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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#73

第五章 異変(7)

「———あ! そろそろ見えたよ!」
 声がして見ると、一際大きな建物が視界にあった。
 二つに分かれ、凱たちは父がいつもいる屯所へ走っていた。
 あの建物で間違い無いだろう。少し安心する。
「あれかな? よかっ———」
 凱が言いかけた。後ろでゾワッと恐ろしい気配がする。体が震えた。
「凱……!?」
「まずいよ、すぐ後ろに大百足がいる……!」
「え?」
 霊力を持たない他の子は、ぽかんと突っ立つ。
「と、とりあえず 早———」
 ずるずると背後で大きな音がする。みんなで恐る恐る振り返った。

 ———大百足が眼前にあった。

「「「ぎゃ———」」」
 絶叫が見事に揃う。
 逃げようとして———気づいた。
 大百足の長い体で、凱たちはぐるりと囲まれていた。
 凱が気づいた数瞬後に、他の子も気づいたらしい。
「わ、万事休す……」
 斎がとても静かにそう言う。
 絶体絶命という状況で、逆に冷静になったらしい。
「凱くん! なんとかなんないの!?」
 一緒に来ていた、戸井君が叫ぶ。
「ならないよ! 討伐なんてやったことないし———」
 大百足が急に動き出す。みんなを一気に[漢字]喰[/漢字][ふりがな]く[/ふりがな]らおうと その普通の百足とは思えぬ大きな口を開けた。
「みーつけた」

 その時、聞き覚えのあるような声がした。
 瞬間、辺りが強い紅色の光で包まれた。思わず目を[漢字]瞑[/漢字][ふりがな]つむ[/ふりがな]る。
 光が晴れると、大百足は消えていなくなっていた。
 いつのまにか、一人の女性が立っている。体の輪郭と薄茶の髪で———[漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]だと分かった。
「あなたたち無事?」
 久世が他の子に聞く。
「あ、はい……」
 みんな[漢字]惚[/漢字][ふりがな]ほう[/ふりがな]けたような顔をしている。急な展開に戸惑っているのは凱も同じだった。
「ならいいわ。さようなら」
 久世は言葉少なに言い、去ろうとする。
「ま、待ってください、あの……」
 凱が呼び止めると、久世は視線を向けた。まるで凱のことなど知らないといったようだった。
「えっと、ありがとうございました……」
 話しかけたはいいが何を話せば良いか分からず、それ以外の言葉が思いつかなかった。久世は何も言うことなく、やはり目の前の相手のことなど何も知らないかのように凱から視線を背けた。
 ふと戸井君が立ち上がり、久世の方に向かった。
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2025/11/11 14:49

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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