ここは、魔法の使える世界。
町中は魔力で溢れ、空には箒が飛び交い、大体の人が幸せそうな笑顔を浮かべる。
そんな平和な世界だからこそ、人々は刺激の強い娯楽を求める。
「【ファランド】」
「…ぐっ…【エクスプリズム】!!!!!!」
ここは、大衆酒場と地下闘技場が合体した場所。
酒を飲みながら野次を飛ばす観客たちに、戦いという名の娯楽を提供する場所だ。
場内には炎が飛び交い、小さな電気の勢いは消えてしまっている。
ポニーテールの少女の元に、飛び交っていた炎が一気に集まる。
ふっと彼女がそれに息を吹きかけると、相手の元に煙が向かった。
相手が怯んだすきに、彼女は大本命である炎の塊を容赦なくぶち当てた。
「ぅ…あ…」
相手は火傷を負い、倒れてしまった。
『ジェット選手!まさかの敗北!大の大人に1人で勝利する、一体この少女は何者なのか〜!?』
面白おかしくアナウンスする司会を無視し、彼女は席に戻って行った。
「すげぇな嬢ちゃん!名前は?」
「ジーナ。お前は?」
「レルクだ。いや〜、お前さんみたいな小柄な嬢ちゃんがあいつに勝っちゃうとは驚いた!」
大柄で強面の男性と会話をしながら、少女──もとい、ジーナは炭酸の強いジュースを一気に飲み干す。
ジーナ「へぇ、お前武器屋やってんだ。何売ってんの?」
レルク「剣とか杖とかだな。よかったら今度来てくれよ。この近くなんだ。」
ジーナ「そうするかな。もうすぐ魔法学園の入学式だし。」
レルク「へぇ、どこ行くんだ?」
不思議そうに尋ねるレルクに、ジーナはなんでも無いように告げる。
ジーナ「ヴェルアー魔法学園。」
レルク「ヴェ、ヴェルアー!?」
驚いたレルクが立ち上がり、椅子が後ろに倒れる。
周辺の人々がその音に気が付かないほど、酒場は騒がしかった。
レルク「ヴェルアーってったら、名門中の名門じゃねぇか!?通りで強いわけだぜ…」
ジーナ「でもDクラスだからな…」
レルク「そこら辺にいる奴らだとFでも入れるかあやしーレベルだぞ…」
ジーナ「へぇ。ま、今日は帰るわ。近いうちにお前の店に顔出すよ。」
そう言って、彼女は暗くて騒がしい酒場から去っていった。