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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#62

第四章 別れ(6)

 手で口元を押さえて、そのまま久世が固まってしまう。
「あ、の……」
 姉が遠慮がちに声をかけた。久世が我に返ったように、口元を押さえていた手をそっと下ろす。
「なんでも、ない。……ね、戻ろ、凱君。朝水ちゃん、じゃあね」
「……? はい」

 半ば強引に久世に連れられて、姉の部屋から離れた。
「そうだ。空いてる部屋とかある?」
 突然、凱の方を見ず、聞いてきた。
「ありますけど……泊まられるのですか?」
「んー。分からない。……でも、見たい」
 親戚には別荘に住みたがる者がいたり独立したりでだんだん人数が減っていて、空いている部屋はある。だから、それには困らないのだが———
 よく分からない言動の久世に、ひそかに首を傾げる。
「えっと……いくつかあるんですけど、どうしますか」
「どうする、か……」
 しばらく間があった。何をずっと考えている。その瞳は暗かった。
「じゃあ、全部回ってくれる? 実際に見たい」
 どうして空き部屋を見たいなどと言い出したのか聞きたかったが、どこか思い詰めた様子の久世に突っ込むこともできず、結局うなずいた。
「分かりました」

「まず、ここは?」
 最初の空き部屋に行く。
 久世は部屋を一目見て、つぶやいた。
「ここじゃない」
 また少し歩き、凱は同じように聞く。久世からは同じような返答が返ってきた。
「ここでもないかなー」
 いくつか回ったが、どれも違うようだった。

 結局、一番最後の空き部屋に来た。空き部屋というより、ちょっとした離れだ。[漢字]琴子[/漢字][ふりがな]ことこ[/ふりがな]———姉の実母が住んでいたという。
 母や一部の親戚がとにかく近づきたがらないので、他の空き部屋に比べて[漢字]廃[/漢字][ふりがな]すた[/ふりがな]れていた。
「あ」
 久世が声を上げる。
「ここだ。———ここがいい」
 その声は揺れていた。

[水平線]
 二人は応接間に戻り、母に会った。隣には父もいた。
「戻りました。———父さん、いらっしゃったんですね」
「ああ。さっき来た。そちらが[漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな]さんの妹さんか?」
「はい。久世さんです」
「時庭龍二といいます。息子が世話になっています」
 父は馨にしたのと同じような自己紹介をする。
 久世はひどく驚いたように固まっていたが、やがて父から目を背けて小さく頷いた。
「さっき邸の中を案内させていたのよね。何かありました?」
 母は久世ではなく、凱に聞く。久世に何を話しかけても応答しないことを悟ったのだろう。
「えっと、もしここに泊まるとしたら、どこがいいかなって話したんです」
 姉に会いにいったことは伏せて答えた。
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2025/11/07 14:40

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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