届くところなら全てに通用する。
自分が寝てしまえば終わってしまうリスキーなウタの能力よりも、寝ようが寝まいが関係ない、時間も距離も、何もかも意味をなさない師匠の能力のほうが、ずっと安全じゃないか。
「……トット、ムジカ。」
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
歌の魔王。全てを破壊し尽くす魔王の存在が、おれの思考を揺らす。
ありえない。師匠はそんな事しない。
したら、一般人にだって被害が出る。師匠が、そんな事___。
「お頭?」「何かあったのか?」
おれのおかしさに気づいたのか、ベックとホンゴウが、俺に話しかける。
でも、考え事に夢中なおれは、うるさいと、その手を振り払ってしまう。
クルーの顔は、どんどん心配に染まっていく。
反対におれの顔は、不安と焦燥が色濃くでているのが、自分でもわかってしまう。
「……本当に何かあったのか?」「なにか見えたのか?」
何もあるわけ無いだろ。その言葉が言えないのがきつい。
この顔じゃぁ、どう言おうたって誤魔化しきれない。
かと言って、真実を言えばいいわけじゃない。
おれは、師匠の過去を知らない。そんなおれが、師匠のことを話す権利はない。
「……ナイトランドに行くぞ。面舵一杯!!」
いきなりのその一言で、船の中は大混乱に陥る。
「お、お頭!?気が狂ったか!?あそこは、死の海って呼ばれてんだぞ!?」
「!?!?まず、行く利はあんのか!?」
ナイトランドは、カームベルトのど真ん中に位置する。
しかも浮島で、あちらこちらを漂っている不思議な島だ。
ずっと夜で見渡しが悪い上、多くの岩石が船底を狙っている。
ついた異名が、【[漢字]死の海[/漢字][ふりがな]デス・シー・ロード[/ふりがな]】。
確かに。
おれは気が狂っているのかも知れない。
行く利より失う代償の方が大きいかも知れない。
けれど、おれには行かなくちゃいけない理由がある。
大切な人が、おれを待ってる。
一個だけ、通り抜けられる道もある。一縷の望みは、まだ切れてない。
「おれが案内する。一刻を争うんだ。





……信じろと言っても無理か。」
普段は舵を任せれば色々やらかすのがおれ。
[漢字]航路[/漢字][ふりがな]みち[/ふりがな]を任せれば危険な方へ行くのがおれ。
でも今日ばかりは、信じてほしい。
行き方は、一個だけ。
世界を守るためにも、師匠に罪を犯させないためにも、これしかないんだ。
「ナイトランドは、今日だけ、ライブのために風の吹く一直線の道ができているはずだ。海王類も攻撃してきやしないさ。海王類さえを力でねじ伏せる覇王のライブなんだぞ?
さすがの海王類も恐ろしくて出てこれやしないだろ。」
いつものように陽気に、でも、有無を言わせないように、おれは覇王色混じりの声で言う。
これで説得できなかったら、おれは、ボートででもナイトランドに向かう、そういう断固とした覚悟を伝える。
「それにこのままだと、ウタもルフィも危ない。」
師匠がなにか企んでいるとしたら………


考えられるのは一つだけ。







【大切な人】をもう二度とあの世へ行かせないこと。
それなら、仮想空間にこの世の全員を全員を放り込むことも納得できる。
そして、もう二度と現実世界に戻さないために、会場で殺戮を繰り広げるはずだ。
全世界で、殺戮を始めるはずだ。
戻る身体があるんじゃあ、ずっと閉じ込めておくことはできないから。
仮想の生を、生きさせるため、なんだろうが、おれには納得できない。
……だったら、止めなくちゃ。おれが行って、止めなくちゃ。
おれだってもう、失いたくねェ。ルフィも、ウタも、誰も!!
もちろん……師匠も。
「行くぞ。夜の島、ナイトランド!!」

2024/06/29 06:05

ミコト
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