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鋼鉄の時空:朝鮮半島1950 ―凍れる咆哮―

#9

第6話:銀色の審判者

1950年6月27日深夜。世界中の核ミサイルが謎の電磁パルス(EMP)によって無力化された直後、黄海の上空に現れたその「巨大な影」は、月明かりを遮るほどに巨大だった。
匠人三等海佐は、護衛艦「はぐろ」の艦橋から、夜空に浮かぶ銀色の巨体を見上げていた。それは2026年の技術で見ても異様な、全長1キロメートルを超える超大型の構造物。だが、レーダーが捉えたその反射特性は、意外な事実を物語っていた。
「……艦長。物体からの識別信号(信号パターン)を解析。……ソ連製、秘匿コード『ツァーリ・エレクトラ』。……これは衛星でも宇宙船でもありません。……原子力駆動の超大型硬式飛行船です!」
[太字][大文字]第1章:天空の要塞「ツァーリ・エレクトラ」[/大文字][/太字]
「飛行船だと……?」
匠人は絶句した。ソ連は未来の技術をミサイルや戦闘機に転用する一方で、1950年代の工業力でも建造可能な、究極の「空の要塞」を極秘裏に完成させていたのだ。
巨大な船体の中には、自衛隊のデータを元に強引に小型化された原子力リアクターが搭載され、そこから生み出される膨大な電力によって、強力な指向性EMP兵器を稼働させていた。世界中の電子回路を焼いた「神の雷」の正体は、この天空に浮かぶ怪物だった。
「報告! 飛行船より全広域放送。……『我らソ連臨時革命政府。スターリンの狂気による核の冬を防ぐため、全核兵器を凍結した。これより地球上の全ての戦争を停止させる』!」
「……反乱軍の仕業か」
匠人は、ジジ・ジューコフ元帥率いるソ連反乱軍が、この切り札を隠し持っていたことを悟った。彼らは「未来の技術」を、力による平和の強制……「平和の独裁」のために使おうとしていたのだ。
[太字][大文字]第2章:F-35B、神域への接近[/大文字][/太字]
「艦長、飛行船の周辺に、先ほど投降したはずのソ連製フランカー(Su-27模倣機)が集結しています。……彼らは反乱軍に合流し、飛行船の護衛に就いた模様!」
「……このままでは、世界はソ連反乱軍の『EMPの盾』に支配されることになる。それは、新たな冷戦……いや、技術による暗黒時代の始まりだ」
匠人は決断した。
「……『しなの』よりF-35Bを2機、緊急発進。偵察および通信の確保。……ただし、攻撃は厳禁だ。相手が『平和』を口にしている以上、こちらが先に引き金を引くわけにはいかない」
匠人自ら、2番機のコックピットに滑り込んだ。
キィィィィィィン――ッ!!
電磁カタパルトから弾き飛ばされたF-35Bが、垂直に近い角度で上昇し、成層圏に近い高度で浮遊する銀色の巨体へと迫る。
[太字][大文字]第3章:空中の対峙[/大文字][/太字]
高度2万メートル。
F-35Bのキャノピー越しに、匠人は「ツァーリ・エレクトラ」の全貌を目の当たりにした。銀色の布地に覆われた巨大な葉巻型の船体。その周囲を、獲物を守る蜂のようにソ連製フランカーが旋回している。
『こちら日本国自衛隊、匠人。……ツァーリ・エレクトラの指揮官へ。核の阻止には感謝する。だが、EMPによる世界の凍結は認められない。対話を求める』
無線機から、老練な、しかし力強い声が響いた。
『日本人よ。我々は、君たちがミッドウェーで米軍に見せた「圧倒的な盾」を学んだのだ。……力がなければ平和は守れない。この飛行船は、人類が二度とボタンを押せないようにするための番人だ。……立ち去れ、さもなくば貴艦の電子回路も焼くことになる』
[太字][大文字]第4章:不穏な接触[/大文字][/太字]
その時、地上の「はぐろ」に、もう一つの不穏な報告が届いた。
「艦長! ソ連本土のスターリン派残存部隊が、アメリカのトルーマン大統領に対し、極秘の『亡命と技術提供』を申し出ました! 彼らは、自衛隊の技術をさらに解析した、次世代の対抗手段をアメリカに渡そうとしています!」
匠人は、操縦桿を握る手に力を込めた。
ソ連反乱軍による「力の平和」に対し、追い詰められたスターリン派が、アメリカを巻き込んでさらなる技術競争(レース)を仕掛けようとしている。
1950年の朝鮮戦争という「代理戦争」の枠組みは完全に崩壊し、世界は、自衛隊の技術を核とした「三つ巴」の最終決戦へと引きずり込まれようとしていた。
「……歴史は、どこまで歪むつもりだ」
匠人は、巨大な飛行船の窓の奥に、不気味に赤く光る原子力リアクターの輝きを見つめ、静かに呟いた。

2026/02/14 13:17

taku203503
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