圧倒的な強者だった。
「ははっ、そう、その顔だシエボル!」
サクトはその表情にいつの間にか恋焦がれていた。
恋い焦がれていた、というより、中毒した、のほうが多分正しい。
「ねぇ、黙れよ。ヤンマ傷つけといて、笑うんじゃねぇ。言葉の一つ、発するんじゃねぇ。」
「手厳しいなぁ。」
全てに興奮する。サクトは今まで感じたことのない高揚感に満ちていた。
あぁ、なんて、なんて最高の舞台が整ったのだろう!
この世界はやはりロゼアに味方するようだ。
「なぁ、シエボル。違和感感じねぇか?」
「はぁ!?」
見せてみろよ、シエボル。
「俺たちは、追い詰められちゃいねぇ。
後がないのは、お前らのほうだ。」
視界が暗転、ブラックアウトする。
なにか毒でも盛られたか、という思考にストップを掛け、周りを見渡す。
耐性があるのだ。毒ならば手遅れになる前に分かっただろう。
「なんだ、これ。」
ぐ、体に力が入る。意識もせず、体が動き出す。
「勝手に動くのか……面倒な。」
洗脳の類だろうか。どこへ行くかもわからぬまま、体の赴くままに歩く。
さてどこにつくんだか、と前を向いていると、小さく小さく、何かが見えた。
「……あぁ、マジか。」
自分だった。雨に濡れて、ヤンマを抱えた自分だった。
小さくて、あったかいその命を、守ることしか考えられなかったときの自分だ。
「小さっ……。」
よく生きれたなぁ、と自分でも思う。
ンコソパは腕っぷしが物を言う。
小さな自分。それももっと小さな子どもをつれた自分。
住んでいたのは治安が最も良くない13番ストリート。
何処かで死んでいてもおかしくなかった。
いや、死にたいとすら思った。
『この子、育ててあげてよ。で、私を殺して。』
あぁ、やっぱりお前はそういうんだろう。だってお前は私だから。
ヤンマをおいて死ねなくて、でも飢えと怪我に苦しんで。孤独と寒さに耐えかねて。
手の中にある小さな命だけは守りたくて、こんな思いさせたくなくて。
「……死ぬなよ、生きろよ。諦めんなよ。」
口から出てくる言の葉は、あの時自分がかけてほしかった言葉には程遠い。
「ヤンマは強い。お前も強い。
なんでわかるって?お前は私だから。ヤンマは私の弟だから。
一生スラムでくすぶってるつもりか?総長ぐらい目指してみろよ。」
喧嘩だけは強いんだろ、知ってるよ。
設計とかも好きだけど、歴史も確かに面白いけど、それはラクレスに出会ってからの話。
やってみろよ。最初の一歩が出ないだけ。一歩が出たらお前はもう、走り出せる。
「わかったようにいわないで!総長なんて……。」
こんな汚れた手じゃ。そう言いたかったはずであるが、言葉はついぞ音にならなかった。
「今の王だって手は汚れてる。お前の国じゃ、汚れてない手のほうが珍しいだろ。
いつの日か、お前の手の中にいる宝物も、きっと穢れる。」
「ヤンマは!!!」
汚れない。そんな言葉、今のお前に言えない。
すべて見てきた。酸いも辛いも舐め尽くした年齢が幼すぎた。
否定できまい。だって、物心ついたら手が汚れていたなんて、お前が経験したことなのだから。
「ヤンマは……、、ヤンマ……。」
「その子を救いたいのなら、お前が力を持つしかねぇぞ。」
力は上下をぶち壊せる、その時期のンコソパじゃあ唯一の手段。
知識は後々最強となるが、今は力。すべてを飲み込み平らげる、欲と力。
「お前は力を、そいつは知恵を。司りゃいい。スラムで生きのびるには有り余るくらいの才能だ。」
その才が、二人にはある。
そう。全ては行動、思考は第二の宰相の才。
全ては思考、最善を見つけて行動する王の才が。
「それとも、力を持つのは怖いか?」
断れまい。生き延びるすべを提示されては。
今となっては忌々しくても、あの時には唯一の希望の光なのだから。
あの男はつくづく性格が悪い。……自分の傷つけ方をわかっている。
もっとかけられる言葉があるはずだ。
自分が幸せになるための言葉があるはずだ。
でも、自分が知っていることはこれしかないから、これを伝えるしかない。
「……大丈夫。そう、する!」
あぁ、やっぱりそう言うのか。お前は、私。私は、お前だもんな……。
その言葉を境に、意識がふっと途切れた。
「ははっ、そう、その顔だシエボル!」
サクトはその表情にいつの間にか恋焦がれていた。
恋い焦がれていた、というより、中毒した、のほうが多分正しい。
「ねぇ、黙れよ。ヤンマ傷つけといて、笑うんじゃねぇ。言葉の一つ、発するんじゃねぇ。」
「手厳しいなぁ。」
全てに興奮する。サクトは今まで感じたことのない高揚感に満ちていた。
あぁ、なんて、なんて最高の舞台が整ったのだろう!
この世界はやはりロゼアに味方するようだ。
「なぁ、シエボル。違和感感じねぇか?」
「はぁ!?」
見せてみろよ、シエボル。
「俺たちは、追い詰められちゃいねぇ。
後がないのは、お前らのほうだ。」
視界が暗転、ブラックアウトする。
なにか毒でも盛られたか、という思考にストップを掛け、周りを見渡す。
耐性があるのだ。毒ならば手遅れになる前に分かっただろう。
「なんだ、これ。」
ぐ、体に力が入る。意識もせず、体が動き出す。
「勝手に動くのか……面倒な。」
洗脳の類だろうか。どこへ行くかもわからぬまま、体の赴くままに歩く。
さてどこにつくんだか、と前を向いていると、小さく小さく、何かが見えた。
「……あぁ、マジか。」
自分だった。雨に濡れて、ヤンマを抱えた自分だった。
小さくて、あったかいその命を、守ることしか考えられなかったときの自分だ。
「小さっ……。」
よく生きれたなぁ、と自分でも思う。
ンコソパは腕っぷしが物を言う。
小さな自分。それももっと小さな子どもをつれた自分。
住んでいたのは治安が最も良くない13番ストリート。
何処かで死んでいてもおかしくなかった。
いや、死にたいとすら思った。
『この子、育ててあげてよ。で、私を殺して。』
あぁ、やっぱりお前はそういうんだろう。だってお前は私だから。
ヤンマをおいて死ねなくて、でも飢えと怪我に苦しんで。孤独と寒さに耐えかねて。
手の中にある小さな命だけは守りたくて、こんな思いさせたくなくて。
「……死ぬなよ、生きろよ。諦めんなよ。」
口から出てくる言の葉は、あの時自分がかけてほしかった言葉には程遠い。
「ヤンマは強い。お前も強い。
なんでわかるって?お前は私だから。ヤンマは私の弟だから。
一生スラムでくすぶってるつもりか?総長ぐらい目指してみろよ。」
喧嘩だけは強いんだろ、知ってるよ。
設計とかも好きだけど、歴史も確かに面白いけど、それはラクレスに出会ってからの話。
やってみろよ。最初の一歩が出ないだけ。一歩が出たらお前はもう、走り出せる。
「わかったようにいわないで!総長なんて……。」
こんな汚れた手じゃ。そう言いたかったはずであるが、言葉はついぞ音にならなかった。
「今の王だって手は汚れてる。お前の国じゃ、汚れてない手のほうが珍しいだろ。
いつの日か、お前の手の中にいる宝物も、きっと穢れる。」
「ヤンマは!!!」
汚れない。そんな言葉、今のお前に言えない。
すべて見てきた。酸いも辛いも舐め尽くした年齢が幼すぎた。
否定できまい。だって、物心ついたら手が汚れていたなんて、お前が経験したことなのだから。
「ヤンマは……、、ヤンマ……。」
「その子を救いたいのなら、お前が力を持つしかねぇぞ。」
力は上下をぶち壊せる、その時期のンコソパじゃあ唯一の手段。
知識は後々最強となるが、今は力。すべてを飲み込み平らげる、欲と力。
「お前は力を、そいつは知恵を。司りゃいい。スラムで生きのびるには有り余るくらいの才能だ。」
その才が、二人にはある。
そう。全ては行動、思考は第二の宰相の才。
全ては思考、最善を見つけて行動する王の才が。
「それとも、力を持つのは怖いか?」
断れまい。生き延びるすべを提示されては。
今となっては忌々しくても、あの時には唯一の希望の光なのだから。
あの男はつくづく性格が悪い。……自分の傷つけ方をわかっている。
もっとかけられる言葉があるはずだ。
自分が幸せになるための言葉があるはずだ。
でも、自分が知っていることはこれしかないから、これを伝えるしかない。
「……大丈夫。そう、する!」
あぁ、やっぱりそう言うのか。お前は、私。私は、お前だもんな……。
その言葉を境に、意識がふっと途切れた。
- 1.始まり
- 2.ブレスレット
- 3.ロゼアという国
- 4.ゴッドホッパーの反乱?
- 5.ラクレスの隠し事?
- 6.悲劇の始まり
- 7.行方知れず
- 8.ンコソパ国王の過去 【前編】
- 9.ンコソパ国王の過去 【後編】
- 10.マフィアを動かせ
- 11.ハッキング
- 12.マフィアとシエボル?
- 13.ロゼアへの道
- 14.宝石の国
- 15.戦慄のシエボル
- 16.力を以って
- 17.宰相様と国王サマ
- 18.邪智暴虐の
- 19.シスコン総長と呑気な女宰相
- 20.お姉ちゃん
- 21.二人のお兄ちゃん
- 22.スズメのご飯はチキュー1 byアオハ
- 23.スズメとアオハ【前編】
- 24.スズメとアオハ 【中編】
- 25.スズメとアオハ 【後編】
- 26.選ぶ結末、選ぶ未来
- 27.子守唄
- 28.眠る宰相、明けのカラス
- 29.宰相の異変
- 30.終わりの始まり、
- 31.目覚まし時計
- 32.生きる意味ってなんですか
- 33.戦闘民族(?)
- 34.太古の守護神
- 35.王と王妃
- 36.フィナーレ開幕
- 37.宰相の遺産
- 38.ラポネ・リバナラクという男
- 39.宰相たちの墓場【前編】
- 40.宰相たちの墓場【中編】
- 41.宰相たちの墓場【中編その2】
- 42.宰相の墓場 【後編】
- 43.冷却、そして覚悟
- 44.物語の終わりへ結末へ。
- 45.アオハとシエボル【前編】
- 46.アオハとシエボル【中編】
- 47.落下、そして墜落