私とアズが向かった場所───それは、墓地だ。
たくさんの十字架が立っているが、今日から武術の師範である『オール』が眠る場所だ。
私たち姉妹にとても良くしてくれていて、私の相談相手であり友人だった。
棺に土が被せられるのを見て、目頭が熱くなる。
───わしが死んだら、泣いてはいけないよ。お前が泣いていたら、わしはこの世に残らねばならん。
ふと、師範のしゃがれた低い声が頭に響く。
私が泣いたら、彼は幽霊としてずっと彷徨うことになる。
それはそれでいいかもしれないが、怒られそうなので下唇を噛んで我慢する。
やがて棺が全て埋まり、私たちは墓地を後にした。
「ねぇ、シャノン。」
式中は一言も話さなかったアズが私を呼ぶ。
彼女は喪服を着ていると、黒い髪の毛のせいもあってか全身真っ黒に見えた。
「…何?」
自分の銀髪や煙のような色の目は、アズと血のつながりがないことを象徴しているようで少し悔しくなる。
「…オールさんはさ、生まれ変わったら何になると思う?」
いつもは溌剌としていて棘のある彼女の言葉だが、今日は棘を取っ払ったように丸く、それでいて素直だった。
「さぁ、ゴリラにでもなるんじゃない?」
「…まぁ、怪力だしね。だいぶ失礼じゃない?」
「褒め言葉だよ。師範は人類最強を目指してたから。」
「先帰ってな。私はもうちょっとここにいる。」
どこか上の空になってしまった声を誤魔化すように、アズを先に帰らせた。
彼女は私が1人になりたいのを察していたようで、反抗することなく素直に家路についた。
近くにある噴水に腰掛け、空を眺める。
「そういえば、師範、誰かに会え、って言ってなかったっけ…え〜っと…」
キ、から始まる名前だったことは覚えている。
「キリン…だっけ…いやそんなわけないよな…」
うんうん唸っていると、アズの言葉が出てきた。
───キルン=フェなんとかっていう強い勇者いるらし〜よ。ってことで!シャノンに一つ頼みが…
ここまで思い出したところで、フルネームが頭に浮かんだ。
「そうだ!!!!!キルン=フィアビュレジだ!!!!!!!」
街のど真ん中で大声を出したせいで、周りの人に変な目で見られる、が気にしない。
───そのキルンなんとかの情報集めてきてよ、はいこれ写真。武闘家だから会うことあるでしょ。
さっきの続きが頭の中で流れ、写真の存在を思い出す。
赤毛で緑の目の同い年くらいの子だった気がする。
タイプではないが顔は整っていた。
「さて、あのお店でお菓子を買うか。」
パッと顔を上げた先にいたのは、先ほど思い出したキルンだった。
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