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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#85

第五章 異変(19)

「それで、今度は何の知らせを持ってきたの?」
 フミを両手で包んで静かに消すと、蓮は肩に乗ってきた舞鶴を見た。
 そのままじっと視線を交わしている。視線で意思の疎通を図っているようだった。
「そうか。あいつ、そんなところまで行ってしまったのか。もう始まるんだね。[漢字]首塚[/漢字][ふりがな]くびづか[/ふりがな]の邸は、あと少しで[漢字]陥[/漢字][ふりがな]お[/ふりがな]ちると思う。……お前だけが頼りだって、あいつに伝えておいて」
 蓮はため息を吐いた。
「舞鶴。お前の主には、もう伝えたのかな?」
 かすかに舞鶴は[漢字]首肯[/漢字][ふりがな]しゅこう[/ふりがな]する。
 舞鶴が蓮の肩から離れる。そして、そのまま飛び立っていった。
(舞鶴……? あっ———)
 久世が飼っていた烏だと凱はようやく思い出した。

[水平線]
 あれから一週間ほどの時間が経った。
 また妖怪が出るかもしれないから、と今度は通学を止められた。
 そのため、この一週間はほとんど家にいた。
 父はいつもより増して忙しくしている。あのとき、そしてあれから、いろいろな場所であれくらいの妖怪が現れるようになり、人員が足りなくなってしまったのだという。
 毎日のように、父の隊員たちの訃報が耳に入ってくる。
 泊まるかもしれない、と言っていた久世にも、あれから会っていない。時庭の邸にも来ない。
 それに、最近はよく分からない噂が広まっているようだった。
『魔法使いの一味が、呪術を使って 悪魔と共謀して人に害を与えている』———。
 まさに一週間前に会ったあの大柄な男の話と同じだった。
『魔法使いの一味』が、百鬼家を表しているのは間違いないだろう。
 そして、馨や久世の兄妹、蓮、そして世里や夕癸など蓮とともに凱たちを助けてくれた人たちも、百鬼家の一員であることも。
 ———あんなに必死に、凱たちを助けてくれた。
 あの人たちが、人々に害を与えるとは到底思えなかった。

 姉は、あれ以来、特に夜は見かけなくなった。姉と話すのは主に夜だから、当然姉とは話せていない。
 母や、姉を[漢字]忌[/漢字][ふりがな]い[/ふりがな]んでいた親戚たちは、凱を露骨に避けるようになった。
 会いにいっても無視されることが多くなったから、凱は自室に引きこもるようになった。
 食事の時間になると、決まって部屋の前に食事が置かれるようになったから、引きこもっていても困ることは無かった。

[水平線]
 辺りはすっかり真っ暗だった。
 誰かに見つからないように、そっと周囲を[漢字]窺[/漢字][ふりがな]うかが[/ふりがな]いながら裏門を出た。
 ふと風が吹いて、ぶるりと体が震える。思わず、手に抱えた"それ"を ぎゅっと抱きしめた。
 真冬の真夜中の寒さにはちっとも慣れない。古着ともいえないほど状態の悪いこの服では、当然だろう。
「あ、来たのね」
 ふわっとしたような、温かい風のような声がして、顔を上げた。少し先に、彼女はいた。
 ほっとして駆け寄る。ぎゅっと抱きしめられた。
「よかった、やっと会えた。……こんなボロボロの服で。寒かったでしょう? ずっと何もできなくて、ごめんなさい」
 抱きしめられた力と温かさで、泣きそうになった。亡き実母がいたら、こんなだったのだろうか。
 しばらくして、抱きしめていた手を緩めて、彼女は私の目を覗き込んだ。
 初めて、彼女の顔を直視した。自分とも似ていない、美しい顔。暗闇の中でも分かる、薄橙の瞳。
「もう大丈夫だからね。ほら、早く行きましょう」
「はい、———」
 彼女に手を引かれて、私は夜の中を走り出した。
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2025/10/22 08:03

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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