儀式とやらが始まった。
神主が多分神聖であろう舞を踊り、変わった呪文を唱え出す。
正直言ってすごく暇だ。
“選ばれし者”とかそういうのに興味はないし、初老の神主が踊るとてつもなく微妙な踊りも飽きてきた。
不謹慎かな、と思って周りを見ると、ほとんどの人が退屈そうに背中を丸めていた。
ふと、前の方にいる火影に目をやる。
彼は驚くほど真剣にその舞に見入っていて、退屈だとか飽きたとかそういうそぶりを一切感じさせなかった。
取り憑かれたように神主の方を見入っている火影を、少し不気味に思った。
それと同時に、彼が陰陽師の卵だということを実感させられた。
彼が帯櫻神社に現れたのは、二年前ほどだったと思う。
私が今踊っている神主に手紙を届けに来たところ、彼がこの神社に所属している高齢の陰陽師に箒で叩かれているのを見つけた。
少々心苦しいが見なかったことにして手紙を届け大鳥居の方に戻ると、彼は桜の大樹の根元にうずくまっていた。
流石に可哀想になって声をかけてから、手紙を届けては話すような関係である。
よく友達かと聞かれるが、そうではないと答えている。
努力家で何かあったらすぐに動く度胸の持ち主に、私なんかが友達になれるはずがない。
第一、火影がどう思っているか分からないし、迷惑だろう。
暗い方向に引きずり込まれていく思考を持ち直すと、神主が朱色に燃え盛る火を燭台に灯していることに気がついた。
神主が燭台を手に持ち、深呼吸して回転する。
すると私の胸の前に、黒く小さな火が灯った。
その火は、どくどくと渦巻く呪いのようだった。
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