天城澪はステージの袖に立っていた。
復帰後、後列で歌い始めた自分を少しは肯定できるようになったと思ったが、
今は違った。
ライトの熱が肌に刺さる。
歓声が頭を振るわせる。
でも、どれも遠い。
自分がその場にいる感覚が、ほとんどなかった。
心臓は早鐘のように打ち、呼吸は浅く、思考だけが暴走する。
完璧じゃなくてもいい。後列でもいい。
頭ではそうわかっているのに、
身体は過去のステージの恐怖を思い出して、動けなくなる。
「行くぞ」
黒瀬の声が聞こえた。
振り返る余裕はなかった。
彼の視線は温かいのか冷たいのか、わからなかった。
音楽が流れ出す。
ステージの光が、澪を照らす。
でも、光は温かくなかった。
心の奥で、影が広がるだけだった。
声を出そうとする。
しかし、出ない。
喉が塞がったように、音は消えた。
息も止まる。
目の前のステージは明るいのに、世界は静止している。
周囲の動き、メンバーの歌声、歓声――すべてが遠くにある。
自分だけが隔絶されている感覚。
その恐怖が、全身を覆った。
――ここにいる意味は、あるのか?
その問いが、頭の中で無限に反響する。
答えはない。
誰も助けてくれない。
助けを求める声すら出せない。
時間が経つ感覚も、わからない。
ステージは進む。
ライトが消え、音楽が止まり、歓声が去る。
でも澪の頭の中は、止まらない。
――消えても、いいのかもしれない。
目を閉じる。
頭の中のざわめきが、呼吸より大きくなる。
身体は動かず、世界は遠く、光は届かない。
そして澪は、ステージの光の中で立ち尽くす。
誰も気づかないまま、存在だけがそこにある。
声も笑顔も、完全に消え失せたわけではない。
でも、自分自身は、もう誰にも届かない。
――偶像としての私は消えた。
――自分としても、もう、戻れない。
ステージの明かりは冷たく、観客は拍手を続ける。
だが澪に届くことは、二度となかった。
白い病室の記憶も、ステージの光も、
すべてが遠くて、近くない。
澪はただ、そこで、立ち尽くす。
――終わった。
そして、観客の歓声だけが、空虚に響き続ける。
復帰後、後列で歌い始めた自分を少しは肯定できるようになったと思ったが、
今は違った。
ライトの熱が肌に刺さる。
歓声が頭を振るわせる。
でも、どれも遠い。
自分がその場にいる感覚が、ほとんどなかった。
心臓は早鐘のように打ち、呼吸は浅く、思考だけが暴走する。
完璧じゃなくてもいい。後列でもいい。
頭ではそうわかっているのに、
身体は過去のステージの恐怖を思い出して、動けなくなる。
「行くぞ」
黒瀬の声が聞こえた。
振り返る余裕はなかった。
彼の視線は温かいのか冷たいのか、わからなかった。
音楽が流れ出す。
ステージの光が、澪を照らす。
でも、光は温かくなかった。
心の奥で、影が広がるだけだった。
声を出そうとする。
しかし、出ない。
喉が塞がったように、音は消えた。
息も止まる。
目の前のステージは明るいのに、世界は静止している。
周囲の動き、メンバーの歌声、歓声――すべてが遠くにある。
自分だけが隔絶されている感覚。
その恐怖が、全身を覆った。
――ここにいる意味は、あるのか?
その問いが、頭の中で無限に反響する。
答えはない。
誰も助けてくれない。
助けを求める声すら出せない。
時間が経つ感覚も、わからない。
ステージは進む。
ライトが消え、音楽が止まり、歓声が去る。
でも澪の頭の中は、止まらない。
――消えても、いいのかもしれない。
目を閉じる。
頭の中のざわめきが、呼吸より大きくなる。
身体は動かず、世界は遠く、光は届かない。
そして澪は、ステージの光の中で立ち尽くす。
誰も気づかないまま、存在だけがそこにある。
声も笑顔も、完全に消え失せたわけではない。
でも、自分自身は、もう誰にも届かない。
――偶像としての私は消えた。
――自分としても、もう、戻れない。
ステージの明かりは冷たく、観客は拍手を続ける。
だが澪に届くことは、二度となかった。
白い病室の記憶も、ステージの光も、
すべてが遠くて、近くない。
澪はただ、そこで、立ち尽くす。
――終わった。
そして、観客の歓声だけが、空虚に響き続ける。