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鋼鉄の時空:朝鮮半島1950 ―凍れる咆哮―

#10

第7話:ワシントンの沈黙と、燃える巨神

1950年6月28日。朝鮮半島からソ連、そして宇宙の境界線に至るまで、人類が手にした「未来の火」は、制御不能な臨界点に達しようとしていた。
高度2万メートルの成層圏。匠人三等海佐が駆るF-35Bは、銀色の超大型飛行船「ツァーリ・エレクトラ」の巨大な展望ドッキングポートへと、慎重にアプローチを続けていた。
[太字][大文字]第1章:瓦解する「平和の独裁」[/大文字][/太字]
「……こちら匠人。ドッキングを開始する。繰り返す、我々に敵意はない。対話を求める」
F-35Bの機首が、飛行船の巨大な円形ハッチに吸い込まれようとしたその時だった。
機体内の戦術データリンク「リンク16」が、かつてない激しさでアラートを鳴らした。地上、そして成層圏の全域で、異常な熱源反応が同時多発的に発生したのだ。
「艦長! 緊急事態です! 地球上に残存していた全弾道ミサイルのサイロ、および潜水艦内の発射筒が……次々と自爆(デトネート)しています!」
護衛艦「はぐろ」のCIC(戦闘指揮所)からの絶叫が、匠人のヘッドセットに突き刺さる。
「……核爆発ではない! 高性能爆薬による、物理的な破壊です! 全てのミサイルが、自らの信管を焼いて自爆しています!」
それは、先ほどのEMP照射によって「回路を焼かれた」はずのミサイル群が、最後のリミッターを解除し、自らを消し去るための自浄プログラムが作動したかのような光景だった。
[太字][大文字]第2章:崩落する天空の城[/大文字][/太字]
「何が起きた……!? 反乱軍の仕業か、それとも――」
匠人の言葉を、凄まじい衝撃波が遮った。
目の前にあった全長1キロメートルの巨体、「ツァーリ・エレクトラ」の船体中央部から、目も眩むような鮮烈な紅い炎が噴出した。
「……原子力リアクター、臨界突破! 飛行船内部で連鎖爆発が発生しています!」
「……脱出だ! 全機、即座に離脱しろ!」
匠人は操縦桿を強引に引き、アフターバーナーを点火させた。F-35Bが急旋回し、爆発する飛行船から逃れようとした瞬間、バックミラー越しに映ったのは、この世の終わりを象徴するような、美しくも残酷な光景だった。
銀色の外皮が内側からの圧力で弾け、何万立方メートルもの水素、そして過熱された高圧蒸気が夜空に放射状に広がっていく。ソ連が誇った「天空の要塞」は、たった数秒で巨大な「空飛ぶ松明(トーチ)」と化した。
[太字][大文字]第3章:燃え上がる成層圏[/大文字][/太字]
「……プロジェクト・ベルクート(フランカー)隊、全滅を確認。……飛行船の残骸、地上へ落下を開始しました」
成層圏の希薄な大気の中で、燃え上がる残骸が流星群のように地上へと降り注ぐ。その輝きは、朝鮮戦争の戦場にいた兵士たち、そしてモスクワで内戦を繰り広げていた反乱軍、さらにはワシントンのホワイトハウスから空を見上げる人々にも、はっきりと見えていた。
「平和の独裁」という、力による強制的な終戦を望んだジューコフ元帥の野望は、彼が頼った「未来の技術」自体の拒絶反応によって、粉々に砕け散ったのだ。
「……艦長、無事ですか!?」
「はぐろ」からの呼びかけに、匠人は激しく揺れる機体を制御しながら、荒い息を吐き出した。
「……ああ、無事だ。……だが、見てくれ。……空から『神の雷』が消えた。ミサイルも、飛行船も……全部だ」
[太字][大文字]第4章:ワシントンの沈黙[/大文字][/太字]
この瞬間、地球上から「未来の技術」によって造られた強力な長距離兵器は、そのほぼ全てが消滅した。
しかし、それは平和の到来を意味してはいなかった。
ワシントン、ホワイトハウスの地下深く。
スターリン派から提供された機密データを手に、トルーマン大統領はある決断を下していた。
「……ソ連の飛行船もミサイルも消えた。今、この地球上で『未来の力』を完全に保持しているのは、日本の自衛隊だけだ。……そして彼らは、我々の手に負えない。……彼らが次に何をするか、指をくわえて待っているわけにはいかない」
アメリカは、この「技術の空白」を突くべく、あえて自衛隊との直接対決を選択。
自衛隊のステルス性や電子戦を「物理的な数」で無力化するための、1950年代の工業力を限界まで動員した「鋼鉄の物量作戦」を秘密裏に始動させた。
「……艦長。ハワイ、およびフィリピンの米軍基地より、全艦隊が抜錨しました。……目標は、国連軍先遣隊。つまり、我々です」
「……皮肉だな」
匠人は、燃え尽きながら海へ落ちていく飛行船の欠片を見つめ、静かに呟いた。
「……人類を救うために引き金を引き、人類を救うためにミサイルを消した。……その結果が、味方であるはずのアメリカとの全面戦争か」
成層圏の静寂を切り裂き、F-35Bは「はぐろ」が待つ荒れる海へと降下を開始した。
それは、史上最悪の「日米決戦」の幕開けに他ならなかった。

2026/02/14 13:19

taku203503
ID:≫ 17/UklnAAecq6
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