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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#86

第五章 異変(20)

「———凱様、朝早くに失礼いたします。少しよろしいでしょうか」
 翌朝、布団の上で[漢字]微睡[/漢字][ふりがな]まどろ[/ふりがな]んでいると、扉の外から誰かに呼ばれた。おそらく使用人の一人だろう。
「あ、はい。大丈夫です」
 慌てて布団から起き、部屋の扉を少し開ける。
 その使用人は少し聞きづらそうに、数瞬 瞳を伏せ、
「———[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]さんがどこにいらっしゃるか、ご存知でしょうか」
 と聞いてきた。
「え……?」
 思いも寄らない質問に、目を瞬かせた。
「部屋には、いないんですか……?」
 とりあえず、そう口に出した。
「それが、いらっしゃらないんです。荷物は置きっぱなし。使用人の皆んなで、あちこち探しました。けれど、どこにも———」
「え———」
 彼女は少し顔を伏せ、凱を見た。
「実は昨日、朝水さんに、凱様宛の伝言を頼まれているんです。最近、仲良くしていらっしゃるようですから、何かご存知かと思いまして———」
「伝言……ですか?」
「『心配しないでほしい』と。ただそれだけです。でも、突然いなくなったら心配の一つもするでしょう。昨日のうちに伝えておきたかったのですが、あいにく ご親戚の方々が凱様の部屋の近くにいるんですよ。今は[漢字]朝餉[/漢字][ふりがな]あさげ[/ふりがな]時でおられませんけれど」
 凱は気づかなかったが、親戚が凱を見張っているらしい。姉を近づけさせないようにするためだろうか。
「そう……ですか……。でも、よく分かりません。ごめんなさい」
「……承知いたしました。では、失礼いたします」
 後で朝餉を持って参ります、と言い残して、その使用人は下がっていった。
(姉さんがいなくなった……?)
 行く当てがあるのかもよく分からないが、この家から離れられる方が姉にとっては良いだろう。
 しかしこの折だから、百鬼と関係があるのではないかと思わずにはいられなかった。
(百鬼……? 百鬼といえば———)
 百鬼家について知っているかと姉に聞いたとき、明らかに姉は動揺していた。
 つまり、———姉は百鬼について知っているということだろう。
(でも、どうやって?)
 噂を聞いたのか。いや、噂が流れ始めたのは、凱が引きこもってからだ。
 百鬼。魔力。馨。久世。蓮。舞鶴。フミ。
 いろいろと思い出していて、はたと気づく。
(馨……? 馨さん?)
 手鏡。———手鏡。姉が馨から譲られた、手鏡。
(手鏡———)
 そこから聞いたのかもしれない。
(あの手鏡は、どこにあるのだろう。)
 まだ姉の部屋に置いてあるのだろうか。
 朝餉が来て、それを頬張りながら考えた。
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2025/10/22 16:49

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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