暗闇は嫌いだ。
暴力と謀略の入り乱れるあの世界を思い出すから。
ずっと育ってきた、あの世界を思い出すから。
「ねえ、ちゃん?」
「ようこそ、ヤンマ。ギラくん。」
ふと隣を見ればギラがいる。彼も彼で何が起こっているのかわかっていないようだった。
真っ暗闇に佇む姉、アオハ。彼女の姿を映す光は、どこから入ってくるのやら、わからない。
「どこだよ、ここ。」
「まぁ、そう焦らずに。ゆっくり話していくからね。」
赤子をあやすようにアオハはヤンマの頭に手を載せた。
くすぐったい。何年ぶりか忘れてしまったこの感触にヤンマの表情も緩む。
「ギラくん、こっちにおいで。ヤンマはここ。座って座って。」
アオハは自分の右隣にギラ、左隣にヤンマを座らせると、自身もぽすんと腰を下ろした。
パチン。アオハの指がなる。その瞬間、アオハの手に一冊の本が握られた。
分厚く、見るからに古いその本が。
「じゃぁ、一番最初から話そっか。」
「一番最初?」
ヤンマとギラはぐいと身を乗り出し本の表紙を見つめる。
アオハはそれを確認して本を開いた。
「昔々、あるところに。一人の王がおりました。」
見開きいっぱいに画像が映し出される。
少し強面なその顔と王族の証。……ライニオール・ハスティーだ。
“そうか、デズナラクとロゼアを。よくやった。”
“しかし、地下にまだ残党が。”
“もうよい。追うな。”
静かに彼はそう告げる。
「途中二国が協力体制に入ったらしくて。
だいぶ苦戦したみたい。この時に作られたのがメガネウラとジュラなんだよな。」
アオハは少し悲しげに笑った。
その顔は、昔の彼女なら絶対にしなかった顔。
シュゴッダムで、きっと、世界を知ってからするようになった顔。
「……大丈夫。怖くないよ。もうすぐロゼアはいなくなるから。」
ぎゅう、とアオハの肩が頬に当たる。
不思議と彼女が遠くに行ってしまう気がして、その手を掴む。
ギラも、ヤンマも。
ラクレスはアオハと【覚悟】が違うと言った。
ラクレスだって自分たちとは覚悟が違った。
十九年、ダグデドを倒すためだけに自分を偽り、悪役に徹し、元凶に頭を下げる、
と箇条書きにしていくだけでとんでもないことを一人でやってきたということがわかる。
……それは、並大抵の覚悟ではできるまい、と二人ともわかっていた。
だから、ラクレスがそう言った途端、二人は姉の目を思い出した。
昔からだ。ヤンマは思う。いつだってアオハは下の者のことまで考えていた。
食事・住まい・仕事・学び。全てを見ていた。たった一人で。
ヤンマもそれを見て育ってきたから疑問には思わなかったけれど
少し、そういうところはラクレスに似ているのかもと思う。
「ロゼアの生命の源は断ち切ったから。」
唐突にアオハはそう言った。
ロゼアの王の証を壊したのだと。宰相たちが生贄に封印の扉へ進んだのだと。
そう淡々と告げられた。
「あとはレガシーで国と火山ごと封印するだけ。そこが墓場になる。」
パタン。重い本が閉じられる音がする。
火山。リニエッラ海底火山のことか。とヤンマは合点した。
「さぁ、行こうか。」
「あれ、でもお姉ちゃん。どうやって行くの?っていうかここってどこ?」
よしよく言ったギラと脳内で久しぶりの全力ガッツポーズを決め、ヤンマは姉の方を見る。
姉は戸惑う風もなく、立ち上がった。
「キングオージャーレガシーのエネルギー核のところ。」
ヤンマの叫び声はレガシーの分厚い鉄の外壁を通り越して、王たちの耳にも届いた。
呆れと、驚きとが混ざったような叫びだった。
「ちょ、ヤンマ、鼓膜破れるかと思った…。」
「いや姉ちゃん何やってんだ!!エネルギー核?んな危ねえとこいるんじゃねぇ!!
最低でも八百度超えるぞ!?高いと1300度超えるんだぞ!?蒸発するが!?」
焦ったように姉へ叫ぶヤンマ。
活動時の中の温度のことを言っているのだろうか?
とりあえずギラにはさっぱりだ。
「まぁまぁ。二人には操縦室行ってもらうから安心しな。」
「は?」
めざとい。アオハはそう言わんばかりに眉をひそめた。
「言っただろ。宰相たちは生贄になったって。
必要なんだよ。エネルギーの原材料の生贄が、六人。」
あまりに残酷なことをあまりに簡単に言った。
その言葉は、何も悲しんでいないようで。何も感じていないようだった。
言葉が出ない二人に、アオハは続ける。
宰相の証は王の証に比べ非科学的で非現実的な力を司る。
例えばワープ。例えば武器生成。とまぁそんな感じで。
それぞれが一人のためだけに作られたもの……らしい。
そして、六つの証が集まった時、ようやくレガシーは動くとのこと。
六人の選ばれし宰相の命を対価に。
「王じゃだめ。民でもだめ。証に選ばれた人間じゃなきゃだめなんだ。
生贄になるために選ばれて、生贄になるために生きていく。それが宰相。
あ、ラクレス恨んじゃだめだからな。アイツ何も知らないんだから。」
考えていること全てを読んで、確実に道を絶っていく。
伊達に長年国のNo2に座っているわけじゃない。目が、そう語っている。
「それが、姉ちゃんの、覚悟?」
「ん〜……?覚悟というか、お返し?ラクレスと、スズメと、二人への。」
何いってんだとギラとヤンマは目を見開かせる。
「まぁ、色々もらってきちゃったし。ここらで一発でかい返済しねぇとなって。」
いやいやいやいや。ヤンマがありえねぇとその一言を言う前に、自分たちはどこかへテレポートしていた。
「……マジか。」
そこは、間違いない。コックピット。そして外は、、、、地震で大揺れに揺れている。
火山性地震。ヤンマは直感した。なるほど、リニエッラ海底火山。
「人工噴火させようってか。」
このタイミングでこれが起こるなら99.99%そうだ。
ロゼアは命と体の予備が大量に国にあったはずだしな。
一回死んで国へ戻る。なんて贅沢なリスポーンだろう。
でも、自然噴火ならともかく、人工噴火なら止められる可能性もある。
「ヤンマ!!!」
ギラの悲痛な声。大丈夫、問題ない。そう言おうとした時、
ギラの叫びがこの地震に向いていないことに気がついた。
「みんな、離れれないって!!」
暴力と謀略の入り乱れるあの世界を思い出すから。
ずっと育ってきた、あの世界を思い出すから。
「ねえ、ちゃん?」
「ようこそ、ヤンマ。ギラくん。」
ふと隣を見ればギラがいる。彼も彼で何が起こっているのかわかっていないようだった。
真っ暗闇に佇む姉、アオハ。彼女の姿を映す光は、どこから入ってくるのやら、わからない。
「どこだよ、ここ。」
「まぁ、そう焦らずに。ゆっくり話していくからね。」
赤子をあやすようにアオハはヤンマの頭に手を載せた。
くすぐったい。何年ぶりか忘れてしまったこの感触にヤンマの表情も緩む。
「ギラくん、こっちにおいで。ヤンマはここ。座って座って。」
アオハは自分の右隣にギラ、左隣にヤンマを座らせると、自身もぽすんと腰を下ろした。
パチン。アオハの指がなる。その瞬間、アオハの手に一冊の本が握られた。
分厚く、見るからに古いその本が。
「じゃぁ、一番最初から話そっか。」
「一番最初?」
ヤンマとギラはぐいと身を乗り出し本の表紙を見つめる。
アオハはそれを確認して本を開いた。
「昔々、あるところに。一人の王がおりました。」
見開きいっぱいに画像が映し出される。
少し強面なその顔と王族の証。……ライニオール・ハスティーだ。
“そうか、デズナラクとロゼアを。よくやった。”
“しかし、地下にまだ残党が。”
“もうよい。追うな。”
静かに彼はそう告げる。
「途中二国が協力体制に入ったらしくて。
だいぶ苦戦したみたい。この時に作られたのがメガネウラとジュラなんだよな。」
アオハは少し悲しげに笑った。
その顔は、昔の彼女なら絶対にしなかった顔。
シュゴッダムで、きっと、世界を知ってからするようになった顔。
「……大丈夫。怖くないよ。もうすぐロゼアはいなくなるから。」
ぎゅう、とアオハの肩が頬に当たる。
不思議と彼女が遠くに行ってしまう気がして、その手を掴む。
ギラも、ヤンマも。
ラクレスはアオハと【覚悟】が違うと言った。
ラクレスだって自分たちとは覚悟が違った。
十九年、ダグデドを倒すためだけに自分を偽り、悪役に徹し、元凶に頭を下げる、
と箇条書きにしていくだけでとんでもないことを一人でやってきたということがわかる。
……それは、並大抵の覚悟ではできるまい、と二人ともわかっていた。
だから、ラクレスがそう言った途端、二人は姉の目を思い出した。
昔からだ。ヤンマは思う。いつだってアオハは下の者のことまで考えていた。
食事・住まい・仕事・学び。全てを見ていた。たった一人で。
ヤンマもそれを見て育ってきたから疑問には思わなかったけれど
少し、そういうところはラクレスに似ているのかもと思う。
「ロゼアの生命の源は断ち切ったから。」
唐突にアオハはそう言った。
ロゼアの王の証を壊したのだと。宰相たちが生贄に封印の扉へ進んだのだと。
そう淡々と告げられた。
「あとはレガシーで国と火山ごと封印するだけ。そこが墓場になる。」
パタン。重い本が閉じられる音がする。
火山。リニエッラ海底火山のことか。とヤンマは合点した。
「さぁ、行こうか。」
「あれ、でもお姉ちゃん。どうやって行くの?っていうかここってどこ?」
よしよく言ったギラと脳内で久しぶりの全力ガッツポーズを決め、ヤンマは姉の方を見る。
姉は戸惑う風もなく、立ち上がった。
「キングオージャーレガシーのエネルギー核のところ。」
ヤンマの叫び声はレガシーの分厚い鉄の外壁を通り越して、王たちの耳にも届いた。
呆れと、驚きとが混ざったような叫びだった。
「ちょ、ヤンマ、鼓膜破れるかと思った…。」
「いや姉ちゃん何やってんだ!!エネルギー核?んな危ねえとこいるんじゃねぇ!!
最低でも八百度超えるぞ!?高いと1300度超えるんだぞ!?蒸発するが!?」
焦ったように姉へ叫ぶヤンマ。
活動時の中の温度のことを言っているのだろうか?
とりあえずギラにはさっぱりだ。
「まぁまぁ。二人には操縦室行ってもらうから安心しな。」
「は?」
めざとい。アオハはそう言わんばかりに眉をひそめた。
「言っただろ。宰相たちは生贄になったって。
必要なんだよ。エネルギーの原材料の生贄が、六人。」
あまりに残酷なことをあまりに簡単に言った。
その言葉は、何も悲しんでいないようで。何も感じていないようだった。
言葉が出ない二人に、アオハは続ける。
宰相の証は王の証に比べ非科学的で非現実的な力を司る。
例えばワープ。例えば武器生成。とまぁそんな感じで。
それぞれが一人のためだけに作られたもの……らしい。
そして、六つの証が集まった時、ようやくレガシーは動くとのこと。
六人の選ばれし宰相の命を対価に。
「王じゃだめ。民でもだめ。証に選ばれた人間じゃなきゃだめなんだ。
生贄になるために選ばれて、生贄になるために生きていく。それが宰相。
あ、ラクレス恨んじゃだめだからな。アイツ何も知らないんだから。」
考えていること全てを読んで、確実に道を絶っていく。
伊達に長年国のNo2に座っているわけじゃない。目が、そう語っている。
「それが、姉ちゃんの、覚悟?」
「ん〜……?覚悟というか、お返し?ラクレスと、スズメと、二人への。」
何いってんだとギラとヤンマは目を見開かせる。
「まぁ、色々もらってきちゃったし。ここらで一発でかい返済しねぇとなって。」
いやいやいやいや。ヤンマがありえねぇとその一言を言う前に、自分たちはどこかへテレポートしていた。
「……マジか。」
そこは、間違いない。コックピット。そして外は、、、、地震で大揺れに揺れている。
火山性地震。ヤンマは直感した。なるほど、リニエッラ海底火山。
「人工噴火させようってか。」
このタイミングでこれが起こるなら99.99%そうだ。
ロゼアは命と体の予備が大量に国にあったはずだしな。
一回死んで国へ戻る。なんて贅沢なリスポーンだろう。
でも、自然噴火ならともかく、人工噴火なら止められる可能性もある。
「ヤンマ!!!」
ギラの悲痛な声。大丈夫、問題ない。そう言おうとした時、
ギラの叫びがこの地震に向いていないことに気がついた。
「みんな、離れれないって!!」
- 1.始まり
- 2.ブレスレット
- 3.ロゼアという国
- 4.ゴッドホッパーの反乱?
- 5.ラクレスの隠し事?
- 6.悲劇の始まり
- 7.行方知れず
- 8.ンコソパ国王の過去 【前編】
- 9.ンコソパ国王の過去 【後編】
- 10.マフィアを動かせ
- 11.ハッキング
- 12.マフィアとシエボル?
- 13.ロゼアへの道
- 14.宝石の国
- 15.戦慄のシエボル
- 16.力を以って
- 17.宰相様と国王サマ
- 18.邪智暴虐の
- 19.シスコン総長と呑気な女宰相
- 20.お姉ちゃん
- 21.二人のお兄ちゃん
- 22.スズメのご飯はチキュー1 byアオハ
- 23.スズメとアオハ【前編】
- 24.スズメとアオハ 【中編】
- 25.スズメとアオハ 【後編】
- 26.選ぶ結末、選ぶ未来
- 27.子守唄
- 28.眠る宰相、明けのカラス
- 29.宰相の異変
- 30.終わりの始まり、
- 31.目覚まし時計
- 32.生きる意味ってなんですか
- 33.戦闘民族(?)
- 34.太古の守護神
- 35.王と王妃
- 36.フィナーレ開幕
- 37.宰相の遺産
- 38.ラポネ・リバナラクという男
- 39.宰相たちの墓場【前編】
- 40.宰相たちの墓場【中編】
- 41.宰相たちの墓場【中編その2】
- 42.宰相の墓場 【後編】
- 43.冷却、そして覚悟
- 44.物語の終わりへ結末へ。
- 45.アオハとシエボル【前編】
- 46.アオハとシエボル【中編】
- 47.落下、そして墜落