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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#23

第二章 彼の妹(10)

「……大丈夫です。凱様がお受け取りになったのなら、凱様がお召し上がりください」
 予想していたとはいえ、そう返答されると面食らう。
「え? あ、えっと……僕が、分けたいなと思ったから……」
 扉の向こうがしんとする。
「姉さん?」
 声をかけてみたが、返答はない。何か変なことを言ってしまっただろうか。少し不安になった。
「姉さん……? 入ってもいいですか?」
 思い切って、とりあえずそう話しかけてみる。
 するとガタッと音が鳴り、扉が開いた。扉に顔を近づけていた凱が思わず「わっ」とのけぞる。
「す、すみません……!」
 寝巻き姿の、扉から顔を覗かせた姉が慌てたように謝った。
「大丈夫だよ、僕が勝手に驚いただけだし……」
 凱も慌てて笑みを作って、姉を安心させようと試みる。
 姉が不安そうにこちらを見た。
「ほんとに大丈夫だよ、それでこれ、キャラメル。あげる。美味しいよ」
 キャラメルの箱を取り出し、姉に渡す。
 姉はそれをじっと見て、恐る恐ると凱を見た。
「……でも、奥様に叱られたら……」
「なら、今ここで食べちゃえばいいよ、どうせ母さんは今寝ているんだし。あ、そうだ、一緒に食べる?」
 にこにこと笑ってそう言う。
 姉はしばらく迷っていたようだが、そのうち慎重に包み紙を開き、キャラメルを口に放り込んだ。
「美味しい……」
「わあ、本当? よかった」
 心から美味しそうに頬張る姉に、凱はほっとした。
 姉が一つ食べ終え、残りを凱に渡す。
「え?」
「……一つだけで十分です。ありがとうございます」
「え? いいの?」
「大丈夫です。私にこんなもの、似合いませんし」
「え? え、そんなこと、ないと思うけど……」
 無理強いするわけにもいかないので、受け取る。少し[漢字]躊躇[/漢字][ふりがな]ためら[/ふりがな]いながら姉を見ると、なぜか泣いていた。
「姉さん……?」
「気を使わせてしまい、すみません……ありがとうございます、こんなものを……」
「大丈夫だよ、ほら」
 慌てて凱は[漢字]手巾[/漢字][ふりがな]ハンカチ[/ふりがな]を出し、姉の目尻にそれを当てる。
 姉は驚いていたようにしていたが、凱の手から手巾を取り、自ら目尻に当てた。
「ありがとう、ございます」
「うん」
 しばらく、お互いに黙っていた。何か気まずく、話題がないかと考える。
「あ、そうだ、姉さん。姉さんは、内海馨さん、っていう人知らない?」
 あの鏡を姉に渡したのは馨だと聞いたので、もしかしたら知っているかもしれないと思った。
 内海馨、さん、と姉は唇を動かす。
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2025/11/07 14:07

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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