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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#3

第一章 始まり(3)

 次の日。
 凱は家を出て、夏祭りの会場へと向かった。
 きょろきょろと周りを見渡す。
(お兄さん、いないな……)
 名前だけでも聞いてみたかったので、しばらく探してみたものの、見つからない。諦めた。
 そのあとはいつも通り遊んだり食べたりして過ごした。
 気がつけば、そろそろ帰らないといけない時刻となっていた。
(そういえば昨日、盆踊りを見てないなぁ)
 ふとそう思い出し、やっているだろうかと辺りを彷徨い歩いた。
 しばらく歩いていると、木の生い茂った、小さな林のような場所に入る。[漢字]提灯[/漢字][ふりがな]ちょうちん[/ふりがな]の飾ってあるのが見える。
 ここが盆踊りの会場らしきところだろうか。これからやるらしく、既にたくさんの人が集まり、踊る用意をしていた。
 みんな、面を被っていた。
 その様子をじっと見ていると、後ろからぽんと肩を叩かれた。
 驚いて振り向くと、同じく面を被った男が立っていた。
「……ここで、何しているの?」
 そう問われ、慌てて答える。
「あ、あの、盆踊りやっているかなって、来てみたんです」
 そう言うとその男はじっと凱を見つめ、急に凱の腕を引っ張って歩き始めた。
「え?えっと、」
「いいから黙って来て。」
 言われるがままに歩く。やがて、会場をすっかり抜け出したところで男はようやく凱の腕を解放した。
「君、昨日の子だよね」と言いながら、男は面を外す。
 どういうことかと思う間もなく、男の顔を見た凱は驚いた。
 薄い橙の瞳をした美しい青年。 まさしく、昨日会った——凱が探していた人だった。
 よく見れば、薄い茶髪にすらりとした[漢字]痩身[/漢字][ふりがな]そうしん[/ふりがな]である。
 青年は はぁ、と息をついて、凱に向き直った。
「どうしてあの場所に来れたの?」
「え?普通に来れた、けれど……」
 そう言うと、青年は驚いたようにまじまじと凱を見た。
 しばらくそうしていて、
「もう、あそこには来ないで。——俺たちの場所だから」
 そう言った。  俺たちの場所?よく分からなかった。
「それじゃあ、戻るね。二度と、あそこには近づかないように」
 それだけ残して、青年は去ろうとした。慌てて凱は青年の袖を掴む。青年が振り向いた。
「あ、あの、お名前はなんですか……?」
 聞いてみたかったことを 聞く。
「……馨。[漢字]内海馨[/漢字][ふりがな]うつみ かおる[/ふりがな]。……君は?」
 唐突に聞き返され、え?と少し戸惑う。
「聞いてきたのは君でしょ? なら俺も、聞いてもいいよね。」
 言うことは理解できたので、素直に名乗った。
「凱です。時庭凱といいます。」
 すると、青年——馨は目を見開いた。
「時、庭……?」
 そのまま顔を手で隠し、表情を歪ませる。
「どうかしたんですか?」
 恐る恐る凱が問うと、馨は「なんでもない」と首を横に振った。
「そうか、時庭の長男か……」
 どこか辛そうに、寂しそうに、誰かに怒るように、馨がつぶやく。
「それなら尚更、あそこには近づかないように。分かった?」
 よく分からないながらも「はい」と凱はうなずいた。
 凱が返事をしたのを見ると、馨は今度こそ去ってしまった。
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2025/10/17 22:21

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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