物心ついたときから両手は穢れていた。
今より数倍、いや、数十倍治安の悪かったンコソパで生きていくために。
やれることはすべてやった。
幼い、赤ん坊のヤンマを抱いて、街を駆けずり回った。
ミルクは盗った。盗るしかなかった。
それで生きれるなら良かった。
飢えて死ぬ仲間が大勢いた。店の主人に捕まって、ゴッカン行きになる子どもがたくさんいた。
生きていられるだけ、ここにいられるだけ良かった。
腹はいつだって空っぽだった。
満腹なんて考えたことすらなかった。
今だって、自分は愛に飢え、寂しさが愛しさを消し去っていく。
自分はいつだって、空っぽの存在だった。
生きるための知識も、技術も身に着けた。
生きること。生き延びること。それだけを目標に生きてきた。
手が汚れようが、体が傷もうが、生きているならそれでいい。
そういう精神でやってきた。それが、喧嘩屋にして宰相アオハの生き方だ。
……だから、ヤンマにはそんなふうになってほしくなかった。
自分のために、自分の好きなことをやって、生きていてほしい。
ずっとそう願って、そのために根回しもした。
ヤンマの手は決して汚してはならない。13番ストリート喧嘩屋の鉄則である。
彼が総長になったと聞いて、飛び上がるほど嬉しかった。
大切な弟が、大切なものを見つけ出せたのだから。
自分はどうだろう。この19年で大切なものを見つけ出せたのだろうか。
ここまで生きていて良かったのだろうか。
たまにふと、そう思ってしまうことがある。
この戦いの結果がどうでも、自分は約2000年の眠りにつく。
家族や主人から離れて、未来の王たちのために。
はてさて、自分は生まれるときから生贄になる運命だったとしたならば、
ここまでの道のりに意味はあるのだろうか。
たまに浮かんでくるそんな思いは、ラクレスが蹴飛ばしてくれた。
彼はいつだって自分を包みこんでくれた。
不安なときは側にいてくれた。
それにどれだけ救われたことか。
……なんでラクレスは、こんな犯罪者のことを宰相としてくれたのだろう。
最初に一度だけ、そう思ったこともある。
極度のお人好しがそうさせたのか、はたまた定めというものか。
そう。昔からだ。彼のお人好しは、ずっとずっと、変わらなかった。
今までも、これからも。ずぅぅっと、永久に。
だから彼には、生きていてほしい。いつまでも。
そのお人好しで、みんなを守ってあげてほしい。
「ねぇ?ラクレス。」
淡い気持ちが混ざったこともあった。
でも、それは今の自分にはいらない気持ち。
現世への未練と心残り、悲しさや苦しさを残すお荷物。
ここにおいていこう。戦場において。
敵が崩れ去る。足がぐらつく。前へいかなければ。
敵を、幹部格を叩き潰さなければ。
それが、自分に残された最後の仕事なのだから。
「どけどけぇ!!創造の宰相様のお通りじゃぁ!!」
自分の全てを、この戦いにかけて。
これが創造の宰相、アオハ・ガストの生き方だ。
「来たのか。シエボル。」
「まだその名で呼んでおられるのですか。サクト様。」
皮肉るようにアオハは笑った。
ロゼアの幹部が勢揃いしている中、全く動じていないのは流石といったところだろうか。
「裏切り者めが何を言うておる。」
「お、まだ腕治ってねぇの。悪い事したね。」
アオハが言う通りテスルクの利き腕は治ってないらしい。
利き腕とは逆の方の手に槍が握られていた。
テスルクはそれに憤慨したようで、すぐに飛びかかっていこうとしたが、カーデに止められた。
「テスルク様。俺にお任せください。
灼熱州統括長の腕を借りるまでもございませぬ。」
「カーデ、無理するなよ。俺も加勢しようか。」
「一人でできるわ、バカ兄貴。」
カーデは剣を構え、アオハの方に向き直った。
さすがは軍隊長。構えに一切隙がないことをアオハは内心褒めた。
楽しみだな、そう思ってしまう自分がいる。
戦闘民族の血のような。アオハの中に眠る喧嘩民の性格が。
「さぁ、お手並み拝見?」
「戦慄のシエボルの名は返上してもらいますよ。」
今より数倍、いや、数十倍治安の悪かったンコソパで生きていくために。
やれることはすべてやった。
幼い、赤ん坊のヤンマを抱いて、街を駆けずり回った。
ミルクは盗った。盗るしかなかった。
それで生きれるなら良かった。
飢えて死ぬ仲間が大勢いた。店の主人に捕まって、ゴッカン行きになる子どもがたくさんいた。
生きていられるだけ、ここにいられるだけ良かった。
腹はいつだって空っぽだった。
満腹なんて考えたことすらなかった。
今だって、自分は愛に飢え、寂しさが愛しさを消し去っていく。
自分はいつだって、空っぽの存在だった。
生きるための知識も、技術も身に着けた。
生きること。生き延びること。それだけを目標に生きてきた。
手が汚れようが、体が傷もうが、生きているならそれでいい。
そういう精神でやってきた。それが、喧嘩屋にして宰相アオハの生き方だ。
……だから、ヤンマにはそんなふうになってほしくなかった。
自分のために、自分の好きなことをやって、生きていてほしい。
ずっとそう願って、そのために根回しもした。
ヤンマの手は決して汚してはならない。13番ストリート喧嘩屋の鉄則である。
彼が総長になったと聞いて、飛び上がるほど嬉しかった。
大切な弟が、大切なものを見つけ出せたのだから。
自分はどうだろう。この19年で大切なものを見つけ出せたのだろうか。
ここまで生きていて良かったのだろうか。
たまにふと、そう思ってしまうことがある。
この戦いの結果がどうでも、自分は約2000年の眠りにつく。
家族や主人から離れて、未来の王たちのために。
はてさて、自分は生まれるときから生贄になる運命だったとしたならば、
ここまでの道のりに意味はあるのだろうか。
たまに浮かんでくるそんな思いは、ラクレスが蹴飛ばしてくれた。
彼はいつだって自分を包みこんでくれた。
不安なときは側にいてくれた。
それにどれだけ救われたことか。
……なんでラクレスは、こんな犯罪者のことを宰相としてくれたのだろう。
最初に一度だけ、そう思ったこともある。
極度のお人好しがそうさせたのか、はたまた定めというものか。
そう。昔からだ。彼のお人好しは、ずっとずっと、変わらなかった。
今までも、これからも。ずぅぅっと、永久に。
だから彼には、生きていてほしい。いつまでも。
そのお人好しで、みんなを守ってあげてほしい。
「ねぇ?ラクレス。」
淡い気持ちが混ざったこともあった。
でも、それは今の自分にはいらない気持ち。
現世への未練と心残り、悲しさや苦しさを残すお荷物。
ここにおいていこう。戦場において。
敵が崩れ去る。足がぐらつく。前へいかなければ。
敵を、幹部格を叩き潰さなければ。
それが、自分に残された最後の仕事なのだから。
「どけどけぇ!!創造の宰相様のお通りじゃぁ!!」
自分の全てを、この戦いにかけて。
これが創造の宰相、アオハ・ガストの生き方だ。
「来たのか。シエボル。」
「まだその名で呼んでおられるのですか。サクト様。」
皮肉るようにアオハは笑った。
ロゼアの幹部が勢揃いしている中、全く動じていないのは流石といったところだろうか。
「裏切り者めが何を言うておる。」
「お、まだ腕治ってねぇの。悪い事したね。」
アオハが言う通りテスルクの利き腕は治ってないらしい。
利き腕とは逆の方の手に槍が握られていた。
テスルクはそれに憤慨したようで、すぐに飛びかかっていこうとしたが、カーデに止められた。
「テスルク様。俺にお任せください。
灼熱州統括長の腕を借りるまでもございませぬ。」
「カーデ、無理するなよ。俺も加勢しようか。」
「一人でできるわ、バカ兄貴。」
カーデは剣を構え、アオハの方に向き直った。
さすがは軍隊長。構えに一切隙がないことをアオハは内心褒めた。
楽しみだな、そう思ってしまう自分がいる。
戦闘民族の血のような。アオハの中に眠る喧嘩民の性格が。
「さぁ、お手並み拝見?」
「戦慄のシエボルの名は返上してもらいますよ。」
- 1.始まり
- 2.ブレスレット
- 3.ロゼアという国
- 4.ゴッドホッパーの反乱?
- 5.ラクレスの隠し事?
- 6.悲劇の始まり
- 7.行方知れず
- 8.ンコソパ国王の過去 【前編】
- 9.ンコソパ国王の過去 【後編】
- 10.マフィアを動かせ
- 11.ハッキング
- 12.マフィアとシエボル?
- 13.ロゼアへの道
- 14.宝石の国
- 15.戦慄のシエボル
- 16.力を以って
- 17.宰相様と国王サマ
- 18.邪智暴虐の
- 19.シスコン総長と呑気な女宰相
- 20.お姉ちゃん
- 21.二人のお兄ちゃん
- 22.スズメのご飯はチキュー1 byアオハ
- 23.スズメとアオハ【前編】
- 24.スズメとアオハ 【中編】
- 25.スズメとアオハ 【後編】
- 26.選ぶ結末、選ぶ未来
- 27.子守唄
- 28.眠る宰相、明けのカラス
- 29.宰相の異変
- 30.終わりの始まり、
- 31.目覚まし時計
- 32.生きる意味ってなんですか
- 33.戦闘民族(?)
- 34.太古の守護神
- 35.王と王妃
- 36.フィナーレ開幕
- 37.宰相の遺産
- 38.ラポネ・リバナラクという男
- 39.宰相たちの墓場【前編】
- 40.宰相たちの墓場【中編】
- 41.宰相たちの墓場【中編その2】
- 42.宰相の墓場 【後編】
- 43.冷却、そして覚悟
- 44.物語の終わりへ結末へ。
- 45.アオハとシエボル【前編】
- 46.アオハとシエボル【中編】
- 47.落下、そして墜落