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鋼鉄の時空:朝鮮半島1950 ―凍れる咆哮―

#12

第9話:断絶のハイウェイ

1950年7月1日。
成層圏での飛行船爆発と、米軍の「奇跡的な沈黙」によって、世界が一瞬の静寂に包まれたのも束の間だった。ソ連本国が内戦で機能不全に陥り、未来技術の供給が途絶したことを悟った北朝鮮軍最高司令部は、狂気に近い決断を下す。
「……ソ連が助けぬなら、我らのみで南を平らげるまでだ!」
自衛隊の技術を模倣したT-34/85改の残存部隊、および数個師団の歩兵軍が、再びソウル奪還を目指して南進を開始した。彼らはもはや「未来」に頼らず、人海戦術と、鹵獲した旧式の対戦車兵器をかき集め、死に物狂いの突撃を仕掛けてきたのだ。
[太字][大文字]第1章:孤立するソウル[/大文字][/太字]
「艦長、北朝鮮軍の動きが止まりません! 議政府(ウィジョンブ)方面から、推定3万の兵力がソウル市街地へ向けて殺到中! 敵は無線をあえて使わず、伝令と手旗で連携しています。電子戦(ジャミング)が効きません!」
護衛艦「はぐろ」のCIC(戦闘指揮所)で、匠人三等海佐はモニターを睨んだ。
最新鋭の電子戦能力を持つイージス艦にとって、逆に「原始的な戦法」こそが最も計算しづらい脅威となっていた。
「……彼らは、自分たちが捨て駒だと理解している。……狂信的なまでの突撃だ」
ソウル北部の防衛線を守る10式戦車の部隊からも、悲鳴に近い通信が入る。
「こちら第1機甲連隊! 敵は歩兵の肉弾攻撃を併用! 戦車の死角から対戦車磁気吸着地雷を仕掛けてくる! 弾薬が足りない、射撃が追いつきません!」
[太字][大文字]第2章:匠人の焦燥[/大文字][/太字]
「はぐろ」は黄海上にあり、5インチ砲による支援射撃を続けていたが、市街地戦に突入しつつある現状では、誤爆の恐れから大規模な艦砲射撃が制限されていた。
「艦長、米軍はまだ再編成中で動けません。国連軍としての地上部隊の増援は、最短でもあと48時間かかります!」
「……48時間だと? その前にソウルは死地と化す。……『しなの』へ伝えろ。F-2による精密爆撃は継続。だが、地上の決め手が必要だ」
匠人は海図を指で叩いた。
「……陸自のC-2輸送機を全機投入しろ。横須賀、呉、佐世保に残っている全ての軽装甲機動車と高機動車、そして普通科部隊を、ソウル市内の金浦(キンポ)空港へ強行着陸させる!」
「危険すぎます、空港周辺には敵の対空機銃が……!」
「……やらねば、我々が守った漢江(ハンガン)の橋も、今度こそ爆破される。……歴史を、これ以上悲劇にさせるな!」
[太字][大文字]第3章:金浦空港の血戦[/大文字][/太字]
ソウルの西、金浦空港。
低空飛行で侵入するC-2輸送機の巨体に向かって、北朝鮮軍の14.5mm対空機銃が火を吐く。
「……左舷エンジン被弾! 構わず降りるぞ、ハッチを開けろ!」
輸送機が着地し、完全に停止する前に後部ハッチが跳ね上がった。そこから飛び出してきたのは、2026年の最新装備を纏った自衛官たちと、軽装甲機動車(LAV)の隊列だった。
「……対戦車ヘリ、AH-64Dアパッチ、発艦! 敵戦車部隊の側面に回り込め!」
空港の駐機場から飛び上がったアパッチが、30mm機関砲を唸らせる。
1950年の戦場に、漆黒の死神が舞い降りた。T-34/85改の薄い上面装甲を、現代の徹甲弾が容赦なく撃ち抜いていく。
[太字][大文字]第4章:泥沼の市街戦[/大文字][/太字]
しかし、北朝鮮軍の歩兵は、自衛隊の圧倒的な火力を前にしても、退却を知らなかった。
彼らはビルの陰、下水道、瓦礫の山に潜み、自衛隊の普通科部隊と至近距離での銃撃戦を展開した。
「……艦長、報告。……地上部隊、敵の猛攻により足止め。市街地中央部で、激しい混戦状態に陥っています」
匠人は「はぐろ」の艦橋から、はるか東、黒煙に包まれるソウルの空を見つめた。
核が消え、飛行船が燃えても、人間の「憎しみ」という名の燃料は、まだ尽きていなかった。
「……これこそが、本当の『戦争』か」
匠人は、自らの手で引き起こした歴史の歪みが、最も泥臭く、最も残酷な形で若者たちの命を奪い始めていることに、深い苦悩を感じていた。
その時、ソナー室から新たな警告音が響いた。
「艦長! 敵潜水艦、あるいは……潜水機動部隊を感知。……目標は、我が方の補給路である対馬海峡です!」
北朝鮮は、ソ連の残した「未来の遺産」を使い、最後の大博打に出ようとしていた。

2026/02/14 13:53

taku203503
ID:≫ 17/UklnAAecq6
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