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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#31

第二章 彼の妹(18)

 思い出して、鏡を見ずともわかるほど凱の顔から血の気が引いた。全くやっていない。
「その顔は……凱もやっていないな?」
「……うん」
 うなずくと、斎はばっと両手を広げて凱に抱きついた。
「よかった〜。凱、心の友よ!」
 斎が嬉しそうにそう言ってくるが、もはやそれどころではない。
 抱きついてくる斎を押し返し、がさがさと[漢字]鞄[/漢字][ふりがな]かばん[/ふりがな]の中を[漢字]漁[/漢字][ふりがな]あさ[/ふりがな]る。課題はすぐ出てきた。中を見る。
 真っ白だ。やはり全くやっていない。
「ええ……どうしよう……」
 凱は真っ白な課題を前に、途方に暮れた。どう見ても、すぐに終わる量ではない。
「どうするも何も、今からやるっきゃないだろ!……どれどれ……」
 斎も鞄の中を漁る。しばらくずっと、漁っているうちに、斎の顔が青くなっていくのが分かった。
「斎?」
 凱が声をかける。
「やべー、課題 家に置いてきた! 今から取りに行くからそこで待っててー」
「え? ちょっと待って斎、」
 凱の静止も虚しく、斎は店から出ていってしまった。
 料理を頼んでいるのに。おそらくすっかり料理のことは斎の頭から抜け落ちているだろう。
「はぁ……」
 一人残された凱はため息をつく。
 嘆いていても始まらないので、凱は課題を机の上に広げた。
 取りかかり始めてそう経たないうちに、料理———オムライスとカレーが運ばれてきた。
 それを受け取り、凱は課題を仕舞い、カレーを食べ始めた。
 斎が帰ってくる気配はない。

 ため息をつきながら黙々と食べていると、ちりんちりんと店の風鈴が鳴り、誰かが店に入ってくる。
 斎が帰ってきたのだろうかと見遣ると———数日前に見知ったばかりの姿があった。
 薄橙の瞳。背中まで伸びた薄い茶髪。今日は髪を結い上げず、下ろしていた。
「[漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]さん……?」
 思わず声をかけると、久世がこちらを見た。
「あ、こんにちは。えっと……凱君だっけ、斎君だっけ」
 すぐに「凱です」と名乗った。
 久世が安心したように少し微笑む。微笑んだ顔は美しく、兄妹でよく似ていた。
「そっか、凱君か、私、人の名前覚えるの苦手で。……というより、凱君カレーもオムライスも食べるの? 食べ過ぎない?」
 久世が机の上を見た。
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2025/11/09 12:43

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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