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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#59

第四章 別れ(3)

 新年が来た。
 親戚の一人がみんなを誘い、神社の建つ小山の一番高いところまで行った。
 あたりが紅く輝き、朝日が昇る様を見る。
「まあ……綺麗ねぇ」
 母がうっとりしたように言う。親戚たちも凱も、同じように昇りゆく朝日を見ていた。
 そのあと、神社の拝殿に新年のお詣りを済ませ凱たちは帰りの支度をした。
「このあとお節よねー、楽しみだわ」
 親戚の一人が「食いしん坊か」と突っ込みたくなるようなことを言う。
 それにみんなで笑いあいつつ、昼を少し過ぎた頃 帰路に着いた。
「お帰りなさいませ。明けましておめでとうございます」
 帰ったあとは、既に残っていた使用人たちによってお節料理が並べてあった。
 皆はあれやこれやとお喋りしながら食べる。
「凱様は甘酒はいかがでしょう」
「……いらない。ありがとう」
 凱より少し年上の、親戚の少女が凱に 勧めてくる。ただ、凱は甘酒は好きではなかった。
(……挨拶巡り、あまり行きたくないな……)
 大晦日から元日まで寝ていないのにも関わらず、名家の跡取りとして恥をかかないようにいつも気を張っていないといけないため、とても疲れるのだ。早く休みたい。
「凱、どうかしたのか。早く食べなさい。また出かけるのだからな」
 父に言われ、凱はいつの間にか止めていた箸を再び動かした。

 正装に着替えて両親に連れられて歩く。
 最初に『[漢字]仁井戸[/漢字][ふりがな]にいど[/ふりがな]』と書かれた表札まで来た。父の上司に当たる人の家だ。
 中まで案内される。既に彼は来ていた。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」
 父が丁寧に[漢字]挨拶[/漢字][ふりがな]あいさつ[/ふりがな]する。母と凱もそれに続いた。
「明けましておめでとう。年賀状はどうもありがとう。」
 年賀状はもう届いたらしい。
 そのあと、父とその上司が話すのを、しばらく凱は母と見ていた。
「———昨年は大変だったね、突然鬼の妖怪が出て、しかもなんの前触れもなく」
「そうですね、また同じような妖怪が出ないことを祈るばかりです」
 強い妖怪が出るとき、だいたいの場合前兆がある。雰囲気が妙に重くなったり、病気に罹ったり怪我をしたりする人が多くなったり、普段はおとなしい犬や猫が妙に騒がしくなったり、それは様々あるが。
 あのときは、それが全くなかった。
「———時庭君。気をつけなさい、これは人によるものかもしれない。」
「人によるもの……?」
「悪意を持つ者がいないとも限らんだろう。とにかく注意するように」
 ———ふと、斎の話を思い出した。鬼が現れた数日後に [漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]が現場にいたという、あの話を。
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2025/11/07 14:38

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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