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消失の帝王  〜とある女海賊の記録(ログ)〜

#8

ユートピア 私が望むもの

「わぁっ!!スターヌウト号だぁ!!」
―どうだい?気に入ったか?―
「気に入ったよ!!本物そっくり!!」
何百年も前になくしたはずの自らの船にきゃっきゃと騒ぐ少女に、違うよ、と破壊の王は言う。
―これは本物なんだよ。―
「え?じゃぁ、この中にみんないるの?」
―もちろん。ルナくんも、ヘリオスくんも、アステルくんも、リゲルくんも。―
「嘘!?」
そう言って、少女が船へと駆けていく。
ダンッと、船の板を踏みつけ、ガチャッと船室への扉を開ける。
「あ、いたいた、キャップ〜!!」
「何やってたんだよ、遅いぞ。」
「飯冷めるじゃねぇか!」
「また探検か?程々にしておけよ?」
そこは、食堂。
少女が、飯をいち早く食べれるようにとリゲルが計画してくれた場所。
そこに、仲間が、昔の、大切な仲間が、いた。
「う………うあああああ!!!ルナ!!ヘリオス!!アステル!!アンタレス!!リゲル!!」
少女は知っている。
これは現実じゃない。王が作った、幻覚だ。
でも、でもこれが、万に一つの確率で、これが本当だったなら。
本当だったなら………。
「な、なんだよ。船長。大丈夫か?」
「おーい!!大丈夫っすか〜?」
「せんちょ〜!!」
「せんちょー!!」
「落ち着けって、キャップ。」
「ゆっくり息吸え、浅く吐け。」
「おーおー。」
自分は今まで、なんて悪夢を見ていたのだろう?


[水平線]


なにか、違う。
私はそう、思うようになっていた。
海賊団復活から2ヶ月ほど立って。けれど、その違和感は消えなくて。
「船長!これどうします?」
「キャップ。どうしたらいいと思う?」
「キャプテン!」
違うんだ。
あいつらはこんな事言わない、だって、あいつらは……。
『あんたに進路決めさせるといいことないだろ。』
『ちょっとくらい我慢しろって。大人だろ?』
『何やってんだ、●●。』

「[小文字]そうじゃないんだ……。[/小文字]」
そうじゃないんだ。
あいつらは……あいつらは……。
やっぱりこれは、悪夢だ。
もう受け取れるはずのない愛を受け取って。
もう聞こえるはずのない声を聞いて。
悪夢以外の何物でもない。
わかってる。わかってるんだ。
だから、だから苦しいんだ。
―ほら、本当だったろう?―
違う、
―誤魔化さないで―
違う、
―強がらないで―
違う、
―迷わないで―
違う、
―ワタシに身を任せて―


[太字][大文字]違う!!!!!!!![/大文字][/太字]


こんなの、”あいつら“じゃない!!!!!
そうじゃない!!
こんなの、みんなじゃない……。
みんなはもっと、私に冷たくて、いつでもどこでも厳しくて、でも、でも!!!
私を、対等に見ていてくれたはずだった。
「こんなの、違う!!私は、こんなの、望んでない……!!」
そうじゃないんだ。私が望んでいたのは、望んでいたのは……。

〈師匠!一緒に遊ぼう!〉
〈神避教えてよ!!〉
〈すごいだろ!〉


「シャンクス……?バギー……?」
少女の頭の片隅にいた少年たちの声が、大きくなっていく。





[大文字][太字]『まだ、独りじゃないだろう?』[/太字][/大文字]
ロジャーの声がする。




あぁ、そうか。


私は。わかってる。もう、みんなは帰ってこない。
ロジャーだって、もう。
でも、でも。私には。
まだ、まだ、まだ!!あのときとは違う!!
まだ!!大切な可愛い弟子がいる!

スターヌウト号が消えていく。
それに伴ってどんどんあたりも暗くなっていく。
「欺きと洗脳はお呼びじゃないよ。」
姿形が崩れていく仲間たち。私へ向けられる罵倒の声。そして、助けを乞う目。
やっぱり違う。あいつらは、こんなんじゃない。
こんなことで、助けを乞うようなやつらじゃない。
これは、私が創った、幻覚。
〈理想のあいつら〉。でも、私がほしいのは、〈本物〉だけ。
私は両手で彼らの手を払う。
ザァっと彼らは砂になり、消えていった。

後ろの方から気配がする。
―君は、そう思うんだね。……でも、考えてみなよ。私は悪いことはしてないだろう?―
王の甘ったるい声が直に私の脳を揺らす。
―ねぇ、教えてくれるかな。なにがだめなんだい?―
―この場は、君の思い通りの楽園のはずだろう?―
心臓を撫でるようにゆっくりとした、優しい声色。
それとは逆の、厳しい表情。
「私は、思い通りじゃなくていい。」
雨のように降り注ぐその声を、私は一蹴する。
「なんでも思い通りだったら、面白くないじゃん?」
私は、王の方を振り向いて言った。
ニコっと笑ったその顔には、少しの悲しみが混じっているように、自分でも思った。
「この[漢字]時代[/漢字][ふりがな]せかい[/ふりがな]はさ、混乱した海賊の[漢字]時代[/漢字][ふりがな]せかい[/ふりがな]。
この世界で生きてる奴らを、思い通りにするなんて、
できるはずないだろ?」
だから。私は前を向き、続ける。
「これでいいんだよ。私が、変える必要なんてない。
この時代を終わらせるのは、[漢字]新世代[/漢字][ふりがな]ルーキー[/ふりがな]だよ。」
だからもう、私がやることはない。
「じゃあな。破滅の王様。」
私の歩き出した道は、暗く、先が見えない。
けれど、これで良いのだ。
私は、●●は、誰も行ったことのない道を行く者なのだから。

2025/07/28 21:46

ミコト
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