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鋼鉄の時空:朝鮮半島1950 ―凍れる咆哮―

#5

第5話:大気圏の攻防と、沈黙する神の雷

1950年6月27日、黄海。
護衛艦「はぐろ」のCIC(戦闘指揮所)は、これまでのどの戦場とも違う、静まり返った絶望に包まれていた。メインモニターの中央、平壌付近から垂直に立ち上がった赤い光点が、凄まじい速度で大気圏を突き抜けようとしていた。
「目標、弾道計算完了……。間違いありません、軌道は東京を指しています! 予想着弾時刻まで、あと12分!」
オペレーターの震える声。
匠人三等海佐は、モニターに表示された「推定威力」の欄を見つめた。自衛隊のプルトニウム精製技術を模倣し、ソ連が狂気の執念で完成させた初期型水爆。もし東京に落ちれば、1950年の日本は消滅し、未来への希望はすべて灰に帰す。
[太字][大文字]第1章:宇宙空間の迎撃[/大文字][/太字]
「……各艦、データリンクを大気圏外防衛(BMD)モードに切り替え。イージス・システム、SM-3ブロックIIA、発射準備」
匠人の声は、氷のように冷たく、かつてないほど鋭かった。
「はぐろ」の甲板にあるVLS(垂直発射装置)のハッチが開く。2026年当時の最新鋭迎撃ミサイル。それが今、1950年の空へ解き放たれようとしていた。
「ターゲット、大気圏再突入体(RV)を捕捉。……撃てッ!」
凄まじい衝撃波と共に、SM-3が夜空へ跳ね上がった。数秒後、第1段ブースターを切り離し、ミサイルは青白い炎を引きながら成層圏を突き抜ける。
宇宙空間、高度300キロ。
暗黒の真空の中で、キネティック弾頭(LEAP)が分離した。それは自身の赤外線センサーで敵ミサイルを捕捉し、時速数万キロという猛烈な相対速度で肉薄する。
モニターに映る二つの光点。
一瞬、画面が白く染まった。
「……命中! 宇宙空間での完全破壊を確認! 核汚染の心配はありません。……迎撃、成功しました」
CIC内に、安堵を通り越した嗚咽が漏れる。匠人はゆっくりと、止まっていた息を吐き出した。
「……第一段階は終わった。だが、まだ終わっていない」
[太字][大文字]第2章:反乱軍との密約[/大文字][/太字]
ミサイル迎撃の成功とほぼ同時に、通信室から緊急連絡が入った。
「艦長! ソ連国内の反スターリン派反乱軍……ジューコフ元帥の直属部隊より、暗号通信です。……『我ら、日本国自衛隊に対し、全面的な協力と共同戦線を申し出る』とのことです!」
匠人は即座に通信を繋がせた。
モニターに現れたのは、煤に汚れ、疲弊した表情のソ連軍将校だった。背後には、自衛隊の設計を模倣したIS-7改戦車が、燃え盛るモスクワの街角で砲火を交わしている光景が映っている。
「……日本人の艦長。我々は気づいた。スターリンがこの『未来の力』を使えば、人類は滅びる。……我々は今、平壌のミサイル基地を制圧するために動いている。だが、スターリン派の親衛隊が抵抗を続けている。我々に、空からの支援をくれ」
匠人は決断した。
「……了解した。F-2、およびF-35Bの第2波をソ連領内、ならびに北朝鮮北部へ向かわせる。……我々は『代理戦争』の当事者として、君たちを援護する」
[太字][大文字]第3章:神の如き干渉[/大文字][/太字]
自衛隊とソ連反乱軍による、歴史上あり得ない「共同戦線」が始まった。
「しなの」から発艦したF-2が、ソ連領内のスターリン派拠点を精密爆撃し、反乱軍の進撃路を切り開く。
しかし、事態は匠人たちの想像を超えた「次元」へと突入しようとしていた。
「……艦長! 異常事態です! 衛星軌道上、および地球全土の熱源反応が……消えています!」
「どういうことだ、説明しろ!」
「現在、スターリン派が発射準備を整えていた全弾道ミサイル、ならびにアメリカ、イギリスが保有する実験段階の核兵器……それら全ての『回路』が、同時に焼かれました! 全ミサイル、物理的に爆発することなく、完全に機能を停止しています!」
「はぐろ」のレーダーからも、先ほどまで世界中に点在していた「破滅の火種」が、まるで魔法にかけられたかのように一斉に消滅していた。
「……何が起きたんだ? 反乱軍の工作か?」
「いえ、違います。これは……高高度からの強力な指向性電磁パルス(EMP)照射です。……ですが、この精度、そしてこの広域性。……人間が作った兵器の出力ではありません」
[太字][大文字]第4章:沈黙する惑星[/大文字][/太字]
匠人は震える手で、窓の外の夜空を見上げた。
そこには、星々の合間に、今まで見たこともない「銀色の巨大な構造物」が、月の隣で静かに浮いていた。
「……未来からの介入、か?」
匠人は確信した。歴史をあまりにも歪めすぎた自分たちを止めるために、あるいは核による滅亡を阻止するために、さらに「先」の存在、もしくは時空の番人が姿を現したのだ。
地球上の全ての弾道ミサイルは鉄クズと化し、戦場には沈黙が流れた。
1950年の朝鮮戦争、そしてソ連内戦は、人知を超えた「絶対的な力」によって、強制的にその幕を閉じさせられようとしていた。
「……艦長。全機より入電。……『敵機、戦意喪失。全機、基地へ帰投する』とのことです」
匠人は、モニターに映る銀色の構造物を見つめながら、静かに呟いた。
「……私たちは、歴史の扉を開けすぎたのかもしれないな。……ここからが、真の試練だ」
武器を失った軍隊、混乱する世界、そして空に浮かぶ巨大な審判者。
匠人と「はぐろ」の戦いは、もはや「戦争」という言葉では括れない、未知の領域へと足を踏み入れていた。

2026/02/13 11:30

taku203503
ID:≫ 17/UklnAAecq6
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