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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#88

第六章 真実(2)

 ———あのときと違う。
 凱の視線の近くには、轟々と燃える邸があった。
 とても大きな邸だった。時庭の邸と比べるまでもないほどだった。
 前に来たときは、こんな邸はなかったはずだ。ただ、盆踊りの準備をしていた人がいただけ。———いや、盆踊りでなかったかもしれない。
 その邸が、燃えていた。
 [漢字]輻射熱[/漢字][ふりがな]ふくしゃねつ[/ふりがな]を、顔に感じる。
(中に人がいたり、しないよね……?)
 不安を覚え、周りの人に気づかれないように気をつけながらさらに近寄ってみようとする。
「———誰だ?」
 後ろから誰かに声をかけられ、肩を縮ませた。
 振り返ると、見覚えのあるような顔があった。
「……ああ、時庭の嫡男か」
 [漢字]仁井戸[/漢字][ふりがな]にいど[/ふりがな]だった。父の上司である。
「あ、……はい」
 なんと答えれば良いか分からず、とりあえず頷いた。
「そうか」
 仁井戸は、ゆるりと振り向き、燃え盛る邸を眺める。恍惚とした顔だった。
「父は、ここにいるんですか」
 聞いてみる。
「時庭君? 時庭君は別の場所にいるよ」
「そうですか……」
 しばし、沈黙が流れる。もうあたりは黄昏時になっていた。
「———これでまずはケリがついた。これは最初の一歩だ。残りも潰し、そしてここから平和な世を作るんだ……!」
 仁井戸が、燃える邸を見ながら、ぶつぶつと何かを呟いている。
 とても満足そうだった。
 どことなく、気味が悪かった。
「時庭の嫡男。お前も来るか?」
「え?」
「噂は聞いただろう。だが、そなたは関係ない。[漢字]本懐[/漢字][ふりがな]ほんかい[/ふりがな]を遂げたあとも、そなただけは助けてやろう」
 さっぱりよく分からないことを言われ、困惑する。
「———あの、これで失礼します」
 軽く断り、凱は仁井戸の傍を通り過ぎ、今度こそ斎の家に向かった。

[水平線]
「凱ー? 久しぶり〜……って来るのが遅すぎんだよお前、もう真っ暗だぞ!?」
 斎の家を訪ねるが否や、文句を言われた。確かに辺りはもう真っ暗だ。
「ごめんごめん、ちょっと寄り道しちゃって」
「どこ行ってたんだよ?」
「えっと……」
 何という名前の林だったか。
「———首塚山に、行ってたの」
 そう言うと、斎はあんぐりと口を開けた。
「はあ? どうしてわざわざ呪われているとかいう[漢字]曰[/漢字][ふりがな]いわ[/ふりがな]く付きの場所に行くの?」
「斎に言われたくないよ」
 そう反論する。「うっ」と言葉に詰まったようだった。
「あそこ今、火事だろ? 煙が見えるし。何が燃えてるんだよ?」
 二人で邸の中に入りつつ、斎が尋ねる。
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2025/10/23 16:19

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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