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ネクストステージ! 最強の国の秘密

#17

宰相様と国王サマ

「うん、やっぱこれが一番しっくり来るな!!」
「はぁ……。またやかましいのが増えた。」
「さっさと終わらすよー!帰ってスズメの作るもの食べたいしね〜。」
本当の姿を表したシエボル……いや、アオハは、少女のように小さく、細かった。
先程より薄手の青色のローブをはおり、一本の長剣を腰につけ、顔はフェイスベールと仮面で隠されている。
「とりあえずギラくんとヤンマの回収よろしく!
こっちは任せとけ!」
「はいはい。」
ラクレスはアオハの言葉にコクリと頷くと、ギラたちの方へ駆けてきた。
「さぁ、帰ろうか。ギラ、ヤンマ。」
「へ、お、お兄ちゃん?」
「アオハの戦闘に巻き込まれると無傷じゃすまないからな。」
有無を言わせず二人を抱えあげるとせかせかと退散する。
ヤンマは思考が止まってしまったように動かない。
そんなヤンマをラクレスは少し気にしているようで、チラチラと先程からヤンマの方をずっと見ている。
「アオハ〜!やりすぎるなよ!!王たちにも見せ場残しとけ!!
それに裁判長に怒られるぞ!」
「りょーかい!そっちもね!」
アオハはそう言うと、長剣を振り回し始めた。
美しく、舞うように。ヒメノとは似てるようで違う剣技。
その剣技に、ギラはいつの間にか見とれていた。
「あいつは化け物なんだ。昔っから勝てないしな。」
「ほ、本物だ……。本物の、姉ちゃんだ……。」
いきて、た。
息も絶え絶えにヤンマはつぶやく。
その目には涙さえも浮かんでいた。
「……十九年も、力を借りてしまったな。」
するとラクレスは、ぱちんと指を鳴らす。
「え、ZERO!?」
ギラが壊したはずのZEROがやって来た。
「少々彼女が直してくれてね。」
ラクレスはZEROに乗り込むと、すぐに飛び立った。
その五秒ほど後、大きな爆発音が聞こえたのは気のせいなのだろうかとギラは思ったが。
「ギラ、王たちに連絡を。話さねば。」
「え、あ、うん。」
ラクレスの言葉に、ギラはただ頷くことしかできなかった。








「で?何を話そうって言うの?」
ヒメノの冷たい視線で、ラクレスは少し背筋が伸びる。
「……もう少し待ってくれ、もうすg「ラクレス!!!!」
「ほら来た。」
とんでもない大声を出し、突っ込んできたのは、青ローブの少女。
……アオハだ。
「あぁ、王サマ。ヤンマとラクレスがお世話になってます!」
ペコリと少女は頭を下げると、トテテテとラクレスの方へと歩み寄った。
「話すの?」
「逆に話さない選択肢ってあるのか?」
「聞くなよ。」
そんな会話を交わした後、ラクレスはそっと口を開く。
それは、アオハとラクレスの出会いの物語。
そして、ロゼアとラクレスの戦いの物語であった。






[水平線]


ラクレスとアオハの出会いは19年前。
神の怒りから一週間ほどたった日のことだった。
とある犯罪組織の噂を聞きつけたラクレスは、誰にも言わず単身そのアジトに乗り込んでいくことにした。
―とりあえずは各国の王からの信頼づくりをしなければ。―
つい先日、邪智暴虐の王となることを決意したラクレスにとって、それはとても重要なことだ。
まずはゴッカン王から。と、犯罪組織を根絶やしにすることを考えたのである。
自らの国で重大犯罪を侵させてなるものかという感情もあったけれど。
「ここか……。」
王とはいえ、ラクレスはまだ少年。
表から突っ込んでは大の大人に勝てるはずはない。
ラクレスはそっと懐に手を忍ばせ、拳銃を取り出すと、空に向かって放った。
「[小文字]何だ!?[/小文字]」
「[小文字]侵入者か!?[/小文字]」
遠くから声が聞こえる。
何人来るかはわからないが、これで中は手薄になるだろう。
兵を連れてこなくてよかったと心底思う。
大人数の人がゾロゾロ歩いていたら、流石に逃げていただろうし、この作戦もできなかっただろう。
「裏から行けそうか……?」
足音を立てないようにそっと、アジトらしき建物の裏へと回り込む。
ご丁寧に裏口は鍵が空いていた。
「よし、いけそう。」
捕まれば命は無い……わけではないだろう。
王は売っぱらうか身代金を要求したほうがよっぽど賢い。
捕まっても死ぬことは9割方ないとは思う。
そっと、一歩一歩足を進める。
すると、一段と開けた大きな部屋に出た。
そしてそこには、縄で縛られ、倒れ込む少女が一人。
よく見れば【売却用】と書かれた紙が貼られている。
「君っ……大丈夫!?」
ラクレスの声に反応した少女はカッと目を見開くと、ラクレスに対して叫んだ。
「後ろ!!!」
「へ?」
全てがスローモーションのようだった。
後ろを振り向くとそこには、バットを振り上げた屈強な男。
まずい、これは。
抵抗のしようのないラクレスは身を守るために縮こまる。
死ぬかもしれない。と強く目を瞑った、その時だった。
「簡単に諦めんじゃねぇ!!このスカポンタヌキ!!!」
ドズっと音がして、男が倒れる。
少女が、縄を解き、男の顎に蹴りをかましていた。
「らっ!……マフィアのアジト乗り込むたぁいい度胸してやがんな?」
「あ〜……ご、ごめんなさい?」
「謝ることじゃねぇだろ。ま、助けてくれたことは感謝してるぜ。」
少女はボロボロの服を着て、素足にサイズの合わないサンダルという、
[中央寄せ][/中央寄せ]シュゴッダムの城下ではあまり見られないような姿をしていた。
「き、君。名前は?」
「私?アオハ。ンコソパって国の13番ストリートで喧嘩屋やってんだ。」
ンコソパという国を、ラクレスはあまり知らない。
シュゴッダムの下請けの国、そう昔から学んできた。
しかし、本当に行ったことはない。
ンコソパはラクレスにとって未知の領域と言っていい。
「わ、私はラクレス・ハスティー。こっ……この、シュゴッダムで国王をやっている。」
つまりながらもそう言い、アオハの方をキッと向く。
へぇ、国王サマ。アオハは興味を示したようにラクレスの目を覗き込んだ。
「じゃぁ、安全に帰さないといけないじゃんか。
……帰れたら血の渦巻く裏社会になんて、もう二度と来るんじゃねぇよ?」
「……あ、え。」
「私に任せとけ。一回も傷つけず帰してやるよ。
もちろん、それだけの対価はもらうけどな。それでもいいか?」
爛々と輝くその瞳に、ラクレスはいつの間にか強く惹かれていた。
「………フッ。邪智暴虐の王についてこれるかな!?」
「お、乗ってきてるじゃん!いいねぇ、好きだぜ、そういうの。」
ダッと駆け出した二人は、外へとまっしぐら。
ラクレスは繋いであった馬に乗り、アオハはその後ろへ乗り込む。
アオハはラクレスに後ろを向くなと伝え、懐から拳銃を出すと後ろに向かって撃ち出す。
追手はその銃弾に倒れたのか、二人が捕まることはなかった。
「……あれで、いいの?」
不安そうに、ラクレスは言う。
「問題ねぇよ、急所は外した。あれぐらいなら歩いてでも戻れるだろ。」
淡々とアオハは返す。その声は子どもとは思えないほど凛としていた。
いつの間にかアジトは地平線の彼方に消え、春の日差しの中、二人は風を切っていた。
「君はどうして、捕まったの?」
ラクレスは恐る恐る話を切り出す。
「……ま、アイツラもあの大災害で金儲けの時期が来たと思ったんだろ。
ンコソパで私の縄張りの奴ら逃がしてたら捕まって、
[漢字]シュゴッダム[/漢字][ふりがな]この国[/ふりがな]で人身売買されそうだった。」
「た、大変だったね。」
「あーもうほんっと!!お腹すいた!!!」
グルルルとアオハの腹がなる。
がっしりとラクレスを掴む腕は、力強いがとても細い。
「……なにか、ごちそうするよ。」
「え、いや、私全財産0だけど?大体その日のアイツラの飯に費やしたし。」
「いや、奢り。……助けてくれた、恩返しだよ。」
ラクレスはそう言うと、城への帰路を急いだ。









「うっま!!!なにこれ!!」
「よかった。」
ラクレスは頬杖をつきながら、アオハの方を見る。
アオハはハンバーグを口に詰め込みながらほっこりとした顔をしている。
相当美味しかったのだろう。手が止まっていない。
「これ、全部私が食べていいの!?」
「もちろん。」
小さなひとくちでポポイと食物を放り込む姿に、ラクレスはギラを重ねた。
ギラはこんなに口は悪くないけどな。なんて思いながら。
「美味し〜!!お肉最高!!!」
相当美味しかったんだなとそちらを見るラクレスはにこにこ顔。
アオハはふっと気づいたようにラクレスの方を向くと、笑った。
「ありがとな、王サマ!」
「ラクレスでいいよ。君に王様って言われるとちょっとむず痒いし……。」
「ん?そっか。じゃ、私のこともアオハでいいぜ!」
「はいはい、付いてるよ。」
手を伸ばし、彼女の頬についたご飯粒を取る。
「サンキュー、ラクレス!」
ハハッと笑った彼女は、とても嬉しそうだった。

ペロッとハンバーグとライスを平らげてしまったアオハは、そーっと視線を上げた。
「……あ、ありがとな。」
「だからいいって。ほら、君の故郷はンコソパだろう?帰らないのか?」
「帰り方わかんねぇし、まず一文無しだから帰れねぇよ。」
そうか、とラクレスが懐に手を入れた、その時だった。
「それに、こんなに美味しいもん食べさせてもらったのに、
ただで帰るわけにはいかねぇよ。」
「へ?」
「全部返すよ。何がいい?お前のボディガードすりゃいいか?
なんか作りゃいいか?手伝いすりゃいいか?喧嘩すりゃいいか?それとも全部か?」
いやいや待て待てとラクレスが言う前に、アオハはラクレスとの距離をズイッと詰めた。
「何にでもなってやるよ。食い物の恩はなんにも勝る。
さぁ言え、お前は何を望む?」
どっかの小説で出てきそうなセリフだなとラクレスはどこか上の空。
考えれば頼みたいことは多い。
と言うか、今適任の人がいなくて困っているやつがある。
けれどそれを言えば、彼女はこれから10年、いや一生祖国には帰れないだろう。
「ないよ。」
彼女のためを思えばと、目を伏せた。
……しかし、彼女はそうヤワではなかった。
「誰にでも、欲ってのはあるもんだ。
私は、スラムでそんなのを山と見てきた。
一番多いのは金に対する欲。次に食い物。
でもそれは、生きるのに精一杯の私たちだから。
私は知りたい。何にも不自由しない王サマが、何を望むのか。
こんな1スラム街風情に、何を背負わすことができるのか。」
まるで試すように、ラクレスをじっと見つめてきた。
その瞳が、歳の割には大人っぽくて、ラクレスは少し心がズキリと傷んだ。
「なぁ、この何も知らないガキに教えてくれよ。お前の答え。」
自分とはまるで違う覚悟の決まった瞳に、ラクレスはまたもや惹かれていた。
「……君には敵わない。」
そしてラクレスは口を割った。
ロゼアのことと、宇蟲王のこと。
そして_____[太字]宰相[/太字]の存在のこと。
「わぁお。そんなのあったのか、この世界。」
「これを聞いてしまったからには一生帰れないぞ。いいのか?」
念を押すようにラクレスは言ったが、アオハは笑ったままだった。
「いいよ。私もお前に興味湧いた!!」
するとアオハは椅子から降り、ラクレスの隣で[漢字]跪[/漢字][ふりがな]ひざまず[/ふりがな]く。
「これより、ンコソパスラム、13番ストリート喧嘩屋アオハ。
シュゴッダム国王ラクレス・ハスティーの宰相になることを誓う。」
ボロボロの服と、サイズの合わないサンダルを履いた宰相が、この日、誕生した。

作者メッセージ

はい!!過去話です。お待たせいたしました!!
宰相については次回、詳しく説明いたします!
今日はここらへんで!
では!See you again!

2024/09/28 18:25

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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