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消失の帝王  〜とある女海賊の記録(ログ)〜

#4

私の記憶(メモリー)、お前らの記録(ログ)

「●●、逃げろ。」
「でも、船長が、私が逃げたら。」
雪の降る崖の上で、【私】とあいつが話している。
あぁ、これは夢だ。あの、地獄の日の、夢だ。
800年以上も、前のことなのに。まだ、夢に見るのか。
いや、今も一つ残らず覚えているあのことを、夢に見ないほうがおかしいか?

全て私の記憶通りだ。
【私】も、あいつも、傷だらけで、肩で息をしていることも。
あいつの髪が、血と自前の赤が混じって美しかったことも。
私の能力が、まだ半人前だったことも。
全て私の記憶のまま。
「……あんたがおれたちの、最後の希望なんだよ。……生きてくれ。」
覚悟を決めた、あいつの瞳は、きれいな緋色をしていた。
「やだ。逃げるなら、お前と一緒に行く。」
「無理だ。おれはもう[漢字]海軍[/漢字][ふりがな]あいつら[/ふりがな]に目ぇつけられてんだ。」
そんな[漢字]こと[/漢字][ふりがな]わがまま[/ふりがな]言うんだったら、無理矢理にでも連れてけよ。
今の私はそう思う。
でも、“昔の私”に、そんなことできるはずがない。
昔の私は、何も知らない。
悲しみも、痛みも、何も知らなかったんだ。

「逃げてくれ。頼むよ。●●。」
「嫌だよ。お前をおいて、行けるものか!!」
失うことも、負けることも。
「……来た。」
「え?」
あぁ、あのときの私は。
「じゃあ、な。●●。……いや、キャプテン。」
無知だった。


ドンッ
あいつに押された【私】の体が、崖の下へと落ちていく。


あの後のことを、私は殆ど覚えていない。
ただ覚えているのは、あいつの顔が、今までにないほど、満ち足りた笑顔だったことだけだ。












「[小文字]やって……すだ……アホシャ……[/小文字]」
「[小文字]しょ……むさ……おき……[/小文字]起きて、師匠!!」
ガキのあの甲高い声で私は目を覚ます。
「なんだよ、気持ちよく寝てたとこなのに。」
あの時、バッサリ切った短い髪をかき回す。
「ししょ〜![漢字]神避[/漢字][ふりがな]かむさり[/ふりがな]教えてくれよ〜!師匠ならできるだろ!?」
「おれにも、あの爆弾のやつ教えてください!」
その顔は、あいつらにそっくりで。
キラキラした目は、あの子達を彷彿とさせる。
「……わかったって。おいで。ここじゃぁ、船が壊れるだろ?」
「はぁい!!」
もう、一人ぼっちには飽き飽きだ。
もう、もう誰も。
誰も、誰も。










―あなたのせいで私達は死んだ―
―お前が死ねばよかったのに―





あぁ、まただ。
また、【みんな】の声が聞こえる。
アイツラは絶対そんな事言わないのにな。

これはきっと、私自身への罰。
のうのうと生きれてる、私への。
そして、あの事を忘れないための、記憶への枷。
そして、これは、あいつらが、たしかに存在したことを示す、
ただ一つの[漢字]記録[/漢字][ふりがな]ログ[/ふりがな]

―本当は寂しいんだよね―
―ワタシがその隙間、埋めてあげようか―
甘ったるい、重い声が響く。
その声にのれば、この世界は終わるだろう。
この声は、破壊の王の声だから。

(いや、まだお断りだ。)
まだ、まだこの世界は、生きなきゃいけないんだ。
こんなところで、死ぬなんてできないんだ。
まだ、私が、[漢字]ロジャー[/漢字][ふりがな]あいつ[/ふりがな]の夢の果てを見れてないんだ。
まだ、コイツラを一人前にできてないんだ。
「二人共。しっかり捕まっていろ!」
「「おー!!」」




一人ぼっちにはもう、飽きている。
けれど、手を伸ばしたって仲間はいない。
私は弱い。私は、無知。
でも、壊すぐらいなら。消すぐらいなら。
「行くぞ!!」
私は、新しい世界を、見てみたいから。

作者メッセージ

ようやく夢主ちゃん目線で書けました!
夢主ちゃんにはまだわかってないこと多いですよね。
これからどうなっていくんでしょう!?


近く、夢主ちゃんの過去編書いていきます!
先に日常編かも。お楽しみに!

2024/06/09 16:06

ミコト
ID:≫ 8t/IaoonNB37w
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