唯一魔力を受け継いでいるという『百鬼』という家についても知りたい。本当に馨たち兄妹の家なのだろうか。なぜ『内海』と名乗ったのか。
『百鬼家』は、時庭家———特に姉や姉の実母と関わりがあったのだろうか。あるとしたら、それは一体なんだろうか。
どうして、霊力者の筆頭たる時庭家の跡取りである凱は知らなくて、戸井君は知っていたのだろう。
———どこかで ガシャーン!と何かが大きく壊れる音がした。
近くに落ちた雷にも似た音だった。思わず耳をふさぐ。
「え、何……?」
教室内が一瞬で静まり返った。
いつか感じたことがある、凍るような感覚を背筋に覚える。
(まさか———)
凱が思い当たるより前に、
———グルルルル……ガアアアア———
獣が唸るような音がすぐ近くで聞こえた。
ギシリギシリ、と床を強く踏み鳴らす音が聞こえる。
「妖、怪……?」
気がついたら、そう零していた。
学校に、妖怪が侵入した。信じたくない事実に、恐怖にも似た感情を覚える。
「は!? 妖怪!?」
同じようにその事実に行き当たった他の子が、半ば絶叫するのように言う。
ギシリギシリと音を立てて、妖怪が入ってくる。
———鬼じゃない。泥に塗れたような、汚い水でできた像が溶けたような、そんな容貌の妖怪だった。
「なんだよ! 校舎に留まってろって話じゃなかったのかよ!」
そう叫んで何人かが外に逃げ出そうとする。
「ま、待て、一旦落ち着けって——」
彼らが教室の外から出るや否や、その足下の床から泥のようなものがうち上がってくる。
彼らはあっという間に呑まれ、消えていった。
「ひっ……!」
その様子に、おそらく全員が青ざめただろう。訳がわからず、凱も絶句した。
父はいつも、このような妖怪と戦っていたのか。いや、
そんなこと考えている場合じゃない。早く、逃げなければ。
でも、どうやって逃げる。教室の扉からは逃げられない。窓から逃げるのはおそらく難しい。なにしろ、ここは三階なのだ。
グシュ、ぐちゃぐちゃ という嫌な音が聞こえる。
「何この音……まさかあいつら、喰われた?」
久世と馨、二人の顔が脳裏を横切った。どうかまた早く来て欲しいと願う。
「———おいお前ら! 何かあった、大丈夫か!———」
「先生!? 駄目です、来ないでください!」
騒ぎを聞きつけたらしい教師が走ってくる。だが生徒の制止の声も虚しく、彼も泥の中に沈んでいってしまった。
「は? まじでどうしよう……」
『百鬼家』は、時庭家———特に姉や姉の実母と関わりがあったのだろうか。あるとしたら、それは一体なんだろうか。
どうして、霊力者の筆頭たる時庭家の跡取りである凱は知らなくて、戸井君は知っていたのだろう。
———どこかで ガシャーン!と何かが大きく壊れる音がした。
近くに落ちた雷にも似た音だった。思わず耳をふさぐ。
「え、何……?」
教室内が一瞬で静まり返った。
いつか感じたことがある、凍るような感覚を背筋に覚える。
(まさか———)
凱が思い当たるより前に、
———グルルルル……ガアアアア———
獣が唸るような音がすぐ近くで聞こえた。
ギシリギシリ、と床を強く踏み鳴らす音が聞こえる。
「妖、怪……?」
気がついたら、そう零していた。
学校に、妖怪が侵入した。信じたくない事実に、恐怖にも似た感情を覚える。
「は!? 妖怪!?」
同じようにその事実に行き当たった他の子が、半ば絶叫するのように言う。
ギシリギシリと音を立てて、妖怪が入ってくる。
———鬼じゃない。泥に塗れたような、汚い水でできた像が溶けたような、そんな容貌の妖怪だった。
「なんだよ! 校舎に留まってろって話じゃなかったのかよ!」
そう叫んで何人かが外に逃げ出そうとする。
「ま、待て、一旦落ち着けって——」
彼らが教室の外から出るや否や、その足下の床から泥のようなものがうち上がってくる。
彼らはあっという間に呑まれ、消えていった。
「ひっ……!」
その様子に、おそらく全員が青ざめただろう。訳がわからず、凱も絶句した。
父はいつも、このような妖怪と戦っていたのか。いや、
そんなこと考えている場合じゃない。早く、逃げなければ。
でも、どうやって逃げる。教室の扉からは逃げられない。窓から逃げるのはおそらく難しい。なにしろ、ここは三階なのだ。
グシュ、ぐちゃぐちゃ という嫌な音が聞こえる。
「何この音……まさかあいつら、喰われた?」
久世と馨、二人の顔が脳裏を横切った。どうかまた早く来て欲しいと願う。
「———おいお前ら! 何かあった、大丈夫か!———」
「先生!? 駄目です、来ないでください!」
騒ぎを聞きつけたらしい教師が走ってくる。だが生徒の制止の声も虚しく、彼も泥の中に沈んでいってしまった。
「は? まじでどうしよう……」
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)