「イテテ……。あれ?おねえ、ちゃん?」
気がついたとき、宰相の姿はなかった。気配がない、騒がしい声も聞こえない。
ボディにしがみついていたから、振り落とされてしまったか。
いや、あの人ならそんなヘマはするまい。
「……あ、ヤンマ!」
そうであった。ヤンマが今核の中に。ギラはコックピットから飛び降りた。
外は火山の火口内というのに建物と平穏な緑が混じり合った里山のような風景をしていた。
「うわぁ、すごい……。」
なんと雄大な景色だろう。チキューの中でも、これに匹敵する景色はトウフの奥地くらいしかあるまい。
それが海の中に。しかも火山の火口の中に。信じられないことだった。
そう景色に夢中になっていると、ぐらりと足元が揺れた。
「おっとと、ごめん、みんな。」
動きは鈍いとは言え、活動中なので気をつけないと振り落とされる。
振り落とされた場合、50m下に真っ逆さまだ。
回復力と速度が常人離れしているギラでも流石に堪える。
「ヤンマー!今出すからちょっと待ってて!」
分厚い核は、まだ外側も熱い。侵入口を広げ、中に入り込む。
「あっつ!?」
思わず声が出た。溶ける、焼けるまではいかずとも温度は70度を超しているだろうか。
この中に放り込まれたヤンマの安否がますます気になる。
まさか死んでやいないだろうか。不安にかられ、急いで眼の前にある扉に手をかける。
緊急冷却装置が作動したときにだけ出てくるプログラムらしいがギラにはよくわからない。
ドアノブはまだ熱いものの、金属の扉自体は嫌に冷えていた。
そんなことに構うものかと、ドアノブを軽くひねる。
「あ、バカ、スカポンタヌキ!!」
ドッパーンッ!
おなじみのおかしな悪口が聞こえたと同時に、水が一気に部屋から溢れ出した。
「え、あ、え!?」
反応するまでもなく流されて、押されて、最終的に開いている侵入口から外へと落とされる。
「うわわっ!?」
急いで着地体制を、と思ったその時、上からヤンマが降ってきた。
全てがスローモーションになり、思考がフル回転する。
ヤンマはこの高さから落ちれば必ず死ぬ。自分は多分生き延びれる。
落下速度から見て、シュゴッドたちを呼んでも間に合わない。
その間0.001秒。ギラのたどり着いた答えは至極単純であった。
「ヤンマ!!」
「……っ!?」
ぐっとヤンマを引き付け、彼の足を抱え込み、顎を引き、背中から地面にダイブする。
体中から嫌な音。あぁ、背骨折れたな、と直感する。
ヤンマを抱えていた両手両足を広げ、ふぅ、と一息をつく。
一周回って痛いと言うよりか熱い。体中燃えるようだ。
それでも死なないのは回復力が異様に高いからか。
もう骨の再生が始まっているようだ。
「いっってぇ……。ってか色々何やってんだこのタコメンチ!!!」
頭までずぶ濡れのヤンマがこちらに詰め寄ってくる。
いつも通り顔が怖い。
「あ、はは、ごめん。」
声を出すのも苦しいが、それもじきに収まるだろう。
これくらいなら3分もあれば完全に治ると予想した。
「おい、無理に喋んな。骨折れてんだろ。……ったく、死ぬ気かテメー!」
「しなな、い。わかっ……て、るか、ら、やった。」
「こ ン のォ……ヒメノとラクレスに一回正座させられてこいッ!!それでも一国のテッペンか!」
怒っているように聞こえるその声は、実は立派な心配の声だ。知っている。
彼は不器用だから、そうするしか表現の仕方がないのだろう。
「ご、めん。」
「勝手に死のうとすんなよ。俺の心臓、穴空くぞ。」
「それ、はこまる。……ぼくも、ひめのも。」
そりゃそーだと彼は苦笑する。ギラも笑う。
普段より深く、青い空が、見えている。
「ヤンマの、うわぎの、いろ。ンコソパのいろ、だぁ……。」
「ん?あぁ、空か。」
少しずつ体の骨が合体していく感覚がある。
大丈夫。すぐ立てる。すぐに戦いに戻れる。
地震は収まった。リニエッラ海底火山は一時停止した。
つまりまだ、戦いは終わっていない。
ようやくくっついてきた手を動かし、オージャカリバーを手に取ろうとする。
「やめとけ、タコメンチ。」
折れている手に触れるわけでないところが優しいと思う。
見た目的に力でなんとかしそうなのに。彼の手の中に収まった自分の剣を見て思った。
「もう、すぐ、ぜんぶなおる。」
「知ってる。だから止めてんだよ。死に急ぐな。
後、あいつらの準備のこともある。まだ突っ込む時期じゃねぇ。」
叡智の王。その名はやはり彼以外にふさわしくないとギラは思う。
自分や他人、集団に対する状況判断能力が高い。きっと、誰よりも。
「国の痛みは、全部飲み込むのが王サマ、だろ?
戦いに逃げんな。急ぐ気持ちはわかるが、一気に飲むと死ぬぞ。」
あぁ、本当に。ギラは彼のことを信頼してやめない。やめられない。
彼が自分の相棒であることに、感謝することも多くある。
「骨くっついたら言え。そっからゆっくり動くか。」
かちかちと骨がゆっくりはまり始めている。
あと1分あれば復活できるよとギラが言えばヤンマはものすごい顔した。
そんなに怒らずとも良いのに。
「……姉ちゃん、どこ行ったかわかるか?」
「気づいたらいなかった。……わからないや。」
「なるほどなァ、姉ちゃんらしい。」
ヤンマは静かに前を向いていた。
それが様になると思うのは自分だけだろうか。
ギラはゆっくりと起き上がる。骨はほとんど復活していた。
「お、おい、もういいのかよ?」
「うん。多分大方くっついてる。戦えるかはわからないけど。」
そう、戦いは終わっていない。ギラたちは進まなければならない。
王は、後退を許されない。王の後退は、王の交代と同義だ。
「行こう、ヤンマ。全部、救うよ!」
「変わんねぇな、お前も。」
リニエッラ海底火山の中には、雄大な自然がある。
その自然が焼き尽くされたとき、作られるのは[漢字]灼熱地獄[/漢字][ふりがな]INFERNO[/ふりがな]か、または新たな世界か。
知る由もない、知ることのない、チキューの未来のお話。
気がついたとき、宰相の姿はなかった。気配がない、騒がしい声も聞こえない。
ボディにしがみついていたから、振り落とされてしまったか。
いや、あの人ならそんなヘマはするまい。
「……あ、ヤンマ!」
そうであった。ヤンマが今核の中に。ギラはコックピットから飛び降りた。
外は火山の火口内というのに建物と平穏な緑が混じり合った里山のような風景をしていた。
「うわぁ、すごい……。」
なんと雄大な景色だろう。チキューの中でも、これに匹敵する景色はトウフの奥地くらいしかあるまい。
それが海の中に。しかも火山の火口の中に。信じられないことだった。
そう景色に夢中になっていると、ぐらりと足元が揺れた。
「おっとと、ごめん、みんな。」
動きは鈍いとは言え、活動中なので気をつけないと振り落とされる。
振り落とされた場合、50m下に真っ逆さまだ。
回復力と速度が常人離れしているギラでも流石に堪える。
「ヤンマー!今出すからちょっと待ってて!」
分厚い核は、まだ外側も熱い。侵入口を広げ、中に入り込む。
「あっつ!?」
思わず声が出た。溶ける、焼けるまではいかずとも温度は70度を超しているだろうか。
この中に放り込まれたヤンマの安否がますます気になる。
まさか死んでやいないだろうか。不安にかられ、急いで眼の前にある扉に手をかける。
緊急冷却装置が作動したときにだけ出てくるプログラムらしいがギラにはよくわからない。
ドアノブはまだ熱いものの、金属の扉自体は嫌に冷えていた。
そんなことに構うものかと、ドアノブを軽くひねる。
「あ、バカ、スカポンタヌキ!!」
ドッパーンッ!
おなじみのおかしな悪口が聞こえたと同時に、水が一気に部屋から溢れ出した。
「え、あ、え!?」
反応するまでもなく流されて、押されて、最終的に開いている侵入口から外へと落とされる。
「うわわっ!?」
急いで着地体制を、と思ったその時、上からヤンマが降ってきた。
全てがスローモーションになり、思考がフル回転する。
ヤンマはこの高さから落ちれば必ず死ぬ。自分は多分生き延びれる。
落下速度から見て、シュゴッドたちを呼んでも間に合わない。
その間0.001秒。ギラのたどり着いた答えは至極単純であった。
「ヤンマ!!」
「……っ!?」
ぐっとヤンマを引き付け、彼の足を抱え込み、顎を引き、背中から地面にダイブする。
体中から嫌な音。あぁ、背骨折れたな、と直感する。
ヤンマを抱えていた両手両足を広げ、ふぅ、と一息をつく。
一周回って痛いと言うよりか熱い。体中燃えるようだ。
それでも死なないのは回復力が異様に高いからか。
もう骨の再生が始まっているようだ。
「いっってぇ……。ってか色々何やってんだこのタコメンチ!!!」
頭までずぶ濡れのヤンマがこちらに詰め寄ってくる。
いつも通り顔が怖い。
「あ、はは、ごめん。」
声を出すのも苦しいが、それもじきに収まるだろう。
これくらいなら3分もあれば完全に治ると予想した。
「おい、無理に喋んな。骨折れてんだろ。……ったく、死ぬ気かテメー!」
「しなな、い。わかっ……て、るか、ら、やった。」
「こ ン のォ……ヒメノとラクレスに一回正座させられてこいッ!!それでも一国のテッペンか!」
怒っているように聞こえるその声は、実は立派な心配の声だ。知っている。
彼は不器用だから、そうするしか表現の仕方がないのだろう。
「ご、めん。」
「勝手に死のうとすんなよ。俺の心臓、穴空くぞ。」
「それ、はこまる。……ぼくも、ひめのも。」
そりゃそーだと彼は苦笑する。ギラも笑う。
普段より深く、青い空が、見えている。
「ヤンマの、うわぎの、いろ。ンコソパのいろ、だぁ……。」
「ん?あぁ、空か。」
少しずつ体の骨が合体していく感覚がある。
大丈夫。すぐ立てる。すぐに戦いに戻れる。
地震は収まった。リニエッラ海底火山は一時停止した。
つまりまだ、戦いは終わっていない。
ようやくくっついてきた手を動かし、オージャカリバーを手に取ろうとする。
「やめとけ、タコメンチ。」
折れている手に触れるわけでないところが優しいと思う。
見た目的に力でなんとかしそうなのに。彼の手の中に収まった自分の剣を見て思った。
「もう、すぐ、ぜんぶなおる。」
「知ってる。だから止めてんだよ。死に急ぐな。
後、あいつらの準備のこともある。まだ突っ込む時期じゃねぇ。」
叡智の王。その名はやはり彼以外にふさわしくないとギラは思う。
自分や他人、集団に対する状況判断能力が高い。きっと、誰よりも。
「国の痛みは、全部飲み込むのが王サマ、だろ?
戦いに逃げんな。急ぐ気持ちはわかるが、一気に飲むと死ぬぞ。」
あぁ、本当に。ギラは彼のことを信頼してやめない。やめられない。
彼が自分の相棒であることに、感謝することも多くある。
「骨くっついたら言え。そっからゆっくり動くか。」
かちかちと骨がゆっくりはまり始めている。
あと1分あれば復活できるよとギラが言えばヤンマはものすごい顔した。
そんなに怒らずとも良いのに。
「……姉ちゃん、どこ行ったかわかるか?」
「気づいたらいなかった。……わからないや。」
「なるほどなァ、姉ちゃんらしい。」
ヤンマは静かに前を向いていた。
それが様になると思うのは自分だけだろうか。
ギラはゆっくりと起き上がる。骨はほとんど復活していた。
「お、おい、もういいのかよ?」
「うん。多分大方くっついてる。戦えるかはわからないけど。」
そう、戦いは終わっていない。ギラたちは進まなければならない。
王は、後退を許されない。王の後退は、王の交代と同義だ。
「行こう、ヤンマ。全部、救うよ!」
「変わんねぇな、お前も。」
リニエッラ海底火山の中には、雄大な自然がある。
その自然が焼き尽くされたとき、作られるのは[漢字]灼熱地獄[/漢字][ふりがな]INFERNO[/ふりがな]か、または新たな世界か。
知る由もない、知ることのない、チキューの未来のお話。
- 1.始まり
- 2.ブレスレット
- 3.ロゼアという国
- 4.ゴッドホッパーの反乱?
- 5.ラクレスの隠し事?
- 6.悲劇の始まり
- 7.行方知れず
- 8.ンコソパ国王の過去 【前編】
- 9.ンコソパ国王の過去 【後編】
- 10.マフィアを動かせ
- 11.ハッキング
- 12.マフィアとシエボル?
- 13.ロゼアへの道
- 14.宝石の国
- 15.戦慄のシエボル
- 16.力を以って
- 17.宰相様と国王サマ
- 18.邪智暴虐の
- 19.シスコン総長と呑気な女宰相
- 20.お姉ちゃん
- 21.二人のお兄ちゃん
- 22.スズメのご飯はチキュー1 byアオハ
- 23.スズメとアオハ【前編】
- 24.スズメとアオハ 【中編】
- 25.スズメとアオハ 【後編】
- 26.選ぶ結末、選ぶ未来
- 27.子守唄
- 28.眠る宰相、明けのカラス
- 29.宰相の異変
- 30.終わりの始まり、
- 31.目覚まし時計
- 32.生きる意味ってなんですか
- 33.戦闘民族(?)
- 34.太古の守護神
- 35.王と王妃
- 36.フィナーレ開幕
- 37.宰相の遺産
- 38.ラポネ・リバナラクという男
- 39.宰相たちの墓場【前編】
- 40.宰相たちの墓場【中編】
- 41.宰相たちの墓場【中編その2】
- 42.宰相の墓場 【後編】
- 43.冷却、そして覚悟
- 44.物語の終わりへ結末へ。
- 45.アオハとシエボル【前編】
- 46.アオハとシエボル【中編】
- 47.落下、そして墜落