思い出して、鏡を見ずともわかるほど凱の顔から血の気が引いた。全くやっていない。
「その顔は……凱もやっていないな?」
「……うん」
うなずくと、斎はばっと両手を広げて凱に抱きついた。
「よかった〜。凱、心の友よ!」
斎が嬉しそうにそう言ってくるが、もはやそれどころではない。
抱きついてくる斎を押し返し、がさがさと[漢字]鞄[/漢字][ふりがな]かばん[/ふりがな]の中を[漢字]漁[/漢字][ふりがな]あさ[/ふりがな]る。課題はすぐ出てきた。中を見る。
真っ白だ。やはり全くやっていない。
「ええ……どうしよう……」
凱は真っ白な課題を前に、途方に暮れた。どう見ても、すぐに終わる量ではない。
「どうするも何も、今からやるっきゃないだろ!……どれどれ……」
斎も鞄の中を漁る。しばらくずっと、漁っているうちに、斎の顔が青くなっていくのが分かった。
「斎?」
凱が声をかける。
「やべー、課題 家に置いてきた! 今から取りに行くからそこで待っててー」
「え? ちょっと待って斎、」
凱の静止も虚しく、斎は店から出ていってしまった。
料理を頼んでいるのに。おそらくすっかり料理のことは斎の頭から抜け落ちているだろう。
「はぁ……」
一人残された凱はため息をつく。
嘆いていても始まらないので、凱は課題を机の上に広げた。
取りかかり始めてそう経たないうちに、料理———オムライスとカレーが運ばれてきた。
それを受け取り、凱は課題を仕舞い、カレーを食べ始めた。
斎が帰ってくる気配はない。
ため息をつきながら黙々と食べていると、ちりんちりんと店の風鈴が鳴り、誰かが店に入ってくる。
斎が帰ってきたのだろうかと見遣ると———数日前に見知ったばかりの姿があった。
薄橙の瞳。背中まで伸びた薄い茶髪。今日は髪を結い上げず、下ろしていた。
「[漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]さん……?」
思わず声をかけると、久世がこちらを見た。
「あ、こんにちは。えっと……凱君だっけ、斎君だっけ」
すぐに「凱です」と名乗った。
久世が安心したように少し微笑む。微笑んだ顔は美しく、兄妹でよく似ていた。
「そっか、凱君か、私、人の名前覚えるの苦手で。……というより、凱君カレーもオムライスも食べるの? 食べ過ぎない?」
久世が机の上を見た。
「その顔は……凱もやっていないな?」
「……うん」
うなずくと、斎はばっと両手を広げて凱に抱きついた。
「よかった〜。凱、心の友よ!」
斎が嬉しそうにそう言ってくるが、もはやそれどころではない。
抱きついてくる斎を押し返し、がさがさと[漢字]鞄[/漢字][ふりがな]かばん[/ふりがな]の中を[漢字]漁[/漢字][ふりがな]あさ[/ふりがな]る。課題はすぐ出てきた。中を見る。
真っ白だ。やはり全くやっていない。
「ええ……どうしよう……」
凱は真っ白な課題を前に、途方に暮れた。どう見ても、すぐに終わる量ではない。
「どうするも何も、今からやるっきゃないだろ!……どれどれ……」
斎も鞄の中を漁る。しばらくずっと、漁っているうちに、斎の顔が青くなっていくのが分かった。
「斎?」
凱が声をかける。
「やべー、課題 家に置いてきた! 今から取りに行くからそこで待っててー」
「え? ちょっと待って斎、」
凱の静止も虚しく、斎は店から出ていってしまった。
料理を頼んでいるのに。おそらくすっかり料理のことは斎の頭から抜け落ちているだろう。
「はぁ……」
一人残された凱はため息をつく。
嘆いていても始まらないので、凱は課題を机の上に広げた。
取りかかり始めてそう経たないうちに、料理———オムライスとカレーが運ばれてきた。
それを受け取り、凱は課題を仕舞い、カレーを食べ始めた。
斎が帰ってくる気配はない。
ため息をつきながら黙々と食べていると、ちりんちりんと店の風鈴が鳴り、誰かが店に入ってくる。
斎が帰ってきたのだろうかと見遣ると———数日前に見知ったばかりの姿があった。
薄橙の瞳。背中まで伸びた薄い茶髪。今日は髪を結い上げず、下ろしていた。
「[漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]さん……?」
思わず声をかけると、久世がこちらを見た。
「あ、こんにちは。えっと……凱君だっけ、斎君だっけ」
すぐに「凱です」と名乗った。
久世が安心したように少し微笑む。微笑んだ顔は美しく、兄妹でよく似ていた。
「そっか、凱君か、私、人の名前覚えるの苦手で。……というより、凱君カレーもオムライスも食べるの? 食べ過ぎない?」
久世が机の上を見た。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
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- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
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- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)