年末が来た。
[漢字]凱[/漢字][ふりがな]かい[/ふりがな]は自分の部屋の片付けくらいしかやることはなかったが、[漢字]大晦日[/漢字][ふりがな]おおみそか[/ふりがな]を明日に控えているとあって大掃除と[漢字]銘[/漢字][ふりがな]めい[/ふりがな]打って 両親や姉、使用人たちは忙しそうだった。
「———凱、暇そうにしているなら手伝ってちょうだい」
部屋の掃除を終えて 手持ち無沙汰に庭の縁側で[漢字]佇[/漢字][ふりがな]たたず[/ふりがな]んでいたとき、母に呼ばれた。
連れられて母の部屋へ行く。
「あのね、年賀状を書いているの。ほら、[漢字]時庭[/漢字][ふりがな]ときにわ[/ふりがな]って大きな家でしょう、だから書く量も本当に多くって。元日になったら、みんなに届けに行くのよ」
凱は机の上を見た。たくさん葉書が置いてある。既に書かれているものもあれば、まだ真っ[漢字]新[/漢字][ふりがな]さら[/ふりがな]なものもあり、書きかけのものもあった。
送り相手の気を損ねないように気を配っているのか、とても丁寧に書かれてある。
この分ならこの量を一枚一枚書くのも大変だろう。
「分かった、手伝うよ」
凱がそう言うと、母は嬉しそうに微笑んだ。
書くのにしばらく時間がかかって、結局十枚ほどしか書けずに日が暮れた。
それでも母は「あら。こんなに書いてくれたのね、ありがとう」と言ってくれた。
明日と明後日———大晦日と元日は寝られないので、今日は早めに寝るよう言われた。
両親と親戚たちは小規模な宴をするらしい。凱が部屋で布団の上でごろんと横になっていると、部屋の戸が叩かれた。
「はい?」
「……[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]です。本を返しに参りました。」
そういえば、姉に本を渡していたような。
凱は少し戸を開けて、[漢字]覗[/漢字][ふりがな]のぞ[/ふりがな]き込む。姉の手には二冊、本が握られていた。そっと凱の方へ差し出される。
「ありがとう」
凱はそれを丁寧に受け取った。
「それでは、戻ります。……奥様方に知られてはいけませんので」
姉はそれを見届けると、二人で何か話す間もなく戻っていってしまった。
[水平線]
大晦日となった。
その日は、夕方に神社に行ってお参りをし、そこで初日の出を見ようという話になった。
神社とは、[漢字]斎[/漢字][ふりがな]いつき[/ふりがな]の家である[漢字]新代[/漢字][ふりがな]にいしろ[/ふりがな]神社である。
普段はもう少し由緒のある神社へと遠出するのだが、強い妖怪が出たために遠出が大っぴらにできなくなったのだ。遠出している最中に家に何かあったら困るから、と言う理由らしい。
このあたりには高い山などなく、あるとしても少し小高いところにある新代神社くらいしかない。少し物足りない。
初日の出を見たあとは一旦帰ってお節料理を食べたあと、挨拶巡りに行くことになっている。
掃除など全ての片付けが終わった頃を見計らって、姉と十数名の使用人を残して、凱たちは家を出た。
神社に着くと、何度も通ったその鳥居をくぐり、拝殿を目指して歩く。
もう妖怪の気配はどこにも残っていない。そのことに凱は少し安堵した。
[漢字]凱[/漢字][ふりがな]かい[/ふりがな]は自分の部屋の片付けくらいしかやることはなかったが、[漢字]大晦日[/漢字][ふりがな]おおみそか[/ふりがな]を明日に控えているとあって大掃除と[漢字]銘[/漢字][ふりがな]めい[/ふりがな]打って 両親や姉、使用人たちは忙しそうだった。
「———凱、暇そうにしているなら手伝ってちょうだい」
部屋の掃除を終えて 手持ち無沙汰に庭の縁側で[漢字]佇[/漢字][ふりがな]たたず[/ふりがな]んでいたとき、母に呼ばれた。
連れられて母の部屋へ行く。
「あのね、年賀状を書いているの。ほら、[漢字]時庭[/漢字][ふりがな]ときにわ[/ふりがな]って大きな家でしょう、だから書く量も本当に多くって。元日になったら、みんなに届けに行くのよ」
凱は机の上を見た。たくさん葉書が置いてある。既に書かれているものもあれば、まだ真っ[漢字]新[/漢字][ふりがな]さら[/ふりがな]なものもあり、書きかけのものもあった。
送り相手の気を損ねないように気を配っているのか、とても丁寧に書かれてある。
この分ならこの量を一枚一枚書くのも大変だろう。
「分かった、手伝うよ」
凱がそう言うと、母は嬉しそうに微笑んだ。
書くのにしばらく時間がかかって、結局十枚ほどしか書けずに日が暮れた。
それでも母は「あら。こんなに書いてくれたのね、ありがとう」と言ってくれた。
明日と明後日———大晦日と元日は寝られないので、今日は早めに寝るよう言われた。
両親と親戚たちは小規模な宴をするらしい。凱が部屋で布団の上でごろんと横になっていると、部屋の戸が叩かれた。
「はい?」
「……[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]です。本を返しに参りました。」
そういえば、姉に本を渡していたような。
凱は少し戸を開けて、[漢字]覗[/漢字][ふりがな]のぞ[/ふりがな]き込む。姉の手には二冊、本が握られていた。そっと凱の方へ差し出される。
「ありがとう」
凱はそれを丁寧に受け取った。
「それでは、戻ります。……奥様方に知られてはいけませんので」
姉はそれを見届けると、二人で何か話す間もなく戻っていってしまった。
[水平線]
大晦日となった。
その日は、夕方に神社に行ってお参りをし、そこで初日の出を見ようという話になった。
神社とは、[漢字]斎[/漢字][ふりがな]いつき[/ふりがな]の家である[漢字]新代[/漢字][ふりがな]にいしろ[/ふりがな]神社である。
普段はもう少し由緒のある神社へと遠出するのだが、強い妖怪が出たために遠出が大っぴらにできなくなったのだ。遠出している最中に家に何かあったら困るから、と言う理由らしい。
このあたりには高い山などなく、あるとしても少し小高いところにある新代神社くらいしかない。少し物足りない。
初日の出を見たあとは一旦帰ってお節料理を食べたあと、挨拶巡りに行くことになっている。
掃除など全ての片付けが終わった頃を見計らって、姉と十数名の使用人を残して、凱たちは家を出た。
神社に着くと、何度も通ったその鳥居をくぐり、拝殿を目指して歩く。
もう妖怪の気配はどこにも残っていない。そのことに凱は少し安堵した。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)