「だいたい龍二様がどことも知れぬ女と子を作るからでしょう」
誰かが割って入る。母の妹、つまり母方の叔母だった。
「本当にねぇ。浪子さんが可哀想」
他の親戚も同調する。
凱と同じ[漢字]嫡出子[/漢字][ふりがな]ちゃくしゅつし[/ふりがな]のはずなのに、なぜか姉は[漢字]庶子[/漢字][ふりがな]しょし[/ふりがな]のような扱いだった。
何か言おうとしても、言葉が出てこない。昔に戻ったようだった。
「私だって嫌だよ。あのような女にこのような子を作った記憶は無い」
父が恐ろしく冷めた目を姉に向ける。
「まあ、そんなこと分かりきったことだったでしょう。———ちょっとあなた!」
母が父から姉に視線を向ける。姉がびくりと肩を震わせる。
「で!? これはどこで盗んできたの!? いい加減、答えたらどう!?」
「い、え……盗んでなどは———」
「嘘おっしゃい!」
母が本を持っていた手を振り上げる。
誰も動こうとはしない。
「———母さん!」
母が振り上げた手を止める。母が返事をする間を置かず、凱は話し出した。
「それ、僕が姉さんにあげたんです。高価で面白そうだったけど、実際はつまらなくて、飽きちゃったから」
「は……?」
「えっと、だから、僕があげたんです。」
母はしばらく凱を凝視していた。
「———凱。」
母が凱を呼んだ。それは、とても低い声だった。
「あなたは、この泥棒の味方をするつもりなの?」
「え?」
「ああ、わかったわ。———あなた。凱にそう言うように言ったんでしょう」
再び母が姉に視線を向ける。
「え? いや、そういうことではなくて———」
凱は否定しようとした。
「そうなんでしょう」
「母さん、」
「凱は黙っていなさい」
話が通じない。初めて、母に恐怖を覚えた。
「往生際が悪い。[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]、認めたらどうだ。それで丸くまとまるんだぞ」
凱は[漢字]縋[/漢字][ふりがな]すが[/ふりがな]るように父を見ようとしたが、父までもが母の味方だった。
「本当にねぇ、さっさと惨めに床に[漢字]蹲[/漢字][ふりがな]うずくま[/ふりがな]って謝ればいいのに」
あちらにいる親戚たちも、仲裁に入るとは思えない。現に、この状況を面白がっている。
———強行突破するしかない。
凱は姉の前に出た。
誰かが割って入る。母の妹、つまり母方の叔母だった。
「本当にねぇ。浪子さんが可哀想」
他の親戚も同調する。
凱と同じ[漢字]嫡出子[/漢字][ふりがな]ちゃくしゅつし[/ふりがな]のはずなのに、なぜか姉は[漢字]庶子[/漢字][ふりがな]しょし[/ふりがな]のような扱いだった。
何か言おうとしても、言葉が出てこない。昔に戻ったようだった。
「私だって嫌だよ。あのような女にこのような子を作った記憶は無い」
父が恐ろしく冷めた目を姉に向ける。
「まあ、そんなこと分かりきったことだったでしょう。———ちょっとあなた!」
母が父から姉に視線を向ける。姉がびくりと肩を震わせる。
「で!? これはどこで盗んできたの!? いい加減、答えたらどう!?」
「い、え……盗んでなどは———」
「嘘おっしゃい!」
母が本を持っていた手を振り上げる。
誰も動こうとはしない。
「———母さん!」
母が振り上げた手を止める。母が返事をする間を置かず、凱は話し出した。
「それ、僕が姉さんにあげたんです。高価で面白そうだったけど、実際はつまらなくて、飽きちゃったから」
「は……?」
「えっと、だから、僕があげたんです。」
母はしばらく凱を凝視していた。
「———凱。」
母が凱を呼んだ。それは、とても低い声だった。
「あなたは、この泥棒の味方をするつもりなの?」
「え?」
「ああ、わかったわ。———あなた。凱にそう言うように言ったんでしょう」
再び母が姉に視線を向ける。
「え? いや、そういうことではなくて———」
凱は否定しようとした。
「そうなんでしょう」
「母さん、」
「凱は黙っていなさい」
話が通じない。初めて、母に恐怖を覚えた。
「往生際が悪い。[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]、認めたらどうだ。それで丸くまとまるんだぞ」
凱は[漢字]縋[/漢字][ふりがな]すが[/ふりがな]るように父を見ようとしたが、父までもが母の味方だった。
「本当にねぇ、さっさと惨めに床に[漢字]蹲[/漢字][ふりがな]うずくま[/ふりがな]って謝ればいいのに」
あちらにいる親戚たちも、仲裁に入るとは思えない。現に、この状況を面白がっている。
———強行突破するしかない。
凱は姉の前に出た。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)