「いってくるよ、ベル」
「いってらっしゃい、レミー」
この毎朝恒例の挨拶を見ると『朝飯作るか…』という気分になるのはどうしてだろうか。
俺──オリバ・ディアストは、もう50代の両親の“いってらっしゃいのキス”を横目に朝飯を作り始めた。
毎朝おじさんとおばさんのキス見せられる[漢字]息子[/漢字][ふりがな]こっち[/ふりがな]の身にもなってくれ、とは思うが正直小さい頃からこうなのでほぼ風景である。そもそも、普通の家はこう言うことを子供の前でしないという事実に気がついたのも10歳くらいの頃だった。
母に『キスは夫婦にならないとしちゃダメ!』としつこく教えられていたのもあったと思うが、そのことに気がつくまでに何もやらかしていないのを褒めてほしい。
「オリバ、今日も早く出るの?」
「……あぁ。道場に行って特訓に付き合わないと」
目玉焼きを焼いている間、ひたすら袋からパンを出して食べている俺に台所に戻ってきた母が声をかけてくる。
誰の特訓に付き合うかとか言うと面倒くさいので言わないでいると、やはり文脈として不自然だったのか母が頬をピンク色に染める。
うわ、まずい。直感的にそう思い逃走しようとしたが、それも虚しく母の口から爆弾が投下された。
「シャノンちゃんの特訓かぁ、なるほどなるほど……てか、あんたらどこまでいったの?」
「……ドコマデ…?」
ドコマデ、という聞きなれない単語が耳をかじってそのまま彷徨う。顔に出ていたのか、母が呆れた顔をするとまたもや爆弾第二弾を投下した。
「手繋いだの?それともキスまで行った?」
「……え…?……んなわけねーだろボケナスがぁ!!!!!!!」
母の二つの爆弾によりやっと問いの意味を理解した俺は、勢い余って持っていたパンを落とし、そのまま叫び出した。そもそも付き合ってないって言っただろ母さん!!!!!
「え〜、じゃあせめて両想いとか…」
「………今んとこ、望みゼロ」
隠して変なタイミングで晒されるより、自分からいいタイミングで言ったほうがマシだ。諦めというか悟りというか、そんな感情になった俺は隠すことを諦めた。
「え〜、でもなぁ。母さんが見た感じ、望みが全くない感じではなかったような…」
「母さんの勘って当てにならないんだよ…」
「ふふ、母さんをなんだとお思いで?地元の恋愛マスターよ!恋愛に関してだったら死ぬほど鋭いわよ」
母は癖のある黒々とした長髪を人差し指で巻取り、得意げに言った。正直信用ならんが。
でもまぁ、昔っから恋愛相談をよく持ちかけられていたのは、やっぱり母の発する『恋バナオーラ』が俺にも遺伝したからなんだろうか。ちょっとやだな。
「……まぁ、それはさておき…彼女、自分でも気がついてないけどちょっと意識し始めてると思うよ」
「……ふぅん。まぁ、俺行くわー」
「あら、意外とドライ」
俺は着替えて家を出ると、道場まで歩く。
母の言葉は信用ならない、信用ならないけど……ちょっと嬉しくなったのは事実だ。仕方ない。
ふと前を向くと、建物に寄りかかって空をぼーっと眺めている見慣れた姿を見つけた。シャノンだ。なんでここに?
「あっ、オリバ!!!!」
「……え、なんでここに?」
「ちょっと用事があったついでに、お迎えにあがりました〜!お兄さん、エスコートして差し上げましょうか?」
意地悪に笑ったシャノンが、さっと手を俺の前に出す。え、掴めってこと?え、え???
白い手のひらに、細くて長い指。触ったら壊れるんじゃないかと思うが、なんのバグが起こっているのかこの拳は最強だ。意味わからん。
ふと、脳裏に先ほどの母の爆弾が蘇る。
『あんたら、どこまでいったの?』
『手繋いだの?それともキスまで行った?』
「……あれ、オリバどうした?そんなにエスコート嫌だった?てか、遊びだから。まじでエスコートできる自信ないから」
「……あー、なんでもない。いくぞー」
シャノンを引き連れて歩き出すと、街の色がまだ淡いことに気がついた。早朝のピンと張った空気に、淡い色の街。そんで、後ろで騒ぐシャノン。
彼女の手に目が行った後、小さな口に目が行ってしまったことはぶん殴ってかき消して墓まで持っていくとして──
どうしようかな、結構マジで好きだわ。
「いってらっしゃい、レミー」
この毎朝恒例の挨拶を見ると『朝飯作るか…』という気分になるのはどうしてだろうか。
俺──オリバ・ディアストは、もう50代の両親の“いってらっしゃいのキス”を横目に朝飯を作り始めた。
毎朝おじさんとおばさんのキス見せられる[漢字]息子[/漢字][ふりがな]こっち[/ふりがな]の身にもなってくれ、とは思うが正直小さい頃からこうなのでほぼ風景である。そもそも、普通の家はこう言うことを子供の前でしないという事実に気がついたのも10歳くらいの頃だった。
母に『キスは夫婦にならないとしちゃダメ!』としつこく教えられていたのもあったと思うが、そのことに気がつくまでに何もやらかしていないのを褒めてほしい。
「オリバ、今日も早く出るの?」
「……あぁ。道場に行って特訓に付き合わないと」
目玉焼きを焼いている間、ひたすら袋からパンを出して食べている俺に台所に戻ってきた母が声をかけてくる。
誰の特訓に付き合うかとか言うと面倒くさいので言わないでいると、やはり文脈として不自然だったのか母が頬をピンク色に染める。
うわ、まずい。直感的にそう思い逃走しようとしたが、それも虚しく母の口から爆弾が投下された。
「シャノンちゃんの特訓かぁ、なるほどなるほど……てか、あんたらどこまでいったの?」
「……ドコマデ…?」
ドコマデ、という聞きなれない単語が耳をかじってそのまま彷徨う。顔に出ていたのか、母が呆れた顔をするとまたもや爆弾第二弾を投下した。
「手繋いだの?それともキスまで行った?」
「……え…?……んなわけねーだろボケナスがぁ!!!!!!!」
母の二つの爆弾によりやっと問いの意味を理解した俺は、勢い余って持っていたパンを落とし、そのまま叫び出した。そもそも付き合ってないって言っただろ母さん!!!!!
「え〜、じゃあせめて両想いとか…」
「………今んとこ、望みゼロ」
隠して変なタイミングで晒されるより、自分からいいタイミングで言ったほうがマシだ。諦めというか悟りというか、そんな感情になった俺は隠すことを諦めた。
「え〜、でもなぁ。母さんが見た感じ、望みが全くない感じではなかったような…」
「母さんの勘って当てにならないんだよ…」
「ふふ、母さんをなんだとお思いで?地元の恋愛マスターよ!恋愛に関してだったら死ぬほど鋭いわよ」
母は癖のある黒々とした長髪を人差し指で巻取り、得意げに言った。正直信用ならんが。
でもまぁ、昔っから恋愛相談をよく持ちかけられていたのは、やっぱり母の発する『恋バナオーラ』が俺にも遺伝したからなんだろうか。ちょっとやだな。
「……まぁ、それはさておき…彼女、自分でも気がついてないけどちょっと意識し始めてると思うよ」
「……ふぅん。まぁ、俺行くわー」
「あら、意外とドライ」
俺は着替えて家を出ると、道場まで歩く。
母の言葉は信用ならない、信用ならないけど……ちょっと嬉しくなったのは事実だ。仕方ない。
ふと前を向くと、建物に寄りかかって空をぼーっと眺めている見慣れた姿を見つけた。シャノンだ。なんでここに?
「あっ、オリバ!!!!」
「……え、なんでここに?」
「ちょっと用事があったついでに、お迎えにあがりました〜!お兄さん、エスコートして差し上げましょうか?」
意地悪に笑ったシャノンが、さっと手を俺の前に出す。え、掴めってこと?え、え???
白い手のひらに、細くて長い指。触ったら壊れるんじゃないかと思うが、なんのバグが起こっているのかこの拳は最強だ。意味わからん。
ふと、脳裏に先ほどの母の爆弾が蘇る。
『あんたら、どこまでいったの?』
『手繋いだの?それともキスまで行った?』
「……あれ、オリバどうした?そんなにエスコート嫌だった?てか、遊びだから。まじでエスコートできる自信ないから」
「……あー、なんでもない。いくぞー」
シャノンを引き連れて歩き出すと、街の色がまだ淡いことに気がついた。早朝のピンと張った空気に、淡い色の街。そんで、後ろで騒ぐシャノン。
彼女の手に目が行った後、小さな口に目が行ってしまったことはぶん殴ってかき消して墓まで持っていくとして──
どうしようかな、結構マジで好きだわ。
- 1.第一章 姉妹
- 2.第一章 葬式
- 3.第一章 好みどストライク事件
- 4.第一章 武闘大会予選当日
- 5.第一章 武闘大会 本戦『決勝』
- 6.第一章 デート目撃
- 7.第一章 ガトスの好み問題
- 8.第一章 宮殿訪問
- 9.幕間 望まない気づき
- 10.番外編 ある少女の世界観賞
- 11.第二章 シャノンの色恋沙汰
- 12.第二章 ビタミンカラーの脅威
- 13.第二章 天性の人たらし
- 14.第二章 バレスト王国
- 15.第二章 ビンタ嬢と緊急停止
- 16.第二章 一期一会を超えた夕暮れ
- 17.第二章 薬売りのオリバ
- 18.第二章 防御専門家のアドバイス
- 19.幕間 才能の種類
- 20.番外編 恋バナ爆弾、投下。
- 21.第三章 死の気配
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