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消失の帝王  〜とある女海賊の記録(ログ)〜

#3

11年後

11年後_ゴッドバレー事件の直後のこと

オーロジャクソン号にオギャー、オギャーと泣き声が響く。
「ガキなんて、どう扱えばいいんだ!?レイリー!!」
「わ、わからん!」
それにあたふたと慌てる大きな影2つ。
そうこうしている間にも、2種の泣き声は大きくなっていく。
「貸してみろ。」
抱くことさえもままならない2人の肩に、あるクルーが手を置く。
そのクルーは、二人を抱きかかえると、一人をおぶって、一人を前に。
手にはいつの間にかでんでん太鼓を持っている。
「ねんねんころりよ、おころりよ〜。ぼーやはよいこだ ねんねしな〜。
ぼーやのおもりはどーこへいった。あの山こーえて さーとへ行った……」
その子守唄と、リズムよく鳴るでんでん太鼓のおかげか、二人はすっかりごきげんになり、キャッキャと笑い始めた。
「ふぅぅぅ。助かった、●●。」
「いや。お手のもんさ。
おーおー。いい子だな〜。……ってか、この子達、どこで拾ってきた?」
「あー、ゴッドバレーで拾ってきた。」
「ゴッドバレー?」
ロジャーが胸を張りそう言う。●●は聞いてないぞ、と怪訝な顔をする。
「まぁた、人にナワバリ任しといて面倒事起こしてきたんだな……。」
●●が呆れた顔をする。
「んで?返せない理由でもあるんだろ。
お前が人を、しかもまだ乳飲み子をさらうわけねぇもんな。」
「あぁ!!」
「元気に言うことじゃないがな。」
苦笑しつつ、理由は聞かねえよ。と●●は付け加えた。
「ま、それは棚に上げてやる……。で、こいつらの名前は何だ?」
「名前か?そっちの赤髪のほうがシャンクス、青髪のほうがバギーだ!!」
ふぅん、と●●は二人を交互に見やる。
「お前ら大変だな〜。こんな海賊に連れ去られて……。」
「こんなとは何だ、こんなとは!」
「うるさい。黙っとれ。」
ロジャーのツッコミを●●は一蹴。
「そうかぁ……お前ら、シャンクスとバギーっつーのか……。
いい名前つけてもらったな。」
その言葉を知ってか知らずか、二人は●●の背中でまた、きゃっきゃと笑い始める。
「お前、ガキの扱い上手いんだな。」
「まぁな。こっちにも手の焼ける奴らがいたもんで。」
そうか、とレイリーが頷く。
ロジャーとレイリーは、●●の過去を知らない。
彼女が仲間になったあと、●●が笑ったところも見たことがない。
あれから11年も経つのに、●●は少女の姿のまま。
そのため、世間は彼女を【[漢字]妖精の帝王[/漢字][ふりがな]エルフ・エンペラー[/ふりがな]】と呼ぶ。
「[小文字]確かに妖精みたいだよな……[/小文字]」
ボソッとレイリーが言う。
彼女の短く、黒と白にはっきりと分かれた髪は、この11年で一度も伸びることはなかった。
彼女の服が戦いでボロボロになろうと、彼女の体が傷つくことはなかった。
自由自在に飛べるように見えるほど身は軽く、
その声にある者は凍りつき、ある者は魅了され、ある者は眠りにつく。
覇気は全て新世界でもトップレベル。特に覇王色は、いつも纏ってる分で象が気絶し、
海軍中将でも軽く倒れるほど。
ふらりと何処かへ消えては、またふらりと現れる。
その強さと自由気ままさ、不思議さは、まるで、本物の妖精のようだった。
「?なんか言ったか、レイリー?」
「……いいや。それより、この子達はどうするんだ?」
レイリーがロジャーの方を向く。
「ん?そりゃぁ、海賊として育てるに決まってるだろうが。」
「いやそうなんだが。誰が育てるんだ?」
「おれたち。」
「いやそうなんだが。」
漫才のような掛け合いが始まる。
「誰が修行を「おれたちだろ。」
その後も、そんなやり取りを一通り繰り返したが、
限界に来た●●が、ロジャーとレイリーの頭にげんこつを落とし、全てが終わった。
「あいだっ」「っつ……。」
「それじゃぁ、ぐるぐる回っちまってるだろうが。」
二人が頭を抑える中、●●はどこからかベビーベッド(移動できるやつ)をひっぱりだし、シャンクスとバギーを寝かせた。
「海賊として育てるんだろ。なら、私も手伝うからな。……こいつらを、立派な海賊に育て上げてやるよ。」
「はははっ!!いいじゃねぇか!!乗った!修行はたっぷりつけてやるとして「お前、手加減できたか?」
そんな笑い声と、小さな新人の笑い声が、オーロジャクソン号に響いていた。





6年後。

「シャンクス!!おれの皿にトマト入れただろ!!」
「バギーだって!おれのヨーグルトの中にブルーベリー入れた!!」
今日も二人の、幼い言い争いは続く。
「何喧嘩してんだ、ガキども。稽古の時間だぞ。」
「「あ。師匠!!」」
この子達は新時代への礎を築く大海賊となる未来が待ち受けているが……。
人々はそれを、まだ知らない。

2025/07/28 21:40

ミコト
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