朱の提灯と鳥居が鮮やかに輝く美しい国、[漢字]櫻井国[/漢字][ふりがな]サクライコク[/ふりがな]に、1人の飛脚が駆けていた。
名を[漢字]夜雨[/漢字][ふりがな]ヨサメ[/ふりがな]といい、齢15の国内専門飛脚である。
彼女は夜の闇にも負けない美しい黒髪を跳ねさせながら、国内で一番大きな鳥居を目指していた。
鳥居の奥には樹齢200年にも及ぶ桜の巨木が、国を守るようにどっしり構えている。
大きな鳥居と桜の木に礼儀正しく一礼すると、彼女は神社の御社へ黒い瞳を向けた。
目線の先には暗い紅色の髪をした、夜雨より一つか二つ上の少年が箒片手に庭掃除をしていた。
夜雨「[漢字]火影[/漢字][ふりがな]ヒカゲ[/ふりがな]、届け物。」
火影と呼ばれた少年はパッと顔を上げると、まるで炎のような色味の瞳を輝かせた。
火影「サンキュ!てか、俺にって誰から…?」
夜雨「さあね。」
その問いに冷たく返して去ろうとする夜雨を火影は引き留めた。
火影「…いや…えっと…桜餅、余ってるから食ってかねぇ?」
夜雨「さくら、もち…?」
夜雨の顔が一気に曇り、目をおどおど動かし始める。
火影「あっ…い、嫌ならいい。そ、それじゃ!!!!」
返事を返す間もなく、火影は慌てて御社に戻って行った。
夜雨は先ほどの冷たい表情とは一転し、申し訳なさと怒りが混ざったような表情をしていた。
息が切れるのも気にせず、一心不乱に鳥居を抜けて走り出す。
素晴らしい桜並木や提灯の街並みに目をやることもせず、ただ何かから逃げるように走り続けていた。