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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#74

第五章 異変(8)

「あの、」
 久世の瞳を見据えて、戸井君は口を開く。その顔は、何かを確信しているようだった。
「僕からも、ありがとうございます、———[漢字]百鬼[/漢字][ふりがな]なぎり[/ふりがな]さん」
 瞬間、久世が瞠目し、絶句した。凱からみても分かった。
「え……? あなた———」
 久世が何か言いかけたが、何も言わずに口を[漢字]噤[/漢字][ふりがな]つぐ[/ふりがな]んだ。そのままスッといなくなってしまう。
 しばらくみんな黙っていたが、大百足がいなくなったからもう安心だろうと、一人 二人と校舎の方へ戻っていった。
 斎も凱に断って戻っていき、最後に凱と戸井君がその場に残った。
「ねえ、戸井君。あの人のこと、知ってたの?」
 戸井君が 久世のことを百鬼さんと呼んでいたのが、気にかかった。
 兄妹、少なくとも馨の姓は [漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな] だったはずだ。
「んー、知らない」
「じゃあ、百鬼さんと言っていたのは……?」
「ああ、あれ? ただの勘。多分当たりだね。すごい動揺していたもの」
「え、」
「どうしてそんなこと聞くの? あ、もしかして、一目惚れ———」
「違うよ! 知り合いなの。あの人、お兄さんがいてね、その人は自分の苗字は百鬼じゃないみたいだから」
「そうなの? あの人美人だったから一目惚れだと思ったのに」
 まるで凱が斎であるように言わないでほしい。
「ホントに違うよ、それで、なんで百鬼だと思ったの?」
 凱が聞くと、戸井君がきょとんとする。
「あれ? 凱くん聞いたことないの? [漢字]百鬼[/漢字][ふりがな]なぎり[/ふりがな]家。」
「え? ……知らない」
「ほら。この国で唯一魔力を受け継ぐ家。……あ、魔力は知ってる?」
 魔力。———魔力。ほとんど知らない。あまりにも分からなさすぎて。
「魔力ね、外国だと結構あるみたいだよ、だからそこから大体はわかる。多分百鬼もそれらと同じようなものでしょ。それで、あの人、紅色の光出してたでしょ? あれ、魔力かなーって。多分当たりだと思う。」
「魔力……。でもどうして隠すの?」
 自分が思っている疑問と違う質問に、我ながら呆れてしまう。
「だって、危険でしょ。天気を変えることも、人を殺したり操ったりすることもできるみたいだよ。そのせいで外国で何か迫害があって、百鬼家はそれを逃れてきた人たちの[漢字]末裔[/漢字][ふりがな]まつえい[/ふりがな]———って話もあるよ。もしかしたらそうかもねぇ、だってあの人、髪も瞳も、この国の人とは違うじゃん」
「……そうなんだ。ところでどうして、戸井君はそんなに詳しいの?」
「昔外国に行ったことがあるんだよ。そのときにいろいろ聞いたの。」
「そっか……」
 やっと二人とも歩き始めた。
 凱の前からいなくなってしまったあの兄妹の情報を手に入れられたことが、少しだけ嬉しかった。
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2025/11/07 14:28

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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