正しいポケットティッシュの開け方
それはとある春の朝。
ズルズルズル……ブーンブーンブーン!
清々しいその陽気に似つかわしくない音が響いていた。
うう……今年も花粉症がひどいぜ……
涙目になりながら、ティッシュを持った手で鼻をつまみ、もう片手をつい先ほど開けたばかりのポケットティッシュに伸ばした。
そして、あらよっ!とそれをつまみ上げる。
しかし。
……ありゃ?
軽い。とても軽い。たいへん軽い。
まさかと思いながら、ゆっくりとつまみ上げた片手を見る。
……おい、冗談だろ?
そこにあったのは、ポケットティッシュの外袋だけであった。
ティッシュの姿は無い。
……もう使い果たしてしまったのか!?
つい先ほど、開けたばかりだというのに。
勘弁してくれ。これで三千五百九十六回目だぞ!?
[水平線]
というわけで、新しいポケットティッシュを持ってきた。
しかし、ハズレた。 見事にハズレた。
このポケットティッシュ。
……開けづらいではないか!?
ウン!とかフン!ウーン!とかフーン!とか言ってみても、びくともしない。
なぜこんなに開けづらい!?
そのうちに、鼻の穴からサラサラな液体が流れてきた。
しかも、フーン!と言っているせいで、その液体が飛んでくる。
そのせいでポケットティッシュや それを掴んでいる手がベタベタしてきた。
が、きっと気のせいだろう。
しかし、開けづらいことこの上ない。
……よし。一旦もちつけ。間違えた、落ち着け。
ここは、焦るときではない。
しっかり相手の弱点を見極め、そこを突くのだ!
[水平線]
もう何時間が経ったのだろう。
弱点を見極めんと、新しいティッシュを睨みつけ始めてから。
時間が経ちすぎて、鼻から漏れ出てきた謎の液体のせいで俺の頬はベトベトだ。
しかしさらにじっと睨みつけていると、俺の中に一つの素晴らしいアイデアが浮かんできた。
よし! ハサミを使ってこじ開けよう!
窓の外の夕焼けを眺めつつ、ハサミを手に取る。
そのハサミの刃を、限界まで広げた。
一方の刃を、ティッシュの開け口に添える。
よし! このままビリッと一直線だ!
そう、いきんで手に力を込めるが。
ズリッ。
最初こそ綺麗に入ったが、軌道が外れてハサミは別の方向へ行ってしまった。
ガリッ! 痛っ!
おまけに、その勢いで指を切ってしまう。
……ったくよ!
チッと舌打ちして、もう一度広げたハサミをティッシュに当てる。
そして、前の失敗を活かして、今度はゆっくりゆっくりとハサミを動かしていきーーー。
パカっ。
ついに、ティッシュを開けることに成功した!
ついに、ついに……長時間の努力が実を結んだのだ!
少し中のティッシュも切れてしまったが、そんなものはなんでもない。
[大文字]「ぃぃぃぃよっしゃぁぁぁぁぁ!!」[/大文字]
一人の男の大絶叫が、静寂な空間をこだました。
[水平線]
「ねぇ……、あの人、ヤバくない? 鼻水垂らしてずっとティッシュを見つめているかと思ったら、突然叫び出したよ。」
「朝もいたよね? 朝から夕方まで、ずっとアレってこと?」
「うっわ。しかもここ図書館だし。」
「三人とも、放っておく放っておく。頭がイカれた人に関わっても、ろくなことにならないよ」
そんなことを 陰で[漢字]囁[/漢字][ふりがな]ささや[/ふりがな]かれていたとは、彼はつゆほども知らない———。
ズルズルズル……ブーンブーンブーン!
清々しいその陽気に似つかわしくない音が響いていた。
うう……今年も花粉症がひどいぜ……
涙目になりながら、ティッシュを持った手で鼻をつまみ、もう片手をつい先ほど開けたばかりのポケットティッシュに伸ばした。
そして、あらよっ!とそれをつまみ上げる。
しかし。
……ありゃ?
軽い。とても軽い。たいへん軽い。
まさかと思いながら、ゆっくりとつまみ上げた片手を見る。
……おい、冗談だろ?
そこにあったのは、ポケットティッシュの外袋だけであった。
ティッシュの姿は無い。
……もう使い果たしてしまったのか!?
つい先ほど、開けたばかりだというのに。
勘弁してくれ。これで三千五百九十六回目だぞ!?
[水平線]
というわけで、新しいポケットティッシュを持ってきた。
しかし、ハズレた。 見事にハズレた。
このポケットティッシュ。
……開けづらいではないか!?
ウン!とかフン!ウーン!とかフーン!とか言ってみても、びくともしない。
なぜこんなに開けづらい!?
そのうちに、鼻の穴からサラサラな液体が流れてきた。
しかも、フーン!と言っているせいで、その液体が飛んでくる。
そのせいでポケットティッシュや それを掴んでいる手がベタベタしてきた。
が、きっと気のせいだろう。
しかし、開けづらいことこの上ない。
……よし。一旦もちつけ。間違えた、落ち着け。
ここは、焦るときではない。
しっかり相手の弱点を見極め、そこを突くのだ!
[水平線]
もう何時間が経ったのだろう。
弱点を見極めんと、新しいティッシュを睨みつけ始めてから。
時間が経ちすぎて、鼻から漏れ出てきた謎の液体のせいで俺の頬はベトベトだ。
しかしさらにじっと睨みつけていると、俺の中に一つの素晴らしいアイデアが浮かんできた。
よし! ハサミを使ってこじ開けよう!
窓の外の夕焼けを眺めつつ、ハサミを手に取る。
そのハサミの刃を、限界まで広げた。
一方の刃を、ティッシュの開け口に添える。
よし! このままビリッと一直線だ!
そう、いきんで手に力を込めるが。
ズリッ。
最初こそ綺麗に入ったが、軌道が外れてハサミは別の方向へ行ってしまった。
ガリッ! 痛っ!
おまけに、その勢いで指を切ってしまう。
……ったくよ!
チッと舌打ちして、もう一度広げたハサミをティッシュに当てる。
そして、前の失敗を活かして、今度はゆっくりゆっくりとハサミを動かしていきーーー。
パカっ。
ついに、ティッシュを開けることに成功した!
ついに、ついに……長時間の努力が実を結んだのだ!
少し中のティッシュも切れてしまったが、そんなものはなんでもない。
[大文字]「ぃぃぃぃよっしゃぁぁぁぁぁ!!」[/大文字]
一人の男の大絶叫が、静寂な空間をこだました。
[水平線]
「ねぇ……、あの人、ヤバくない? 鼻水垂らしてずっとティッシュを見つめているかと思ったら、突然叫び出したよ。」
「朝もいたよね? 朝から夕方まで、ずっとアレってこと?」
「うっわ。しかもここ図書館だし。」
「三人とも、放っておく放っておく。頭がイカれた人に関わっても、ろくなことにならないよ」
そんなことを 陰で[漢字]囁[/漢字][ふりがな]ささや[/ふりがな]かれていたとは、彼はつゆほども知らない———。
クリップボードにコピーしました