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白狼クストーデ

#19

幕間 才能の種類

 10歳の頃、一人の女の子が道場に新しく入ってきた。
 名前はシャノン=ウォーカーというらしく、俺と同い年。癖がついた肩につくくらいの銀髪、大きい煙色の吊り目に色の白い肌、スッと通った鼻筋に形のいい唇。
 そんな美貌の持ち主である彼女は、道場の生徒を少し騒がせた。

 このオール武術道場は12歳以下が学べる場所と、13歳から18歳まで学べる場所、それ以上が学べる場所がある。人数が一番多いのは13から18歳だが、12歳以下の部門にもそこそこの人数がいる。
 彼女はその美貌とフレンドリーな性格で、この道場のほとんどの人に可愛がられていた。

 俺は人気者の彼女と関わる機会はあまりなかったが、友達が彼女のことを好いていたため彼女の話を聞く機会は何度でもあった。
 ある日、別の人との手合わせを終えた俺に彼女が駆け寄ってきた。

「オリバ=ディアストさん、だよね?」
「あ、え、はい。どうしたの?」
「シャノン=ウォーカーです。手合わせをお願いしたいの」
 俺──オリバ=ディアストは単純に驚いた。人に手合わせを頼めるのは、基本の技をマスターしてからだ。
 基本の技はその技をマスターする用の組み手で行われ、師範であるオールに合格点をもらうまで終わらない。シャノンはこの道場に来てから1ヶ月も経っていないのにその技をマスターしたことになる。

「基本の技は?」
「ちゃんとマスターもらったよ!これ許可証」
「……すごいな、まだ1ヶ月も経ってないのに…」
 彼女が出したものは正真正銘、ちゃんとした許可証だ。
 彼女はにへっとはにかむと『早くオリバと手合わせしたくて頑張ったんだ』と言った。

「俺、そんなに強くないぞ?」
「そうなの!?なんか、他の人と空気違うから最強なのかと…」
「どっちかっていうと弱めだな」

 シャノンと雑談しながら手合わせの体制を整える。手合わせをお願いした方が後攻というルールなので、俺は最初に技をかけることになる。
 シャノンの用意が整ったのを見て、俺は一直線に飛んだ。

 シャノンはそれをひらりとよけ、俺を羽交い締めにしようとする。が、俺のそんなにうかうかと捕まっているわけにもいかないので技をかける。
 強い。本当に初心者なのか?
 シャノンは基本の技しか使っていない。こっちには習ったたくさんの技があるのに、それでも互角だ。
 彼女の気の強そうな瞳が、繊細なガラスのように曇る。その時の衝撃が、いまだに忘れられない。

[水平線]
「……った…」
「オリバぁ!!!!起きた!?ごめん力加減間違えちゃって!」
 目を開くと真っ先に目に入ったのは、銀髪をショートカットにした少女──シャノン=ウォーカーだった。
 あたふたと慌てふためく彼女の姿にホッとしながらも、体を起こす。シャノンの新技の開発に付き合っていたことを一瞬忘れていた。

「お前、昔っから才能のレベル違うよな…」
「……そんなことないよ!だって最初の手合わせオリバが勝ったじゃん」
「あれで負けてたら俺の立場ねぇよ」
「あそっか。やべっ」
 彼女は心配そうだった顔をコロッと笑顔に変え、愛嬌のある顔でこちらを見る。心臓があからさまに動いた。
 いつからか彼女は圧倒的な才能の持ち主からライバルに変わり、今は戦友という関係になっている。もう少し近くに寄りたいと願うのは、贅沢なことだろうな。

「……才能、ねぇ…、自分が望んだわけじゃないんだけどな」
「じゃあ何の才能が欲しかったんだ?」
「私は……、そうだね。魔術の才能が欲しかったかも。親、魔導書の専門家だったから」
 10歳の時に死んだけどね、と彼女はいたって軽い口調で喋る。
 ずっと気になっていた。彼女の妹の話はたくさん聞いているのに、親の影が見えないこと。魔法学校に通っていたこともないのに、魔法を使う魔法武術へのポテンシャルが非常に高いこと。街中でアルバイトをしているのを見かけたこと。

 俺はかける言葉が見つからずに、数秒黙った。すると彼女が俺の言葉を封じるように立ち上がった。

「ごめん!困ること言ったね。お水持ってくるわぁ」
「……ちょっと待て」
「流石のシャノンさんでもこれ以上は怒──」

 やばい。




『伏せろシャノン!!!!!!!』



 死ぬ。

作者メッセージ

──異常事態、発生。

2026/02/26 06:42

すい
ID:≫ 0.LEY4vV85UM2
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