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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#60

第四章 別れ(4)

(久世さんや馨さんじゃ、ないよね……?)
 有り得ない。そう思いたかったが、なかなか疑問は晴れてはくれなかった。

 そのあとも泊まりを挟みながらいくつかの家を巡り、あっという間に三ヶ日が過ぎていった。
 父は早速仕事に出掛けてしまい、凱は疲れてしまって部屋でうたた寝していた。
「———なんであなたがこんなものを持っているの!?」
 母の怒号が聞こえて、凱は目が覚めた。方向は姉の部屋からだ。
 慌てて身を起こして向かう。
 そっとうかがうと、母の手には鏡が握られていた。
 ———その鏡には、見覚えがあった。
 馨が姉に、渡したものだ。いつどのようにして渡したのかは、いまだによく分からないが。
 姉は[漢字]俯[/漢字][ふりがな]うつむ[/ふりがな]いて黙ったままだった。
「なんとか答えたらどう!?」
 そのとき、母が姉に向かって鏡を投げつけた。
(———っ!!)
 突然のことに凱は固まる。確か馨は母の形見だと言っていた。それを———
 だが、———鏡は姉の目前で静止し、音もなく静かに床に転がった。
 母が驚きで目を見張る。母だけでなく、凱も、姉も。
 そのまま母は何も言わずに、立ち去った。
 姉が鏡に手を伸ばし、そっと取る。
 凱が見たときに浮き上がっていた文字といい、あの鏡がただものではないのは明らかだった。

[水平線]
 久世が時庭家を訪ねたのは、その数日後のことだった。
 時庭を嫌っているらしい久世が来るとは思わなかったので、凱は驚いた。
 母はもちろん驚いていた。馨に妹がいるとは知らなかったのだから当然である。
「妹様なんていらしたのね。本当によく似てらっしゃるわ」
 母のそんな言葉に、久世はただ無表情でうなずくだけだった。
 馨のときと同じように、久世は応接間に通された。
「久世さん、でしたっけ。ごめんなさいね、今日は主人がいなくって」
 久世は[漢字]喋[/漢字][ふりがな]しゃべ[/ふりがな]らず、何も言わず、首を少し縦に動かした。
 そういえば初めて会ったときも久世が口数が少なかったなと思い返す。
 とはいえ、ここまで少なくはなかったが。
「久世さんは何がお好きかしら」
「……なんでも」
 やっと四文字だけ喋った。
 そのあとも母がいろいろ話しかけていたが、久世は首を縦に振るか横に振るだけだった。
「……久世さんは、何かされたいこととかありますか?」
 反応の薄い久世に母が困ったように聞く。
 久世はしばらくの間、応接間の中を見回していた。
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2025/11/07 14:39

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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