『2人とも、逃げろ!』
黒いナニカに包まれた、見覚えのある小さな書店。
その中に躊躇なく飛び込んでいく、1人の男性。
『私たちは大丈夫だから。』
優しい声で『いきなさい』と微笑んだ煤だらけの女性の顔。
背中には、気を失った少女が。
炎と闇に包まれる書店に飛び込んだあの夫婦の最後の姿を、見ないように目を閉じて見知ったぬくもりと重みを背負ったまま駆け出した。
がむしゃらに。ただただまっすぐ。遠くへ向かって。
[水平線]
『武闘大会の予選に出場される方は、武闘館一階受付に──』
朝っぱらから町中に鳴り響くアナウンスは、武闘大会の予選が今日であることを示していた。
「シャノン、起きろやぁぁぁぁ!!!!!!!!」
アナウンスに負けないアズの怒号が家中に響くと、必死に掴んでいた布団を引き剥がされる。
「まだ寝る…予選まで時間あるでしょ…」
なぜこんなに朝早く起こされなくてはならないのか。
いや、普通に予選まで2時間あるだろ。
「いや、私がお腹すいたから飯作って。」
「……いい加減自分で作れるようになれよ。」
「練習したくても食材がもったいなくて…」
えへへ、と決まり悪そうに笑うアズを布団から目だけ出して眺める。
うん、可愛い。朝から目の保養。
私が美女好きになったのもこいつのせいかもしれない。
「仕方ない…ちょっとは手伝いなよ!」
「わかってるってぇ!さっすがお姉様〜!」
「現金なやつめ…」
「うるせぇ!」
適当に駄弁りながら朝食の支度をすると、2人で完食した。
[水平線]
さて、予選会場へ到着!受付もバッチリ!
後はキルンを探すだけだが…
アレンちゃん連れてきてたりしないかなー?
ふと、彼の目立つ赤髪が目に入る。
キョロキョロと周りを見渡しているだけのようだが、そこら辺の人々の視線を集めている。
そのうちナンパでもされるんじゃないか?
ナンパ撃退とか下手そうだしな、話しかけてやろう。
「やっほー元気?」
「いや、元気じゃなきゃ来ない。」
苦笑してこちらに低い声で返すキルン。
アズの高い声ばかり聞いていたからかキルンの声が耳にあまり馴染まない。
「まぁそっか。………あ。」
少し先に人だかりができている。
その人だかりから覗く長身の男──歴代チャンピオンだ。
スターのようにカッコつけて歩いている姿を見ると吐き気がするが、確かに彼は強い。
なんというか、人を小馬鹿にするような戦い方をしてくる。
去年の大会もその戦い方が気に食わなく、実力では圧倒的に勝っているのに頭脳戦で負けた。
『どうした?』と言わんばかりの顔でこちらを向いてくるキルン。
まぁ、キルンとは戦ってみたいし警告はしておくか。私と違って頭も切れるし実力もあるから大丈夫だろうけど。
「あの男と当たったら諦めた方がいいかもよ〜」
「なんで?」
「あいつ、歴代チャンピオン。」
ドヤ顔でキルンの方を見ると、彼は表情を変えずに向こうを見た。
「あぁ、そう言うことか。なら心配無用だ。……それよりも──」
チャンピオンのいる人混みとは真逆の方を指差し、こう言った。
「あいつについて教えてくれ。」
彼の指の先にいるのは変わった雰囲気をした男だった。
マジシャンのような見た目をしており、強そうな人が揃うこの予選会場とは不釣り合いな気がする。
それに、見たことない。
「あいつは初出場だよ?」
そう言った瞬間、キルンの顔の熱がスゥッと引いた気がした。
マジシャン男の方を見て口をぱくぱくしている。
キルンが何をそんなに怯えているかはわからなかったが、きっとあのマジシャン男の何かに勘付いたのだろう。
今回の本戦は、死人が出るかもねぇ。
そんなことを思っていると、予選開始の合図がなった。
黒いナニカに包まれた、見覚えのある小さな書店。
その中に躊躇なく飛び込んでいく、1人の男性。
『私たちは大丈夫だから。』
優しい声で『いきなさい』と微笑んだ煤だらけの女性の顔。
背中には、気を失った少女が。
炎と闇に包まれる書店に飛び込んだあの夫婦の最後の姿を、見ないように目を閉じて見知ったぬくもりと重みを背負ったまま駆け出した。
がむしゃらに。ただただまっすぐ。遠くへ向かって。
[水平線]
『武闘大会の予選に出場される方は、武闘館一階受付に──』
朝っぱらから町中に鳴り響くアナウンスは、武闘大会の予選が今日であることを示していた。
「シャノン、起きろやぁぁぁぁ!!!!!!!!」
アナウンスに負けないアズの怒号が家中に響くと、必死に掴んでいた布団を引き剥がされる。
「まだ寝る…予選まで時間あるでしょ…」
なぜこんなに朝早く起こされなくてはならないのか。
いや、普通に予選まで2時間あるだろ。
「いや、私がお腹すいたから飯作って。」
「……いい加減自分で作れるようになれよ。」
「練習したくても食材がもったいなくて…」
えへへ、と決まり悪そうに笑うアズを布団から目だけ出して眺める。
うん、可愛い。朝から目の保養。
私が美女好きになったのもこいつのせいかもしれない。
「仕方ない…ちょっとは手伝いなよ!」
「わかってるってぇ!さっすがお姉様〜!」
「現金なやつめ…」
「うるせぇ!」
適当に駄弁りながら朝食の支度をすると、2人で完食した。
[水平線]
さて、予選会場へ到着!受付もバッチリ!
後はキルンを探すだけだが…
アレンちゃん連れてきてたりしないかなー?
ふと、彼の目立つ赤髪が目に入る。
キョロキョロと周りを見渡しているだけのようだが、そこら辺の人々の視線を集めている。
そのうちナンパでもされるんじゃないか?
ナンパ撃退とか下手そうだしな、話しかけてやろう。
「やっほー元気?」
「いや、元気じゃなきゃ来ない。」
苦笑してこちらに低い声で返すキルン。
アズの高い声ばかり聞いていたからかキルンの声が耳にあまり馴染まない。
「まぁそっか。………あ。」
少し先に人だかりができている。
その人だかりから覗く長身の男──歴代チャンピオンだ。
スターのようにカッコつけて歩いている姿を見ると吐き気がするが、確かに彼は強い。
なんというか、人を小馬鹿にするような戦い方をしてくる。
去年の大会もその戦い方が気に食わなく、実力では圧倒的に勝っているのに頭脳戦で負けた。
『どうした?』と言わんばかりの顔でこちらを向いてくるキルン。
まぁ、キルンとは戦ってみたいし警告はしておくか。私と違って頭も切れるし実力もあるから大丈夫だろうけど。
「あの男と当たったら諦めた方がいいかもよ〜」
「なんで?」
「あいつ、歴代チャンピオン。」
ドヤ顔でキルンの方を見ると、彼は表情を変えずに向こうを見た。
「あぁ、そう言うことか。なら心配無用だ。……それよりも──」
チャンピオンのいる人混みとは真逆の方を指差し、こう言った。
「あいつについて教えてくれ。」
彼の指の先にいるのは変わった雰囲気をした男だった。
マジシャンのような見た目をしており、強そうな人が揃うこの予選会場とは不釣り合いな気がする。
それに、見たことない。
「あいつは初出場だよ?」
そう言った瞬間、キルンの顔の熱がスゥッと引いた気がした。
マジシャン男の方を見て口をぱくぱくしている。
キルンが何をそんなに怯えているかはわからなかったが、きっとあのマジシャン男の何かに勘付いたのだろう。
今回の本戦は、死人が出るかもねぇ。
そんなことを思っていると、予選開始の合図がなった。
通報フォーム
この小説の著作権はすいさんに帰属します