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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#63

第四章 別れ(7)

「あら、そうなの。結局、いい場所は見つかった? そうしたら嬉しいわ」
「それは———」
 どこも良いようだった。凱はそう誤魔化そうとした。
 母に、父の前妻に関する話は[漢字]禁忌[/漢字][ふりがな]きんき[/ふりがな]だからだ。
 だが———。
「あちら」
 久世が指差して短く言う。
「あちらの、離れのような空き部屋が良かった」
「———え?」
 久世の言わんとするところに気づいたからか、両親が固まったのが分かった。
「その部屋が、良かった。なんであんなに荒れてたのかは分からないけどね」
 久世がうっすらと[漢字]嗤[/漢字][ふりがな]わら[/ふりがな]った。
「久世さん、」
 凱は止めようとする。久世はそれを無視して、続けた。
「朝水ちゃんといい、きっと、全部[漢字]廃[/漢字][ふりがな]すた[/ふりがな]れてしまったのでしょうね」
 久世が立ち上がる。
「きっと、馨兄さんも良いって言うわ。———もうここには来ないでしょうけど」
 振り返ることもせず、そう呟き、戸を開けて久世は行ってしまった。

「久世さん、——久世さん!」
 凱は慌てて久世の後を追う。
 久世が振り返る。———泣いていた。
「! 久世、さん?」
 久世はおもむろに首を振る。ぎゅっと目を強く[漢字]瞑[/漢字][ふりがな]つむ[/ふりがな]った。そのまま、落ち着こうと、ふーっと深呼吸する。
「大丈夫ですか……?」
 久世が再び目を開く。その瞳にもう涙は浮かんでいなかった。
「ありがとう、もう大丈夫。」
「何か、あったんですか……?」
「特に。……兄さんから聞いた?」
 馨から何を聞くのだろう。ずっと、凱は知らなくていいと言っていたことだろうか。
「え?……聞いてないです。」
「そう……」
「あの。どうして馨さん、もう来ないんですか」
 話を変える。
「やらなきゃいけないことがあるから、かな。———私も、もう少ししたら兄さまに会えなくなるかもしれない」
 久世が凱を見つめる。その所作は馨とよく似ていた。
「明後日、兄さま、斎君の家に行くんだって。多分、それで最後。会いたかったら、会いにいって。口説かれるのが嫌だから私は行かないけど」
 その瞳は真剣で、嘘は言っていないと分かる。
 そういえば斎は久世に愛の告白もどきをしていたな、と思い出しながら、凱はうなずいた。
「わかりました。……ところで、やらなきゃいけないことって何ですか?」
 久世が一瞬[漢字]逡巡[/漢字][ふりがな]しゅんじゅん[/ふりがな]するような表情を見せる。そして、一言だけ言った。


「———復讐。」
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2025/11/07 14:42

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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