最近、アズの様子がおかしい。
おかしいというか挙動不審なのだ。大体私が道場から帰ってくると、ものすごい物音が部屋から聞こえる。彼女はなんてことないように振る舞っているが、シャノンさんを舐めるなよ。バレバレである。
そして、私が家にいる日にも『友達と遊んでくるー』と外へ飛び出していって、夕方まで帰らない。もうアズも14歳になったし、あまり干渉されたくないだろう。そう思う反面、寂しさと心配さが同時に押し寄せている複雑な姉心──
バシッ、という音と共に鈍い痛みが頬に走る。やっべ、後輩の練習に付き合ってたんだった。
「あっ、すみません!痛くないですか?赤くなってますよ!」
「ふふ、シャノンさんを舐めてもらっちゃあ困るねぇ〜!ってか、いいパンチ出すようになったじゃん!」
「ありがとうございます!さすがですシャノンさん!」
ふわりと無邪気な笑顔で微笑む彼女は、ミルシャ=フォン=スリェリザ。この道場の中でも指折りの名家生まれの少女で、ふわっとしたミルクチョコレートのような髪の毛とパステル調の不思議な垂れ目が可愛らしい。
他の門下生の邪魔にならないよう端により、彼女は見るからに高そうな水筒に口をつける。これは、彼女の息抜き雑談タイムの合図だ。隣に座ると、ミルシャは満足そうに口を開いた。
「そういえば、最近オリバさん夜にばっかりくるんですよ!何かあったんでしょうか?」
「ん〜、心当たりがないって言ったら嘘になるけどぉ…」
オリバはこの前のことがあってから道場にくる時間を私とずらしているようで、しばらく会っていない。ちぇ、次あったら思いっきりいじってやろうと思ってたのに。……だから来ないのか。
ふと、彼女は『あの子とか、ほら』と訓練中の一人を指差した。オレンジ色のポニーテールが揺れる──確か、ケイラ=スペートニーだったか──最近負け続きの子だ。
「彼女、オリバさんが来ないから落ち込んでて…」
「へー、そんなにオリバに懐いてるの?」
「いや、そうじゃなくって…」
ミルシャは私の耳元に顔を近づけると、ほんのり赤くなった顔でこういった。
「恋ですよ、こ・い。きゃっ、言っちゃった!」
「……わぁーお。そりゃ落ち込むわけですわな」
「ものすっごい顔が引き攣ってますけど」
最悪だ。すごく。
オリバが私のことを好きで、ケイラがオリバを好きで……これが三角関係とやらか。人生で経験したくないことランキング上位に位置してるんですけど。
まぁ、私とケイラの接点はほぼないから、三角ではないか?
「あっ、もしかして……シャノンさんって…その、オリバさんのこと…」
「その逆」
顔を赤らめて言うミルシャ。だが、私の返答を聞いてなんとなく察したのか、なんともいえない表情をしている。
しばらくの沈黙。それを破ったのは、ミルシャでも私でもなく──
「あの、ウォーカーさん。少しお話しいいですか」
オレンジ色の髪に気の強そうな赤色の目、緑色の宝石がついたピアスを身につけた、ビタミンカラーの結晶のような少女。
隠しきれていない殺意と嫉妬心をその目に秘めた、ケイラ=スペートニーだった。
おかしいというか挙動不審なのだ。大体私が道場から帰ってくると、ものすごい物音が部屋から聞こえる。彼女はなんてことないように振る舞っているが、シャノンさんを舐めるなよ。バレバレである。
そして、私が家にいる日にも『友達と遊んでくるー』と外へ飛び出していって、夕方まで帰らない。もうアズも14歳になったし、あまり干渉されたくないだろう。そう思う反面、寂しさと心配さが同時に押し寄せている複雑な姉心──
バシッ、という音と共に鈍い痛みが頬に走る。やっべ、後輩の練習に付き合ってたんだった。
「あっ、すみません!痛くないですか?赤くなってますよ!」
「ふふ、シャノンさんを舐めてもらっちゃあ困るねぇ〜!ってか、いいパンチ出すようになったじゃん!」
「ありがとうございます!さすがですシャノンさん!」
ふわりと無邪気な笑顔で微笑む彼女は、ミルシャ=フォン=スリェリザ。この道場の中でも指折りの名家生まれの少女で、ふわっとしたミルクチョコレートのような髪の毛とパステル調の不思議な垂れ目が可愛らしい。
他の門下生の邪魔にならないよう端により、彼女は見るからに高そうな水筒に口をつける。これは、彼女の息抜き雑談タイムの合図だ。隣に座ると、ミルシャは満足そうに口を開いた。
「そういえば、最近オリバさん夜にばっかりくるんですよ!何かあったんでしょうか?」
「ん〜、心当たりがないって言ったら嘘になるけどぉ…」
オリバはこの前のことがあってから道場にくる時間を私とずらしているようで、しばらく会っていない。ちぇ、次あったら思いっきりいじってやろうと思ってたのに。……だから来ないのか。
ふと、彼女は『あの子とか、ほら』と訓練中の一人を指差した。オレンジ色のポニーテールが揺れる──確か、ケイラ=スペートニーだったか──最近負け続きの子だ。
「彼女、オリバさんが来ないから落ち込んでて…」
「へー、そんなにオリバに懐いてるの?」
「いや、そうじゃなくって…」
ミルシャは私の耳元に顔を近づけると、ほんのり赤くなった顔でこういった。
「恋ですよ、こ・い。きゃっ、言っちゃった!」
「……わぁーお。そりゃ落ち込むわけですわな」
「ものすっごい顔が引き攣ってますけど」
最悪だ。すごく。
オリバが私のことを好きで、ケイラがオリバを好きで……これが三角関係とやらか。人生で経験したくないことランキング上位に位置してるんですけど。
まぁ、私とケイラの接点はほぼないから、三角ではないか?
「あっ、もしかして……シャノンさんって…その、オリバさんのこと…」
「その逆」
顔を赤らめて言うミルシャ。だが、私の返答を聞いてなんとなく察したのか、なんともいえない表情をしている。
しばらくの沈黙。それを破ったのは、ミルシャでも私でもなく──
「あの、ウォーカーさん。少しお話しいいですか」
オレンジ色の髪に気の強そうな赤色の目、緑色の宝石がついたピアスを身につけた、ビタミンカラーの結晶のような少女。
隠しきれていない殺意と嫉妬心をその目に秘めた、ケイラ=スペートニーだった。
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